2017年01月15日

七輪、はじめました

免責事項:本ブログの記事を元に何かをされる場合は自己責任でお願いします。本ブログの記事を元にすることで起きたあらゆる事象に対して本ブログの筆者は一切責任を持ちません。

<準備>

今年の冬はやけに冷え込むので、デロンギのオイルヒーター(600Wのみ使用)に役不足感を感じて、追加の熱源をいろいろと検討したのですが、

 ・灯油ストーブ => 灯油を室内に置くのはなあ
 ・ガスファンヒーター => ホースの取り回しができなかった
 ・灯油ファンヒーター => 灯油を室内に置くのはなあ

というわけで、炭火を試してみようという結論に至りました。
気体燃料や液体燃料と比較すると、固体燃料の木炭、特におが屑を固めたオガ炭や備長炭のように燃焼面後退の遅い炭は着火しても燃焼の拡大がゆるやかなので本質的な安全度が高い、というわけです。

早速、仕事あがりにホームセンターに寄って、以下の道具を購入してきました。

 ・七輪(1700円)x1個
 ・ステンレス炭ばさみ(150円)x2本
 ・20cmアルミ鍋(700円)x1個
 ・備長炭1kg(1200円)x1個
 ・オガ炭4kg(700円)x1個
 ・着火剤18本入り(150円)x2個
 ・焼き網250mm角(200円)x1個
 ・ステンレス桶(800円)x1個
 ・耐火レンガ(300円)x2個

あと、火起こし器はホームセンターによいものが置いてなかったので、
Amazonでキャプテンスタッグのアウトドア用のものを買いました。

 ・火おこし器(1900円)


<点火>

まず七輪を空っぽにしておきます。



次に屋外で火おこしをします。
耐火レンガを2つ並べて、壁面を金属の板で保護します。
耐火レンガに着火剤を2つ、切り取って、並べます。



着火剤はこういうものです。「バスター」?
おそらくコルク材のようなものに灯油に類する液体をしみこませてあるのだと思います。
1つだと炭に着火しないので2つ使います。



着火剤の上に火おこし器を置いて、オガ炭を入れます。
わりと細かく砕いてやらないと火が付きません。
また、着火するのは床面の孔付近で、着火剤の炎が触れるところになるので、
炭の砕いた端面に着火剤の炎が触れるようにしておくとよいです。



ガストーチで着火します。
着火剤はマッチやライターでもすぐ火が付きますので、火おこし器を横において着火剤を点火してから火おこし器を炎にかぶせてもいいですが、けっこう炎の勢いが強いので、火をつけたガストーチの先っぽを火おこし器の下部側面にある空気孔からさしこんで着火したほうが安全だと思っています。
(ガストーチは燻製やるときに便利なので買い置きしてます)



火がつくとこんな感じです。
火おこし器の下部側面の空気孔から空気が吸い込まれて上昇していくので、まわりに炎が出たりすることはありませんが、周辺50cmに可燃物がないようにしておきましょう。わりと暖かいです。また、派手に黒煙が出て、臭気もけっこうきついので、ベランダだとご近所から苦情が来ると思います。場所は考えた方がいいですね。



5分ちょっとで着火剤が燃え終わり、オガ炭の下面が赤くなっていれば着火成功です。ステンレス炭ばさみ(トングみたいなやつ)で炭を火おこし器からアルミ鍋に移します。残念ながら着火していない炭があっても気にせず移しましょう。七輪のなかで他の炭から火が渡ります。

アルミ鍋から七輪に炭を移します。着火している炭を下にして、上に着火していない炭を積んでいきます。積むときに空気の流路が複雑になるように意識してやるといいかもしれません。炭を積み終わったら、異物が落ちて燃えないように焼き網250mm角をのせます。



焼き網で切り餅やソーセージを焼くこともできます。
写真は魚沼産こがねもち米100%の切り餅です。



七輪には燃焼調節機構があります。下部側面にある空気窓がそれです。基本的には写真のようにちょっとだけ空いていれば十分な熱量が得られますが、鍋で煮炊きするような用途では全開に近い状態にしてやるとよいかもしれません。



焼き網の上は均等に熱が伝わってくるわけではなく、炭の状態や場所によって熱の伝わり方もことなります。写真のように炭の上面があまり赤くなっていない状況では放射伝熱はあまり支配的ではなく、炭が燃焼して生成される燃焼ガスとそれとの対流で混合した空気での自然対流伝熱が支配的になります。

といったように工学的な考察が楽しめる調理器具ですが、そういったことを考えたくない直感派の方は網の上30cmぐらいに手をかざしてみればだいたいの加熱具合がわかると思います。

うまく被加熱物の位置取りをしてやるとこのように理想的な焼き加減のお餅ができあがります。醤油を垂らして、焼き海苔で巻いて食べました。最高です。



五徳を買い忘れたので、工場に余っていた鋼材(等辺山形鋼 t3 x 25 x 250L)を持ってきて鍋置きにしてみました。ホームセンターでステンレスの角管などを切断購入されるのでもいいかもしれません。アルミは0.3T(molten)を超えてクリープするのでやめたほうがいいと思います。



このように大きな鍋を置いてもいいですし、小さな鍋や薬缶であれば、鋼材を置き方を変えてやれば対応できます。



ガスと違って、炭は着火が手間なのと、火を消したいときには消し壺などに入れて酸素の供給を遮断してやらないといけない、ということもあり、スタート/ストップが苦手な熱源です。消し壺は買っていないので、基本的には燃やし切る方向で考えました。そのためにはどれだけの炭に着火すればいいのかわからないといけないですが、そればっかりは回数を重ねて慣れていくしかないと思います。論文とか出てるといいんですが。

基本的に、お餅を焼いたあとにもまだまだ余力があるのが普通なので、お湯を沸かしたり煮物をしたりするのがいいと思います。写真の量だと4時間ぐらいは熱を出し続けますので、お茶を沸かして、それから味噌汁を作るぐらいのことはできます。というわけで、先ほどの水を張った鍋に里芋を投入してみました。



出汁を入れて味噌を溶かせば里芋の味噌汁ができあがりです。
火力を抑え気味にして放置してやれば、沸騰させず、味噌と出汁の風味が生きたよい味噌汁ができます。



数回、使ってみた感想としては、古い木造家屋や工場などの換気しやすい環境では追加の熱源としてはなかなか便利なものだと思います。特にオガ炭や備長炭などの木炭は燃焼の進行が遅い固体燃料で、爆発的な燃え方をしないため、つけっぱなしで鍋を置いて30分程度のお買い物などしてくる分には十分に安全だと言えます。(たまに火の粉がとぶので、上に十分な面積の鍋を置かない状態で出かけるのはちょっと危ないです)

当然、高温熱源なので、灯油ストーブと同程度に火傷するリスクはあります。また、倒れて炭がこぼれたときも、炭は燃え続けますので、床材などに引火する危険があります。転倒しないような構造材を作ればいいですが、そのあたりはファンヒーターのほうが優位かと思います。

本格的に調理ができる(というか、元々七輪は調理用ですね)という点は他の熱源に比べて優位ですね。灯油でも調理用ストーブみたいなものがありますが。あとはスタンドアロンな熱源なので、屋外で移動させて使うこともできます。このあたりも灯油ストーブと同様ですね。

着火はやはり面倒です。消火も同じく。スタート/ストップがしづらいのが、忙しい現代人向きではないところでしょう。在宅勤務で小さいお子さんが居られない方などにはわりと良い追加熱源なのではないでしょうか。

あとは燃焼生成ガスに一酸化炭素が多く含まれるため、換気に気を使います。狭い部屋、特にRC造(鉄筋コンクリート)の部屋などで使用するのは避けたほうがよいでしょう。一人暮らしの方も、もし倒れたりしたら死亡確定なので、長時間、ひとりでいるときは使用を避けたほうが賢明だと言えます。もしそういった状況で使用するのであれば一酸化炭素センサーを換気扇と連動させるDIYをしたほうがよいと思います。鉄骨の工場や倉庫、15帖を超える古い木造家屋などでは換気頻度を下げられるので向いていると言えます。

まだ使いはじめたばかりなので気がついていないことも多いですが、週末の時間のある日には使っていこうと思います。

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2017年01月07日

メモ:名古屋駅ぎりぎり徒歩圏の主にお酒を飲むところ(1)

名古屋に住んでいると、Frequently Asked Question として「名古屋駅周辺のおすすめごはん屋さんはありますか?」というのがあります。ところが名古屋駅から終電逃しても歩いて帰れないこともない場所に住んでいると、「お腹減った」=>「おうちで買っておいた賞味期限の近いきしめん茹でて食べよう」みたいなことになるため、あまり名古屋駅でひとりでごはん食べるという機会がありません。そのため、名古屋駅で何かを食べるとなると、だいたい誰かとお酒を飲みながらおつまみを食べる、という展開になりがちです。

そんなわけで、あまりひとりごはんには向いていないお酒を飲むところばかりになりますが、FAQへのAnswerとしてメモしておこうと思います。

<1.風来坊 名駅センチュリー豊田ビル店>
ぐるなびページ
名古屋といったら手羽先、みたいになったのは私が18歳を過ぎてからの話だったので、名物というのは10年程度推し続ければ作れるのだなあ、という覚めた気持ちもあるにはありますが、それはそれ、やはり骨まわりの肉というのは牛でも鳥でも旨いわけです。手羽先というと「世界のやまちゃん」が有名ですが、風来坊のほうが古株ですし、店の雰囲気、特に清潔感の面からいくと、どうしても風来坊を推したくなります。味付けは「世界のやまちゃん」に比べて控えめで、「味のない手羽先」などとdisられたりもしますが、上品で、本来の手羽先唐揚げというのはこういうものだと思い出させてくれます。名古屋駅に近い風来坊はいくつかありますが、こちらはきれい目なカウンターもあり、おつきあいのこなれてきた男女などで来て軽く手羽先とおつまみを楽しむことなどもできます。手羽先が食べられる以外は単なる居酒屋なので、飲み物はビールか焼酎でいいと思います。長居は無用。1軒目として軽く手羽先とビールを楽しみ、次のお店へ向かいましょう。

<2.伍味酉 なごのみせ>
ぐるなびページ
また居酒屋です。すみません。「なごやめし」をメインに据えた居酒屋です。私は行ったことがないですが、弊社のおじいちゃん工員(元)の推奨です。ちょうど寒い冬なので、八丁味噌おでんが美味しいですよね。赤味噌おでんは有名店がありますが、あちらは敷居が高いですし、こっちだと他の赤味噌っぽいメニューもいろいろと試せるので遠方から来た人によいです。と、おじいちゃん工員(元)が名古屋弁で申しておりました。今度、みんなで行きましょうね。あ、当然のように手羽先もあるそうです。

<3.蔵人厨ねのひ>
公式ページ
私は行ったことないですが、親父のセレクション。いいもんばっか食べよってからに。さて、ここは盛田酒造の日本酒ブランド「ねのひ」のアンテナショップみたいなものです。盛田酒造といえば、ソニー創業者の出身である盛田家でも有名ですね。

盛田家について

「ねのひ」自体は本醸造の大衆酒というイメージが地元ではありますが、ちゃんと大吟醸もつくってますし、このお店ではしっかりとした吟醸酒がちゃんと出てくるそうです。アンテナショップですからね。親父が言うには料理も高いけど美味しいそうです。ちょっとハードル高いので、若い子の背伸びデートとかにはすごくいいんじゃないでしょうか。ちゃんと赤味噌おでんもあるので、名古屋感もあります。そうそう。余分な話ですが、こないだ糸魚川で燃えた「加賀の井酒造」はここの子会社なんですね。びっくり。そいえば、東大教授の早野龍五さんもTwitterでこちらのお店に来た際に写真をあげられてました。

<4.まるたに>
公式ページ
先ほどの「蔵人厨ねのひ」が盛田酒造のアンテナショップだとしたら、こちらは「蓬莱泉」で有名な関谷醸造のアンテナショップです。名古屋駅ぎりぎり徒歩圏ということで交通アクセスがとてもよろしくないですが、雰囲気のある通りにある雰囲気のあるお店で、出てくるお料理も品がよく、こんなん日本酒が好きな女性とのデートでつかうしかないっしょ、という場所なのですが、私はおじさん同士でしか行ったことないです。作業服にジャケット羽織って来たおじさんもいました。ドレスコードないからね。いいよね。
SAKE BARとあるように、蓬莱泉のお酒がひととおり揃ってます。たまに生酒がステンレスタンク(カウンターに座ると奥の冷蔵庫に見える)で稲武から運ばれてきています。季節によって奥三河(稲武は奥三河)のジビエや旬の野菜を活かした日本酒にあわせたお料理が食べられます。量が少ないのとお値段はけっこうするので、完全に2軒目仕様ですね。誰かデートで使って、感想を教えてください。

<5.錦亭(嘉文グループ)>
公式ページ
「嘉文」という居酒屋がありまして、名古屋市にしてはお刺身が安くて美味しいほうなので(水産業の盛んな地域と比べたらいかんですよ)、名古屋駅や金山駅でよく利用しています。そちらも普通にオススメできますが、こちらはその嘉文グループの高級店。高専を卒業するくらいに親父に一度、連れて行ってもらいましたが、蕪と鶏を薄く炊いたものがとても美味でした。良いものを食べる、というのはこういうものなのか、と感激したのをよく覚えています。お値段ですが、一人あたり1万円は覚悟していきましょう。栄駅から近いので名古屋駅からここまでは地下鉄東山線を使うのが普通ですが、私はよく歩くのでここも名古屋駅のぎりぎり徒歩圏です。ここまでくると接待用にも使える気がしますが、年に1回の贅沢デートとかにもいいと思います。

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一応、だんだんとハードルがあがってく順に書きました。
眠くなってきたのと明日の現場が早いので、続きはまた思い立ったときに書きます。
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2016年12月31日

C91(コミックマーケット91)に参加しました(その1)

C91 2日目にサークル参加してきました。

・9時の設置のときにまちがえてNVS(Neco Video Solutions)さんのスペースに展開してしまいご迷惑をおかけしました。すみませんでした。

さて、いろいろ他にも反省事項があるので列挙します。

<反省点>
・vol.2予告ペーパーにサークル名もアカウント名も入ってないことに配り終わってから気がつく
・話しかけられた方と会話をつなげないコミュ障ですみません
・防寒装備と補給が弱くて東7シャッター対流で体温を奪われて途中退場
・サークルチェックできてなかった
・200部刷ったのに十分な部数を持ちこめなかった
・角席なのにサークルスペース番号を表示していなかった
・誤って『見本 500円』という12mm白テプラが貼られた新刊を2部ほどお渡ししてしまった

というわけで、準備不足感もありましたが、新刊を80部と50部、それぞれ頒布できてよかったです。
お越しいただいた皆さま、ありがとうございました。
反省点についてはサークル内でなぜなぜ分析をして改善していきたいと思います。

<よかった点>
・新木場経由の東雲から歩くのはわりと空いていてよかった
・Twitter広告にちょこっとだけ課金することでフォロワーさん以外の方にも新刊情報を流せた

戦利品の感想などは(その2)で。
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2016年12月28日

C91(コミックマーケット91)にサークル参加します

そういえばC85とC88にサークル参加していたのに、その話をまったくブログに書いていませんでした。
今回はちゃんと書きます。

<おしながき>


おしながきのPDFファイル(1.2MBぐらい)

今回の頒布物は新刊2本と既刊1本、あと予告ペーパー1本の合計4つになります。
(中身はさておき)頒布物が4つもあると、なんだかすごくがんばってる感が出ますね。

<新刊(その1)>


『What is Common Berthing Mechanism ?』はISSで使用されている共通結合機構CBM(Common Berthing Mechanism)について解説する本です。著者は @tosh_mac0112 さんです。A5黒赤青3色刷り28Pで500円です。

<新刊(その2)>


『解読・LE-7 vol.1』はタイトルそのままです。vol.1は配管系統図の読み解きが主なので3年前のLE-7本の前半を薄めた感じになっています。点火器系統が多少追加されてます。A4カラー32P 500円で頒布します。vol.2 は来年を予定しています。

<予告ペーパー>


『解読・LE-7 vol.2』ではコンポーネントの読み解きをしていくつもりで、これはその予告編です。A4カラー4P の vol.2 予告編ペーパーを作りました。これは無料(0円)で頒布します。みなさん、持っていってくださいね。

<既刊>

C85で頒布した『yoshinobu(kari)』を今回も頒布します。A5白黒20Pで200円です。残り40部ぐらいです。


それではみなさん、C91 2日目 東7ホール h-24a でお会いしましょう。 ノシ
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2016年10月15日

JA2016に行ってきました(その2)

JA2016に行ってきました(その2)

15日にも行ったのですが、寝坊して着いたのは14時。撤収作業の前にまわれたのは多摩川エアロシステムズ(株)さんと島津製作所さんだけだったのでほとんど感想文みたいになります。

全体的に感じたのは装備品や中間アセンブリを供給する層の薄さでした。

おおまかに分類すると、

・プライム(ボーイング、LM、三菱、川崎、日飛など)
・Tierー1サプライヤ(住友精密、三菱、川崎、日飛など)
・航空系総合商社
・防衛系総合商社
・自衛隊
・各国の大使館や産業団体、軍など
・国内各自治体のクラスター
・単独の加工業者/装置メーカー

という具合にわけられると思いますが、Tier−1サプライヤからプライムをのぞくとこんなに日本には装備品メーカーが少ないのか、と感じてしまいます。もちろん出展していないメーカーも多いとは思いますが、それにしても東京で「国際航空宇宙展」と銘打っている展示会に出てくる装備品メーカーはこれだけしかないのか、というのはちょっと驚きでした。

結局のところ、日本ではインテグレーターであるプライム企業が産業構造の上位部分をほとんど内部でこなしてしまうのと、重要な装備品のほとんどは海外の装備品メーカーからのお買い物になってしまうため、こういう状態になるのだと思います。

ただし、ボーイングの旅客機部品製造分担を見てもわかるように、国際的に分散した調達体制が当たり前という世の中なので、それが悪いという話ではありませんし、国の違いというのはそれほど目くじらをたてる部分ではないのかもしれません。

とはいうものの、航空宇宙産業をおしすすめるという話を各自治体が看板にかかげているわけですから、各自治体クラスターの展示がほとんど加工品の展示、加工技術のアピールで占められているという現状は一考の余地があると思います。

加工技術はある、しかし、なぜそれが装備品メーカーという上流にのぼることができないか。これはつまるところ、「設計と設計の検証をする能力」の有無に帰結すると思います。

自分たちのした設計が要求されている仕様(I/Fとなる仕様)に適合していることを証明する、というのはそれなりに難しくノウハウも必要となる仕事です。一般的には、これは技術試験によって証明することになりますが、試験というのはJAXAですら一部門を抱えるような分野です。

この技術試験というのが加工技術を持つメーカーが装備品メーカーとなるためのひとつの壁になっているのではないかと思います。

また、世の中には既に競合となる装備品メーカーがあるわけですから、その実績と勝負しなければなりません。インテグレーターの気持ちになれば、自分の作る機体には実績のある部品や装備品を搭載したいわけですし、そうなると相当なコストメリットや安定した供給能力、または機体にあわせた特殊仕様で開発するなどの柔軟な対応を提示できなければ勝負になりません。これも加工技術を持つメーカーが装備品メーカーとなるにあたっての大きな壁だと思います。

MRJのような民間機のインテグレーションが国内で行われていても、部品はともかく、装備品を国内で調達したというようなニュースはほとんど耳にしませんし、国産旅客機と銘打っている機体ですらそうなっているわけです。MRJがビジネスとして成立したと仮定した場合、そこから派生型が設計されていくなかで、装備品メーカーを国内でも育成しようという流れが生まれれば、相応の資源投下を行おうと考えるメーカーはあると思いますが、それがなければ航空宇宙産業でも日本の企業は他国の装備品メーカーの加工下請で低い利益率に甘んじなければならないということになるでしょう。

もうひとつの突破点としては、自分たちがインテグレーターとなる、という選択です。インターステラテクノロジズやHASTICのようなロケットベンチャー事業体は完全にインテグレーターですし、航空機でもそういったインテグレーターとなる企業があれば、それを起点として装備品メーカーが育つ可能性があると思います。

旅客機などは難しいでしょうが、ゼネラルアビエーションや無人機の分野からであれば参入するための資源を持つ企業はあると思います。特に無人機については今回のJA2016でもいくつかの企業が完成品や要素技術を展示していましたので、それらを起点として装備品メーカーを育てていくという方針はそれほど悪くないのではないかと思います。

といったあたりがJA2016の感想でした。
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2016年10月14日

JA2016に行ってきました(その1)

国際航空宇宙展2016(JA2016)に行ってきました。
(その1)というのは(その2)もあるからです。

とりあえず12日午前の半ば準備中な状態でぐるっと会場を回ってきましたので、
気になるブースの記録などを。(順不同)

<株式会社アオキ(W3-013「防衛装備庁」内ブース)>
JAXAと一緒にやったQuad Tilt Wing機が展示してありました。
http://www.aero.jaxa.jp/research/frontier/vtol/qtw/
(株)アオキはまいど1号の中心人物が会長をやっている企業さんですね。
http://www.aoki-maido.co.jp/

<アルウェットテクノロジー株式会社(W3-013「防衛装備庁」内ブース)>
航空機搭載用のSARを自前で開発してる企業さんです。
http://www.altek.jp/

<フジ・インバック株式会社(W3-013「防衛装備庁」内ブース)>
SIM-Jet社のガスタービンエンジンを販売している企業さんです。
本業は真空機器のセットメーカー/商社さんみたい。
http://www.fuji-imvac.co.jp/turbine.htm

<コーンズテクノロジ株式会社 W4-045>
英国系の商社さんですね。JSFの射出座席を展示されてました。
航空宇宙以外もややこしいものをいろいろと取り扱われているようです。
http://www.cornestech.co.jp/products/aviation/

<株式会社フジ電科 W4-032>
ハーメチックシール屋さんですね。
規格品があるようなので、後日、問い合わせしてみようと思います。
http://www.fuji-denka.co.jp/

<スカイレーベル株式会社 W4-021>
TRONAIR社のGSE等を扱ってる商社さんです。お高いんだろうな。。。
http://skylabel.co.jp/

<株式会社エスエスティー W4-014>
輸入商社さんですが、航空宇宙関連事業としてZODIAC AEROSPACEの販売代理店をしているそうです。
航空機装備品だと燃料系統や酸素系統の制御装置などをやってる感じですね。
http://www.sst-iss.jp/service/cat01/

<ポリテックジャパン株式会社 W1-004>
レーザードップラー振動計が有名な企業の日本法人さんですね。
MPV-800 多点振動計測装置はなかなか迫力あります。
RLV-5500ほしいです……
http://www.polytec.com/jp/

<Kulite Semiconductor Products,Inc W2-062>
クーライト、と呼びます。耐環境の圧力トランスデューサで有名です。
F-18やF-22、JSFの圧力センサとかもここのものだとか。
http://kulite.com/home.asp
日本だと三協インターナショナルさんが代理店をされていますね。
http://www.sankyointernational.co.jp/kaitenki/sonota_kaitenki/02.html
(ちなみにめっちゃ高いです)

<株式会社エステック(W2-024 静岡県ブース内)>
航空機用スイベルジョイントの製造をしている三島の加工屋さんです。
自前で部品の開発をしている加工屋さんは珍しいですよね。JIS Q 9100も持ってるみたい。
http://www.s-technology.co.jp/products.html

<NASAM Incorporated W3-009>
読み方わかんないですが、商社さんです。
小型のLiquid oxygen converterが面白そうだなって思いました。
http://www.nasam.com/products/
日本エヤークラフトサプライ株式会社が代理店をやってます。
http://www.nasco.co.jp/products/detail_49.html

<中日クラフト株式会社 W1-113>
金型加工を起源にした総合加工屋さんみたいですが、精密レーザー焼入れを推していました。
春日井の企業さんです。
http://www.chu-cra.co.jp/laser/

<堀口エンジニアリング株式会社 W1-039>
P&Wのエンジン搬送ドーリーや航空機用ジャッキのようなGSEの設計製造を
されている企業さんです。装備品の修理などもされている様子。
http://www.horiguchi-engi.co.jp/h01_03.htm
http://www.horiguchi-engi.co.jp/h02_02.htm

<株式会社羽生田鉄工所 W2-035>
小型オートクレーブの「ダンデライオン」で有名な加圧加熱炉のセットメーカーさんです。
「ダンデライオン」の実機が置いてありました。
http://www.hanyuda.co.jp/products/kogata-dandelion.html

<株式会社アルテックス/SynQor W2-064>
電気系商社さんで、SynQor製品の航空宇宙向けDC-DCコンバータを展示されていました。
http://www.altexcorp.co.jp/synqor/

こんなところでしょうか。
TwitterのTLを見てる様子だとまだまだ見どころはありそうなので、
10月15日(土)にももう一度見てまわって、(その2)に書きたいと思います。

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2016年09月17日

SpaceXの射点爆発事故についての雑感

SpaceXの射点爆発事故の詳細は、鳥嶋真也氏の記事に詳しいので詳細はそちらを読むのがいいと思います。

http://news.mynavi.jp/series/falcon9_anomaly/001/

というわけで雑感。

SpaceXの1/4ぐらいが MATLAB + SIMSCAPE 使えて、加工組立に関してもそれなりの経験がある人員で構成されていると想像しています。
少なくともモデルベース設計ができないと1段を着陸させて再使用しようなんて検討をあの期間で成立させられるとは考えられません。(時間かければExcelやPythonでもできるだろうけど合理的じゃないよね)

なので、そういった人たちが設計と計画しているところで起きた事故というのは、検討の範囲外だった事象が原因となった、ということだと思います。

検討の範囲外の事象があってもたまたまうまくいっている、なんてことは航空宇宙開発現場では現在もふつうに起きていて、そういったものが見つかるたびに検討範囲を広げてそこをカバーするようにしていきます。FARがしょっちゅう更新されるのもそれが理由です。
(技術に詳しくない方は雰囲気をつかむために「メーデー!」シリーズを見るのがいいでしょう)

今回のSpaceXの事故については、資料も何もないので完全に想像ですが、液体酸素充填系(特にアンビリカルポート)に漏洩箇所があり、そこに油脂分がたっぷりあって、小さな爆発が起こり、そこから油脂分がふつうに存在する箇所に液体酸素が大量に漏洩し、中規模な反応が起こり、ケロシンタンクが破損、大爆発、というシナリオがなんとなく尤度が高そうだなあ、という感じです。

液体酸素充填系にコンタミナントが存在したというシナリオや液体酸素タンクベントバルブ異常のシナリオもありますが、それは私としては次点ですね。

さて、この想像が当たらずとも遠からずだった場合、おそらく地上充填系という技術的に軽視されがちなポイントで事故が発生したわけです。

ロケット開発で性能/コスト比に一番ひびくのはエンジン、次に機体、そして装備品というわけで、基本的にロケット本体が偉いという意識があります。おそらく日本でもそういう部分はあるでしょう。次期基幹ロケット開発でエンジン開発予算が全体の半分近くをもっていったのを考えてもそれは正しいことです。

しかし、こうして事故が起きてみると、地上充填系のような性能にはたいして寄与しない必要悪ともいえる部分が「ミッションを完遂する」という機能には大切だったということに気がつかされるわけです。

次に原因がなんらかの形で特定ないしは絞りこめたとしましょう。
対策をしなければいけません。

上記シナリオだったと結論された場合、おそらく日本のスタイルだと、

・液体酸素充填系から漏洩がないように実使用品を個別要素試験
・漏洩検知非常停止機能の付加
・漏洩してもカタストロフにつながらないように漏洩が想定される箇所周辺から液体酸素と反応する物質を除去ならびに機体結合後に除去されていることを目視チェック
・etc
(わりと勢いで並べてるので漏れがあると思います、漏洩だけに)

と対策ということになるのではないでしょうか。
日本の宇宙開発関係者、特に有人(含むHTV)関係の方々はこういう対策でなければ対策ではない、と考えられるでしょう。

そして、そういったものを積み上げていった結果が現在のH-IIA/Bと吉信LSです。

しかしそれでは費用がかかりすぎると財務省に言われる。私としてはH-IIAはあの仕様では格安と言ってもいいんではないか、と思いますし、末端で仕事を請けている方々はわりとギリギリでやってるというのを見聞きしているので、高いと言われましても、と思うのですが、SpaceXのお値段を見せられると、ぐぬぬ、となってしまうわけです。これは欧州でも同じ事情なのでしょう。

逆にそういった積上げをしてしまえばSpaceXのお値段もじりじりとH-IIAに近づいていくわけですし、きっとそうでない対策をしてくることだと思います。

それは日本の宇宙開発関係者からしたら、きっと、それは対策ではない、と考えられるでしょう。

でも、それで、安く93%程度の成功率のロケットが作れて、受注を続けて事業として継続され、ついでにISS補給輸送系として採用されつづけるのなら、いくら「対策ではない」と吠えてもしかたないと思います。

しかし、日本だとそういった積上げをして100%の成功率のロケットを目指さないといけないというのは、H-IIでやらかした当時の若手で、現在の宇宙開発を指揮する立場にある方々の肌感覚なのでしょう。

次に失敗したら予算がつかなくなるかもしれない。
次に失敗したら日本の宇宙開発はここで終わるかもしれない。

そういう重圧があるのだと思います。

結局のところ、ロケットの事故とその対策の実装というのにも社会的背景があるわけで、物理的・工学的に合理的な対処というのは、そういった社会的背景の影響が少ないところでしかできないものなのだろうな、とも思います。

そういった点では、宇宙開発における北朝鮮やインド、中華人民共和国の躍進は強力な政治的指導者が社会的影響を排除しているためにより合理的な対処が可能だという点に理由を求めることもできるんじゃないかな、と思っています。

アメリカでも日本と同じようなプレッシャーはあると思いますが、ポーズとはいえフロンティアを目指してる人間には寛容で、投資家から集めた事業資金をある程度投入している(税金への依存度が比較的低い)、という2点で社会的背景の影響が軽減されている部分はあると思います。

というようなことをSpaceXの射点爆発事故やそれを語る人たちを見ていて思いました。

※そういえば日本人宇宙飛行士でまだ事故で死んだ人っていないですよね


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2016年09月10日

「液体ロケットエンジンは推力を生み出す化学プラントである」

 というようなことを固体ロケットメーカーであるIHIエアロスペースの技術者が「ロケットまつり」というロフトプラスワンで行われたトークイベントで発言していたと聞いたことがあるが、これは実に正しい認識である。液体ロケットエンジンは推力を生み出す化学プラントである。ロケットはノズルから高速で流体を噴出することで推力を得ている。ノズルがあり、流体を噴出して推力を得ていればそれはロケットであるから、ペットボトルに水と圧縮空気をつめて飛ばすペットボトルロケットも正しくロケットである。なぜロケットエンジンが液体を噴出する流体として使用していないかといえば、比推力が低すぎる、つまり噴出した液体に比して得られる加速の積分値が低すぎるためである。そこで気体を噴出する。だが、気体は液体と比べて密度が低い。運動量保存則から噴出する流体の密度が低い場合は速度をあげてやらないと十分な推力を得られない。どのように速度をあげるか。直感的に気体に高い圧力をかけてやれば勢いよく噴き出しそうな気がする。事実、噴出する大気の約1.9倍までは圧力に比して気体の噴出速度は高くなる。しかし、それを超えるといくら高い圧力をかけても気体の噴出速度はあがらない。音速に達するからだ。音速を超えるにはどうするのか。ここでロケットエンジンの象徴ともいえるノズル(ラバールノズル、De Laval Nozzle)が登場する。ノズルは音速の気体を超音速にまで加速する数少ない機械装置である。こうして気体をノズルから噴出することで現実的な比推力と推力を得ることができる。しかしながら、ノズルはタダで気体を超音速まで加速してくれるわけではない。代償として気体のエンタルピーを消費する。エンタルピーとは単位質量あたりの気体の圧力と温度に蓄えられたエネルギー量のことである。つまり、ノズルは気体が持っている圧力と温度を速度に変換する装置であるとも言える。これは言い換えればノズルから噴出する気体の速度はノズル入口における気体の温度と圧力に依存するということになる。温度と圧力を非常識なオーダーまであげれば噴出する気体の速度は3000[m/sec]以上にもなる。これが世間一般のロケットエンジンである。ではどのように気体の温度と圧力を上げるのか。気体の温度と圧力を上げる方法で最も単純なのは密閉空間で燃焼させ燃焼熱を用いて燃焼生成ガスの圧力と温度を上昇させることである。燃焼は熱を発する酸化反応で、反応生成物が気体であれば都合がよい。人類がたどりついた答えは2つあり、ひとつが固体の燃料と酸化剤を圧力容器内で進行燃焼させる方法で、もうひとつが液体の燃料と酸化剤を圧力容器内に連続注入しつつ燃焼させる方法である。(核分裂反応により生じる熱で気体を加速する話は得意な人に譲る。)さて、ペットボトルロケットからはじめて、ようやく液体ロケットエンジンにたどりついた。まとめてみよう。圧力容器内に燃料と酸化剤を連続注入しつつ燃焼させて生成した燃焼ガスの温度と圧力をノズルにより速度に変換して噴出することで現実的な推力を得る装置。これが液体ロケットエンジンのコアとなる定義である。(異論は認める。)これだけ見れば実にシンプルだ。140字もかかってない。しかし、これを実現するために必要な対応をしていった結果が名古屋市科学館のロビーに展示されている、あのLE-7エンジンなのだ。


というボツ原稿でした。
やっぱり冬コミ委託は無理だね。
文章が書けなくなってる。
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2016年08月08日

「シン・ゴジラ」雑感

良い作品だと思います。
筆不精なクズさんにこうやって文章を起こす気にさせるぐらいですから。
良い作品ってアウトプットのトリガーになるものだと思うんですよね。

さて、ネタバレが怖くて見に行きました。

いちばん強く感じたのは、「劇場版ガールズ・アンド・パンツァー」を見たときにも感じた、ディテールをきちんと描写してる風に見せることで作品全体にリアリティを与えている、というところでした。

フィクションにどうやってリアリティを与えるか、というときに、圧倒的なウソとそれ以外の圧倒的なディテールを組み合わせる、という手法は、確かに野生のプロが跋扈するネット+SNS時代に適合したものかもしれません。

「自分はxxを職業としているが、あの映画のzzの描写は本物だ」

というTweetが多ければ多いほど、圧倒的なウソ以外の部分は本物となり、それが圧倒的なウソ(ゴジラ、学園艦と戦車道)にすらリアリティを与えることになります。

そういった点では、視聴を終えた者も作品の形成にかかわっていると言えるかもしれません。(ちょっとナイーヴすぎるかな?)

さて、そんな点から評価されている「シン・ゴジラ」ですが、こういったディテールを延々と描写して評価されるといった土壌が形成されていること自体に、またそういう作品が作られていく土壌が形成されていることに、独特の社会的な成熟を感じたりもしてしまいます。

複雑な手続き的社会の構成に対して原理主義的な主張を押し付けるのではなく、その複雑さそのものを興味の対象として知識体系をつくりあげていく中間的知識階層というものが、少なくとも映画の視聴対象として(無意識的に)認識されるレベルになっているのではないか、と楽観的な期待を抱いてしまいます。

和辻哲郎の「風土」ではないですが、東アジア地域の住民には現状受容的な傾向がみられるという観点をとりいれると、とても前向きな、現状受容的な成熟と言えると思います。

もちろん、「シン・ゴジラ」や「劇場版ガルパン」を見て評価している人が多数派だとは思いませんが、そういう人が商業的実数として把握されるというのはなかなか心強い事実です。

蛇足ですが、二番目に抱いた感想は「NERVのないエヴァ、って的確な表現だった」で、三番目は「庵野秀明のやりたいことを絵にするスタッフすごい」でした。

現代においてはどんな天才もひとりでは大事業を成し遂げることはできない。
必ず多くの人の協力と少なからぬ犠牲が必要になる。

それがこの作品を作った人たちと画面で描かれた作品のなかの人々に共通することであり、この映画で僕がいちばん気に入ってるポイントでもあります。

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2016年06月16日

「宇宙産業講演会〜JAXA宇宙航空技術開発と中部地域への期待〜」に行ってきました

「宇宙産業講演会〜JAXA宇宙航空技術開発と中部地域への期待〜」という講演会に行ってきました。



第1部はH3ロケットプロジェクトマネージャー・岡田さんのお話。基本は以前のJAXAでの記者会見とMHI仁村さんの記者会見と2月2日の「H3ロケットの開発状況について」資料をあわせて編集した感じの内容でした。タイトルは「2020年:H3ロケットの目指す姿と中部地域への期待」。

「H3ロケットの開発状況について」(資料25-3-1,宇宙開発利用部会(第25回)H28.2.2)

「VAB 中層棟 作業床」の写真をみて何か当てる問題が出て正解したのでもらった、今は亡きJSPECロゴ入りのはやぶさキーホルダ


いろいろお話があった中でひっかかったところは以下です。

疑問1:ほんとうに2023年から20日間隔のLaunchができるのか? 岡田さんは2020年からと言っていましたが、資料では試験2号機は2022年予定ですから、(すべてがうまくいったとして)実際にできるとしても2023年からですよね。MLの上をフラットにしたのも打上げ後修繕をしやすくするためとか、点検作業をインプラント化・遠隔化するとかで、期間を短くするための施策を全部実行したとして本当にできるのか? そして、それだけの打上げ能力を充たす内閣府案件とJAXA案件と民間受注をひっぱってくる営業能力がJAXA+MHI-LSにあるのか?

疑問2:DeltaIVの機体輸送の写真をひっぱってきて、飛島からもこれで運べたらいいね、ってコメントがありました。そこで疑問なんですが、そもそもDeltaIVって清浄度管理どうやってるんでしょうね? 現行のH-IIA/Bはコンテナに入れてクリーンエアを充填してるハズなんですが(そうじゃなきゃオープンでいい)、そのあたりをコストダウンのために、H3では輸送方式を変える検討はあるんでしょうか?

疑問3:スケジュールの関係での疑問。現行HTVはNASAの大型審査が必要なレベルの大幅な改修なしでH3のペイロードにできるのか? H3試験1号機でHTV改を打つと仮定しても、LP2の工事期間は日本からISSへの輸送手段がなくなることについて有人の人やNASAのISS輸送チームとは調整済なんだろうか?(当然おわってると思ってますがそこに言及した資料が出てないので)

あと、全体像としては「中部地域への期待」とサブタイトルにあるんだけど、プライムを間に噛んでるので直接的なことはなかなか岡田さんの口からは言えないよね、ってところはありました。そういう事情はわかるのですが、ゲンキンな愛知県民にはひびかないだろうなあ、企画自体にマッチングとれてないですよね、コレ。

第2部は新事促進部・山方さんのお話は「宇宙技術と地上の関わり」
・ライセンス制度
  http://aerospacebiz.jaxa.jp/jp/patent/ideas/
・オープンラボ制度
  http://aerospacebiz.jaxa.jp/jp/guide/guide01.html
・JAXA COSMODE
  http://aerospacebiz.jaxa.jp/jp/cosmode/
あたりの紹介でした。

第3部は航空産業協力課・内富さんのお話は「JAXA航空技術部門の中部地域での産学連携の取組み」
・次世代航空イノベーションハブ
  http://www.aero.jaxa.jp/about/hub.html
・航空技術部門公募型研究
  http://www.aero.jaxa.jp/collabo/public-invitation/index.html
あたりの紹介でした。

どれもちょっと金額の規模が小さい気がしますが、まあ、なかなか大きい金額を動かすのも大変なんでしょうね。
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2015年11月30日

極低比速度のポンプについて検討をはじめました

方向性をまだきちんと絞れていないものの、このあたりの数字をいじっていけばなんとかなるんじゃないかな、的なところを思いついたので、ちょっとした文章にしてみました。

極低比速度単段オープン羽根遠心ポンプの検討(PDF,283kB)
http://www.kirikuzudo.jp/file_ex/low-specific-speed-pump_20151129.pdf

実際にいくつか設計して加工して試験をして、この方向でいけるかどうかを確認していこうと思っています。
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2015年11月15日

製品は工程に由来する、製品は工程に依存する

 新型基幹ロケットの現段階での概要が半年ほど前に発表された。

 それなりに優秀でチャージも高い人間が多数あつまって決定された内容にしては従来の踏襲という内容で非常に残念な感じが漂う。貧乏が悪いと言えばそれまでだが、どうしてこうなったかを考えたときに、やはり「製品は工程に由来する」という部分は決して小さくない。

 今回の案ではほとんどの設備を流用し、新設されるのは種子島の移動発射台(ML)だけである。VABは改修。老朽化が進む推進剤貯蔵関連設備は現状維持。射点は改修。この予算では飛島工場でもほとんど改修で新しい建屋などは新設できないだろう。工程がかわらないのであれば、最終製品が変わることなどできやしない。

 なぜか。飛島工場はとりあえずおいて、種子島の部分だけを見てみよう。

 港で陸揚げされたロケット部分アセンブリを収納したコンテナはそのままトレーラーにのせられて港から射場まで運ばれる。VABの中でコンテナからクレーンでロケット部分アセンブリは吊り上げられ、縦に積み上げる形で組立整備されていく。

 この部分でまずコンテナのサイズ、トレーラーのサイズ、トレーラーが通る車道のサイズ、建物の開口サイズと建物の天井高さ、組立整備空間の平面面積、クレーンの揚程という問題が出る。ロケットの全高はクレーンの揚程より小さくせざるおえない。当然、クレーンの揚程は建物の天井高に依存する。そして、全高を分割する数はロケットの構成上あまり増やせないので、部分アセンブリ自体の高さも相応のサイズになるが、これもトレーラーの長さの制約を受ける。

 またロケットの直径は組立整備空間のフロア平面面積に制約をうけるし、コンテナの内寸とトレーラーの全幅、ひいては車道の幅にも制約をうける。現状ですら、職人芸でせまい車道をうねうねと移動しているのに、だ。

 VABの中で組立整備が完了し射点まで機体移動する。移動発射台は機体にあわせて新設されるので最適なものができるだろう。だが、VABの扉のサイズは決まっている。ここでもサイズの制約をうける。射点についても改修することになっているが、現在H−IIBを使用している射点をベースとする以上、その内容に縛られることにはかわりはない。

 こういったことを一般化してしまうのはまずいとは思うが、こと、基幹ロケットに関しては、工程の制限をあまりに軽視しているのではないかという話になる。予算を決める人間は「物を買う」感覚しかなく「物を運用する」感覚に欠けているのではないかと思いたくなる。

 ロケット部分アセンブリは確かに工場で作られる工業製品だが、最終製品である「軌道輸送」は運用がなされてはじめて完成する。つまり種子島で離床するまでのすべての作業はロケットを構成するための工程である。それを考慮せずに新型だと言っても内実はなにもかわらないものになるのは仕方ないのではないだろうか。

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ロケットの性能に直結するコンポーネントというものはあるのか

 下町ロケット、というドラマが原作準拠ではじまった。バルブがロケットの性能を直接左右することなど現代のロケットでは考えられないのだが、もしあるとすればバルブの信頼性が低くて指示通りの開度が出ていないという、バルブの信頼性が著しく低い世界線での話なのかな、という解釈をしてみた。そして、それをTwitterで開陳したところ、かがわさんに「そんな記述ないですよね」とばっさり斬られてしまったわけだが、まあ、解釈遊びなんで、実際のところ、かがわさんの言う「バルブという名の抽象概念」が正解であるとは思う。

 さて、そこから話は続いて、「ロケットの性能に直結するコンポーネントというものはあるのか」という話題になっていたようだ。私はひさしぶりの溶接作業の疲れで寝てしまったのだけれど、これは確かにロケットシステムについての理解度を試される問いである。

 当然、ロケットシステムにおいて、欠けてよいコンポーネント、性能に寄与しないコンポーネントなどはないわけだが、どちらかというと、どれもが十全に機能を発揮して、はじめて安全で望み通りなロケットの飛翔が成り立つということを考えると、たしかに「ロケットの性能に直結するコンポーネント」という話題はバカバカしいのかもしれない。

 しかしながら、やはり「多少あやしくてもなんとかなる」部品というのはあって、そこで基準を落とせるかどうかが設計検討試験の積み上げ、ひいては技術力の差となるのだと思う。実際、「えっ、これでいいの」となる米露のロケットコンポーネントは多い。

 一方、ロケットの性能に直結する、という題でいけば、ロケットエンジン、なかでもインジェクタと燃焼室とノズルまわりの設計は、ロケットの性能指標である有効排気速度および推力重量比に決定的な違いをもたらす。

 特に推力重量比をあげようと思うと、短い燃焼室で推進剤の持つ燃焼熱を排気のエンタルピに転化しなければならず、そのため、インジェクタでの推進剤微粒化と酸化剤・燃料の混合から燃焼をどれだけ短い距離で実現できるか、という話になる。それは燃焼室およびノズルスロートの冷却系とも関連し、エンジン熱交換システムにおける最適流量などにも影響が出てくる。ひいては、質量流量は機体の飛翔設計・タンク設計・配管設計にも影響を与える。

 インジェクタにも多数の形式があり、基幹ロケットは同軸せん断型、ISTやSpaceXはピントル型、角田のエタノール・液体酸素試験機は二点衝突型である。インジェクタの形式とそれによる燃焼室長さの変化はあまり調べたことがないのだが、インジェクタの設計次第で燃焼室の長さの制約を変えられるのは間違いないだろう。

 実のところ、ロケットシステムから見ると、ロケットエンジンのインジェクタと燃焼室とノズルまわりとは、ひとつのコンポーネントとして見られてしまうので、どちらかというと「ロケットエンジンはロケットの性能に直結するコンポーネントである」という言及のほうが正確なのかもしれない。

 そのなかで、「ロケットエンジンの性能に直結するサブコンポーネントはなにか」という問いがあれば、インジェクタはそのひとつであると答えられると思う。
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ごちうさは優れた接待アニメなのか?

<1. What is Go-Chi-U-Sa ?>

『ご注文はうさぎですか?』というアニメがある。
知ってる人には「ごちうさは福祉」「こころぴょんぴょん」で済むので何の説明もいらない。
そうでない人も公式サイトを見れば「ああ」とすぐ理解いただけるのではないだろうか。

「ご注文はうさぎですか?」アニメ公式サイト
http://www.gochiusa.com/

アニメの分類は複雑化しており、まさにコンテンツのカンブリア大爆発な現在、不用意な分類はネット紛争や炎上につながるのだが、大枠で言えば「芳文社まんがタイムきらら系列日常系萌えアニメ枠」というところで共通の理解を得られるのではないかと思う。

中身であるが、ストーリーとか内容とか何もなく、ひたすら「かわいい」が24分にわたって画面上に展開されるだけで、ニコニコ動画のコメントも「かわいい」がやたら多いのが特徴だ。その内容のなさと画面にあふれる「かわいい」が仕事に疲れた社畜のみなさんの心をいやしている。まさに「ごちうさは福祉」である。

また、ごちうさは実のところライト層向けでもある。「かわいい」に全パラメータを振ったともいえるごちうさだが、キャラ付けもある程度はっきりしているので視聴者間での紛争も少ない。というか、紛争するほど内容がない。ひたすらみんな「こころぴょんぴょん」してるだけである。かわいいは正義なのだ。


<2. 接待アニメ #とは>

さて。接待アニメという言葉はご存じだろうか。

おそらく初出とされている中でも有名なのは横田氏のこのブログだろう。(他に初出があるのかもだが寡聞にして知らないので知っていたら教えてください)

「ITインフラ業界にとっての深夜アニメは「接待ゴルフ」のようなものなのか?」
https://wslash.com/?p=4654

たしかに2010〜2013年のIT系勉強会やスライドで深夜アニメネタが出る率は異常だった。最近はよく知らないのだけど、まあ、ある程度は残ってるんじゃないかと思う。

  ※ちなみに自分がネット中継を見ていていちばん衝撃をうけたのは2011年1月の「あずにゃんぺろぺろ」だった。あれを超える勉強会アニメネタはいまのところ知らない。(HTML5を使うとiPhoneの画面に表示したキャラをぺろぺろすることでキャラが反応するUIをサクッと作れるよ、というネタ)

で、この接待アニメというのは普通の接待とはちょっと意味が違って、上述のリンク先に書いてあるように、前期および今期の流行っている深夜アニメのネタについていけるようにそういう深夜アニメを見ておくとコミュ障の技術屋さんたちも話題に困らないよ、というお話なのである。勉強会の後の懇親会などでも深夜アニメネタを使った発表者と話をしやすくなるし、よいアイスブレイクになる。


<3. 接待アニメとしての「ごちうさ」>

さて、ようやく表題である。
「ご注文はうさぎですか?」は接待アニメとして優れているのだろうか。

20代30代の技術屋さんで勉強会に出てくるような人はだいたい社畜だと思っていい。そうでなくても勉強熱心で真面目なのは間違いない。そして、真面目な人ほど疲れやすいのが現代社会である。そこには癒しが必要だ。にゃんこカフェとかそういう癒しもあるが、いちばん手っ取りばやいのは日常系萌えアニメである。アニメ配信サイトを開くか録画再生して約30分のお手軽な癒しである。

中でも芳文社まんがタイムきらら枠は癒しを得られる日常系萌えアニメの定番である。ときどきハズレもあるけれど、基本的には毎期、間違いのないものを確保できる。公式Webサイトのアニメ化作品リストを見ると、鉄壁のラインナップがうかがえる。

「まんがタイムきららWeb」
http://www.dokidokivisual.com/

 ※「けいおん」「かなめも」「GA」「Aチャンネル」「キルミーベイベー」「ひだまりスケッチ」「ゆゆ式」「きんいろモザイク」「幸腹グラフィティ」「城下町のダンデライオン」そして「ごちうさ」

 ※抜き出してみて震えている。これがぜんぶ芳文社まんがタイムきららグループ発のアニメだとは……

ゆえに20代30代の技術屋さんで深夜アニメを見る人は8割方、きらら枠を見ていると考えて間違いない。カバー率が高いのだ。ネタに使う以上、カバー率の高さは重要である。

そして2期が放映されているというのは「けいおん」「ひだまりスケッチ」「きんいろモザイク」に並ぶ覇権コンテンツということでもある。そして覇権コンテンツのネタは息が長い。「きんいろモザイク」の進捗コラージュや「ひだまりスケッチ」の1話ゆのっちコラージュなどはずいぶんと長いこと使われている。ごちうさであれば「お兄ちゃんのねぼすけ」や「もっと笑ったらお客さん来てくれる……?」あたりの画像は使い勝手がいいかもしれない。

しかし、ごちうさも優れた点ばかりではない。ネタの少なさは大きな欠点のひとつだろう。パラメータを「かわいい」に極振りして中身が薄いためにネタがないのだ。こればかりは如何ともしがたい。(きらら枠はプレゼン中のネタに使いにくいものが多いというのは傾向としてある)

とはいうものの、プレゼンに使うだけが接待アニメではない。ごちうさのアイスブレイカー性能の高さ、特にその汎用性は認識するべきだろう。「チノちゃんかわいい」「ココアかわいい」「シャロかわいい」「チマメ隊かわいい」というのが基本的な発言である。あとはお気に入りのシーンをお互いにあげていけば5分はあっという間である。ここで深夜アニメ視聴者の8割というシェアの高さが効いてくる。ここから各キャラ担当の声優さんつながりで話を広げてもいい。


<4. 接待アニメ枠としての「芳文社まんがタイムきらら枠」>

こうしてみると、やはり「芳文社まんがタイムきらら枠の覇権コンテンツ」というのは接待アニメとしては欠かせないコンテンツなのだということがわかる。

さて、ごちうさの次は「今日も一日がんばるぞい!」で有名になった「NEW GAME!」である。内容的に2期までいくのは厳しいかもしれないが、安定のきらら枠として、さらに主人公が社畜という点での豊富なネタ源として、こころぴょんぴょんしている。
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2015年10月26日

メカトロテックジャパン2015備忘録

メカトロというよりは名古屋版JIMTOFでした。もう東京いかなくてもいいですね。
土曜日、閉まる1時間前に行ったので2号館と3号館は見る余裕がなくスルーしました。
工作機械とかツールホルダは大きなメーカーさんのもの同士だとそうそう大きな差があるもんでもないですし、そもそもそういうものを買うお金がないので……


さて、1号館で気になったのは以下の4社。


<1.株式会社YSK>
http://www.shaft.co.jp/

シャフト屋さんです。カタログのラインナップ見てるとミスミのシャフトラインナップそのままなんで、もしかしてここの供給なのかも、などと思ったり。工場は佐賀県と福島県で本社は大阪らしいです。SUS630以上の耐摩耗性があってSUS304と同等の耐食性のあるシャフトというのが気になったのでいろいろお話してきました。塩水噴霧試験での評価も良さそうですし、10本/出荷ロットらしいので、合う仕様があれば使ってみたいと思います。(標準在庫サイズはφ6,8,10,12,13,20,25らしいです)


<2.株式会社谷テック>
http://www.tanitec.com/

切断機屋さんです。長物の切断用ですね。チップソーやメタルソーの刃物をやってる傍ら、切断機本体も手がけられているそうです。チップソー切断機はバンドソーと比べてランニングコストがどれだけ低くなるか、近いうちに検討してみたいと思います。

谷テックのチップソー切断機 http://www.tanitec.com/itiran/001.html


<3.株式会社ビー・アンド・プラス>
http://www.b-plus-kk.jp/index.html

ワイヤレス給電のモジュール屋さんです。12V or 24Vの電圧で1〜2Aと同時に信号を非接触で伝送できる電磁結合方式のモジュールが取り上げられていました。24VDC/2AとCC-linkやDeviceNetを同時に飛ばせるのがPLC用に使えそうですね。大電力が必要なところは従来どおりにスリップリングになってしまいますが、センサや接点監視などのところでは使えそうです。


<4.株式会社ホータス>
http://www.e-supertech.co.jp/

卓上型のドリル研磨機・エンドミル研磨機のメーカーさんです。結構いい値段してるんですが、ドリルをきちんと研磨しておかないとボール盤作業の効率はガタ落ちですし、切削動力や振動が増えて機械主軸にもやさしくないので、これも導入を検討したいところですね。エンドミルシャンクのドリルを三段カットできるDG-1MFができれば欲しいです。エンドミル研磨機はめっちゃいい値段だったのでスルー。


これら以外はネットでカタログを見て機械工具商社さんに問い合わせして、という感じでしょうか。


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2015年10月16日

「JAXAタウンミーティングinみよし」に行ってきました

2015/10/10(土)のお昼から愛知県みよし市であった「JAXAタウンミーティングinみよし」に行ってきました。サブタイトルは「宇宙探査の今と未来を語ろう」でした。

<概要>

登壇者は

 ・広報課長 岸さん
 ・宇宙探査イノベーションハブ長 國中さん
 ・事業推進部計画マネージャー 戸田さん

のお三方。

2部構成で、

 ・第1部:宇宙探査イノベーションハブについて(國中さん)
 ・第2部:社会に役立つ人工衛星(戸田さん)

となっており、その前段としてJAXAのイントロダクション

 ・事業概要説明(岸さん)

があります。

第1部と第2部では登壇者から説明があり、
そのあとに意見交換のフェーズにうつります。
30分プレゼンの30分が質疑応答、というスタイルをイメージしてもらえるとよいかもしれません。


<事業概要説明>

事業概要説明はざっくりとJAXAが何をやっているかの説明でした。
お金の話では、

 ・国家予算における科学技術振興費の割合とその中でのJAXAへの配分
 ・NASAとESAとJAXAの予算比

あたりが出てきましたし、直近の話題としては、

・寄付金6457万円ありがとうございました
・油井宇宙飛行士、ISS、HTV5の話
・はやぶさ2スイングバイがもうすぐ
・あかつきの軌道変更も
・ASTRO-H打上げ
・D-SEND#2
・次期基幹ロケット、強化型イプシロン
・ERG、ベピコロンボ、SLATS

というあたりが紹介されていました。


<第1部>

宇宙探査イノベーションハブ、についてのお話でした。
スライドも事前配布されていました。説明はほぼこのスライドの内容に沿って行われていました。

「宇宙探査イノベーションハブについて」
http://fanfun.jaxa.jp/event/files/event_20150709_2r.pdf

詳細は下記がわかりやすいかと思います。

「ISASニュース 「宇宙探査イノベーションハブ」新設」
http://www.isas.jaxa.jp/j/isasnews/serial/jijo/201506/4.shtml

「文部科学省 宇宙開発利用部会 資料 宇宙探査イノベーションハブについて」(pdf)
http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/gijyutu/gijyutu2/071/shiryo/__icsFiles/afieldfile/2015/04/20/1356794_2.pdf


<第2部>


社会に役立つ人工衛星、というお話でした。
基本的にはリモートセンシングの衛星について紹介と成果報告。
ALOS-2、QZSS、GPM/DPR、GCOM-Wあたりです。
下記サイトの「地球観測衛星」「通信・測位・技術試験衛星」が該当します。

「JAXA プロジェクト 人工衛星・探査機による貢献」
http://www.jaxa.jp/projects/sat/index_j.html


<全体を通しての感想>

まず「意見交換会」という建前なんですが、意見交換できる素地が双方にないよね、というところが参加していてつらいところですね。

ホールという会場選定からして「意見交換」する気があるかどうか疑わしいんですが、そこはJAXA広報さん的にどう考えておられるのか気になります。

選定されたテーマも「本当にそれは市民と意見をやりとりする必要があるんですか」というもので、そこも意見交換する気があるのかどうか疑ってしまう要素になります。

「宇宙探査イノベーションハブ」などは特にそうで、そういうのはオープンイノベーションフォーラムで興味のある企業さんと意見交換をしていけばいい話で、市民に対して意見を求めるような種類のものではないという気がします。

「社会に役立つ人工衛星」というのも、市民側からあったら便利な衛星をその場で提案するとかわりと無茶な話ですよね、どうしろと、という感じがあります。

人工衛星にしろ探査計画にしろ宇宙開発には技術の問題が常につきまといますし、各省庁間の調整や予算配分の実態などの政治まわりも理解しておかないといけません。その素地がない一般市民としてはどこをとっかかりにして意見交換したらいいのかわからないというのが正直なところで、有意義な意見交換というのには程遠い状態だったかと思います。

広報的には「理解を求める」というスタイルなのかもしれませんが、それだったら「意見交換会」などとという看板は下ろして「説明会」とでもしたほうがよいと思いますし、「意見交換会」というお題目がないと広報事業として成立しないというのなら、それこそ末期的だな、と思うわけです。

もし意見交換会としてきちんと意見交換をしたいのであれば、もっと踏み込んだテーマで、意見交換のポイントも事前提示しておくのがよいかと思います。また、参加者には予習を求める必要もあるでしょう。そうすればあさってな方向の意見が頻出することもなくなると思います。これに際しては、相当量の情報開示がJAXA広報側にも必要になりますし、それは見えない制約となっている様々なしがらみを文書化しなければならないということにもなりますので、どこまで実現できるかわかりませんが、本当に対話したいのであればクリアしなければいけない部分かと思います。

実はテーマ選定の種をつくったのは自分なので、もっと深くコミットしてJAXA広報さんの意図を汲みつつ、意見交換が成立するテーマを練り上げればよかったという後悔もあります。終わった後の消化不良感はけっこうきつかったので、できれば次はこうならないようにしたいという気持ちが強いです。

あと些末なことですが、意見交換に際しては、わりと同じ方が発言を複数回されることも多かったので、そのあたりのマネジメントもきちんとできたらな、とも思います。

というのが、全体を通しての感想です。


<事業概要説明についての感想>

事業概要説明については、これで10分以上時間をとる必要があるのか疑問です。予算の話はペーパー1枚で済むことですし、現在進行中のあれこれについてはそれぞれ綺麗なペーパーやパンフレットが既にあるわけですから。

市民はJAXAには興味なくて、各プロジェクトに興味があるわけで、その各プロジェクトの結果としてJAXAに価値が生まれたらいいんじゃないか、と思うのですが、それが逆になっていないかな、と感じます。JAXAに価値をつけるために各プロジェクトをやってるわけではない、と。

もちろん、組織として存続する必要はありますし、そのためにはJAXAに価値があると表明しつづける必要はあります。でも組織の存続のためにプロジェクトを考え始めるというのは単なる官僚機構ではないか、という思いも抱いてしまいます。


<宇宙探査イノベーションハブについての感想>


宇宙探査イノベーションハブについては、一企業の立場としてもメリットがよくわからないというのが正直なところです。モデルケースがないのであれば、ケーススタディなどの提示をしてもらえると考えるとっかかりになっていいんじゃないかと思います。

ただ、技術が移転可能な何かだと思われているところにはひっかかりを覚えました。実際には利用されるところがあってそこにアウトプットするためにだけ技術は存在できるわけで、そう都合よく宇宙関連技術を地上の応用にスピンオフすることはできないでしょうし、なかなかマッチングは難しいんじゃないかというのが感想です。(例えばイオンエンジンを地上でどう応用するかとか、なかなか難しい話なんじゃないかと思います)


<社会に役立つ人工衛星についての感想>


リモートセンシングは観測頻度が重要ということが言われていましたが、基幹ロケットは射場制限で年間5〜6機が限度ですし、ほぼ9割という成功率を考えると2年に1回はロストがあるわけです。(みなさん、忘れてるかもしれませんが、ロケットに100%はありません。)そして、そのすべてがリモートセンシング衛星に使えるわけではありません。

なので、おそらくリモートセンシングも小型衛星のコンステレーションやSLATSのような超低高度衛星を応用した、イプシロンのような小型輸送系でも対応可能なものを視野にいれていく必要があるんじゃないかと思います。

そもそも内之浦の打上対応能力というか、種子島の固体ロケット推進薬充填能力がどこまであるかという話もあるので、実はイプシロンにも基幹ロケットとつながった打上タイミングの制約があります。(基幹ロケットの固体ブースターとイプシロンの推進薬充填は共通の施設でおこなっているのでリソースが競合している)

というわけで、結局、輸送系の地上系が貧弱なのがいろいろと衛星利用の制約になっているんだなあ、というのをぼんやりと考えていました。あんまり関係ないですね。。。

役に立つ人工衛星という話で行けば、もうちょっとSSPSの話が盛り上がるかな、とも思っていたのですが、あまりそういう話も出ませんでした。


<余談>

「民間の宇宙開発業者が増えてきてるけど、JAXAとしてはどうとらえている?」

という会場からの質問に國中さんが以下のように答えていました。
(要約です)

 ・民間同士での共同開発は利権の問題があるが、JAXAは宇宙で民間は地上
 ・宇宙で事業を興す人はいまのところいないだろう
 ・直接、宇宙事業をしたい人たちとは競合になるかもしれない
 ・決まりきった会社さん、プライムが現状での宇宙のプレーヤー
 ・宇宙のプレーヤーを増やすのはいいことなので、民間の宇宙開発業者が増えるのはよいこと
 ・ロケット打上に関しては安全取り決めが政府=JAXA間であるので民間参入は無理だろう


COTSみたいなことは日本では無理なのかなあ、なんて考えながら、USで言えばJPLの部門長に相当する人がこういう認識でいいんですかね、とも思いましたが。


以上。
posted by kirikuzudo at 09:35| Comment(0) | TrackBack(0) | 雑記

2015年09月25日

「高専ロボコンの事業範囲 〜「十分でない」世界に適合した技術者の育成を目指して〜」を公開します

ロボコン(特に高専ロボコン)について、もやもやするやりとりがあったので、Togetterでまとめてみたら19000viewとかいっちゃったわけです。

http://togetter.com/li/878039

が、もやもやがおさまらず、仕事おわってからちょっとした書き物をしました。

http://www.kirikuzudo.jp/file_ex/robocon20150925.pdf

あんまり賛同を得られる内容ではないんだろうな、という気はしますが、書いたのをお蔵入りにするのももったいないので、アップしておきます。
posted by kirikuzudo at 20:44| Comment(0) | TrackBack(0) | 雑記

2015年06月07日

「燃焼カンファレンス」というのをやってきました

「燃焼カンファレンス」というのをやってきました。

@Yazee1120 さん と @xmmm さんにそれぞれ、
産業用ガスタービンと輸送機器用ピストンエンジンの燃焼について
語ってもらい、そのあとにディスカッションするというものです。

↓燃焼カンファレンスのポスター




燃焼現象関係の初歩というところを勉強したいという気持ちもあり、また、ライトウェイトなプレゼン型勉強会でそれをできないかということも考えていました。

ライトウェイトなプレゼン型勉強会というのは2013年頃の高専カンファレンスのような比較的重めなプレゼン型勉強会と対置する形で考えていたものですが、

 ・主催側の人数は1〜2人
 ・参加者は10人前後
 ・準備工数は2人日程度
 ・テーマを技術的なものにしてできるだけ絞る
 ・6時始まりの9時終わりぐらいで3時間程度でさっくり終わる
 ・参加者をあんまり管理しない(ATNDとか使わない)
 ・懇親会や遠足なども(積極的には)しない
 ・ネット中継しない(いろいろ面倒なので)

という具合のものです。

今回は @Yazee1120 さん と @xmmm さん をうまく煽れた(?)のか、
うまいことのってくれて燃焼カンファレンスにこぎつけることができました。

それぞれの講演内容はそれほどコンフィデンシャルなものではなかったのですが、細かく書くのもどうかと思いますし、ちょっと時間がないので省略。

ディスカッションはおふたり自ら話題を出し合っていただけたので、進行役の自分としてはあんまり仕事せずに済みましたが、もうちょっと準備というかネタの仕込みが必要だなあ、というところです。

今後につなげる反省点といいますか、改善点はいくつかありますが、

 ・講演をお願いする方々の内容がかぶったり離れすぎたりしないように
  摺り合わせしておく
 ・ディスカッションのネタは講演内容ときちんとリンクする形にしておく
 ・参加者の方からもディスカッションで意見や質問が出やすいように
  机の配置を考える
 ・休憩時間とか時間配分をちゃんと考えておく
  (そんなに休憩時間いらない)
 ・テストや持ち帰れる資料など勉強回が終わった後も
  参加者の手元に残るものを増やすようにする

といったところでしょうか。
せっかく参加してもらったのですから、参加者の得られるものが多くなるような方向でチューニングしていけるといいな、と思いました。
posted by kirikuzudo at 02:22| Comment(0) | TrackBack(0) | 雑記

2014年09月21日

積ん読 2014年09月

ベッドサイドの積ん読がヤバいことになってきたので把握のために崩してみた。一体どんな本が読まれずに積まれてるのか自分もわからないという。。。というわけで連投いきます。


という一連のTweetをTwitterでしていたのですが、実はこの一群の本って今後、機械技術者としてやっていくためには知っていなきゃいけない一連の知識セットなんじゃないかと思ったので、エントリにしておきます。
これでもいろいろ足りない部分はあると思いますが。

工作機械工業会で買ったもの。完全に未読。数年内に内製用のMCがほしいのでその選定の知識を得るために。


シールレスなバルブが欲しくて、せやったら永久磁石と電磁石の組合せでしょ、と思ってわざわざPOD版を買ったもの。仮定磁路法までは読んだ。


形鋼材を使うことが多くて、よく考えたらこれは建築のS造と同じなんでは!、となって買ったもの。パラパラめくったけど記載されてる構造計算の例題は手をつけていない。


液体ロケットエンジンの不安定燃焼に関するロシアの実験記録。AIAAから買ったもの。お正月に読むつもりだった。英語ダメだー。完全に未読。


これもAIAAから買ったもの。液体ロケットエンジンの燃焼室設計に関するもの。まだ導入部しか読めてない。数式と英語と化学の三重苦がクズさんを襲う!


完全に未読。なんで買ったのかも覚えてない。仕事でお客様と雑談するときの参考になるかもとか思ったのかも。どんなことが書いてあるのかまったく読んでないのでわかんない。なぜ買ったし。


あまりの算数(微分方程式)できなさ具合に買ったようです。が、定積分とか微分公式おぼえてるよね、当然?という文面でたしか1章を終えたあたりで止まっていたはず。算数だいじ。


見様見真似でちょっとした1次のルンゲクッタ書いてたけど、どうせならちゃんとしたCSharpな書き方覚えたいよね、ってことで買ったもよう。オブジェクトを数値計算にどう応用したらいいかぜんぜんわからずに途中でとまってる。


なんで買ったのか不明。絶版こわくて確保に走った可能性が高い。完全に未読。たぶん出てくる数式で倒れる可能性が高い。


ひととおり目を通した。ブルーバックスとあわせて、かなりわかりやすく書かれたジェットエンジンの入門本かと。例題は例のごとく手付かずです。ATREXたんハァハァ。


これも数式でやられて途中でとまってるパティーン。ベクトル解析できる前提で書かれてる。あたりまえか。配管内の気体加熱について数値計算する方法が知りたくて買ったようです。


現在読み進めてるところ。半陰解法のところで行き詰まってるけど、かなり丁寧に書いてあるので算数できないクズさんでもなんとかいけんじゃね、と思わせてくれる。粒子法よさげ。


なにこれかっこいい、ということで買ってしまったもの。ただ、遠心圧縮機の設計の勉強はしたかったのでそのためという部分はあり。ほとんど読めてない。熱力学の教科書がとなりに欲しい感じ。


ひととおり読んだもよう。軽量な構造ってどう作ったらいいんだろ、とか、供試体ごにょごにょ、とかで買ったはず。インテグラルタンクの点検ドアのあたりはとても参考になったっぽい。熱田の名古屋航空技術で購入。


プロジェクトの遅延で死にそうになってたときにふらっと買ってしまったもよう。完全に未読。読まなくてもいいかなという気がしてる。。。なぜ買ったし。


幸節先生の本ということで買ってしまったようです。こちらも出だし以外は未読。『構造振動学の基礎』もまだ読めてないんですよ。今後もスロッシングするようなネタが仕事で出てくるだろうし早く読まねばなのです。


完全に未読。高周波加熱の記載がある珍しい書籍。こちらは絶版こわくて確保しました。小型電気炉の話も書いてあるので拡散接合のためにちゃんと読みたいですね。


ORの手法しっておけば判断つけるの楽になるものも増えるよね、ってことで買ったけど3章終わったあたりでとまってる。


普段はPIDでやってるけど現代制御の考えかたを使ってさっさと試験条件を満足して終わらせたいというところで買ったけど2章でこれまた算数(行列)にやられて止まってる。算数だいじ。


並列処理への憧れからついつい買ってしまったもの。ひととおり読んでるけど、実際にコード打って試してない。GeForce買って試してみたい。粒子法のやつを。


なんで買ってしまったのか。たぶんミーハーだからです。ジャイロと加速度センサから有効な出力をとる以外にも何か使えるよね。ほぼ未読です。


なんとなくディジタルなの知らないしちょっと知らないとまずいかなー、と思って買った。ディスクリートでANDとORとる方法のあたりまで読んでとまってる。VHDLとか後ろのほうに出てたけど使う機会はなさそう。。。


接地のことぜんぜんわかってないことに気がついて買ったけどまだ読めてない。


なんで買ったし。たぶんレーダーってどうやって識別してるのか知りたかったんだろうなー。ステルスとか言われてもピンとこなかったというのもある。当然ながら完全に未読。


スターリング冷凍機についてしりたくて買った模様。まあスターリングエンジンにも興味があったのは否めない。ほぼ未読。


数値計算ってどういうことするかさっぱりちゃんだったんで買った様子。ほぼ未読。前進オイラーくらいまでは読んだのかな。。。


牽引車両の構造設計に使えないかと思って買ったけどあんまり参考にはならなかった、という程度には目を通したもよう。


完全に未読。伝熱計算を手と電卓でやるための本。


絶版こわくて確保しましたパティーン。パラパラとめくったけど、たぶん2章でとまってる。関空ですね。







posted by kirikuzudo at 14:51| Comment(0) | TrackBack(0) | 雑記

2014年02月26日

JAXA公式GPM/DPRアニメにおけるH-IIAロケットの間違い探し

GPM計画におけるGPM主衛星の打上が近づいてまいりました。H-IIAロケット 23号機での打上ということで現地に見学にいかれている方も多そうです。

で、このGPM計画で話題になったのが、JAXA公式のGPMをPRするためのアニメーション。PRとしては素晴らしい方法ですよね。主衛星のCGなどは細部まで丁寧に描写されていますし、短い時間の中に圧縮したストーリーをうまくおさめてあると思います。主衛星のCGすごいですよね。

GPM主衛星だけでは「今日は晴れる」とかすぐにはわかんないはずなのでちょっとミスリードな部分もあるかと思いますが、GPM計画で収集されたデータを元にして天気予報の精度が向上するのはほぼ間違いないと考えていますので、まあそのあたりもPRとしてはよいのだろうな、と思います。このあたりはJAXAの特設サイトの解説が素晴らしいのでそちらを読んでいただくのが間違いないでしょう。

「GPM主衛星概要」 http://www.satnavi.jaxa.jp/gpmdpr_special/gpmdpr/gpmdpr.html

問題は輸送系であるところのH-IIAロケット描写です。ここに大きな間違いが2箇所あります。衛星のPRが目的なのでロケットの描写が多少間違っていても問題ないだろうという話もあるにはあるんですが、いちおうJAXA公式のアニメーションであれはまずいだろう、とロケット者の界隈では話題になっていましたので、ここに書いておこうと思います。

<問題のシーン・その1>



固体ロケットブースター SRB-A の分離シーンです。これの何が間違っているのか。

「SRB-Aの模式図」


打上中継を見られている方はご存じだと思いますが、SRB-A分離は、

1. 前方ブレスをブレスの機体寄り中間部で切断
2. その0.5秒後ぐらいに後方ブレスをブレスの機体寄り中間部で切断
3. その2秒後ぐらいにスラストストラットをストラットの根元付近で切断

という過程を踏みます。ところが公式アニメでは3本とも根元から一斉にぶちっ、と切っちゃってるんですね。ここがよろしくない、と。SRB-A分離は何かと過去に問題があった部分ですし、ブレス/ストラットの切り離しに火工品(火薬を用いて動作させる構造部品)を使いますのでわりと大事なところなので、この描写はちょっと辛いものがあります。

まあでもわかっててもそこまで作画する予算がなかったんだろうなあ、という製作者側の事情もあるのかな、というので責めづらいところでもあります。あれをCG作るのとかすごく大変そうですし。


<問題のシーン・その2>



第1段・第2段分離のシーンです。ここは何が間違っているのか。

「H-IIA F23 フライト予定」


「事象」の欄、項目6と項目7を見てもらうとわかるかと思いますが、「第2段エンジン始動」は6分50秒で「第1段・第2段分離」の後です。「第1段・第2段分離」は6分44秒。なので、分離してからエンジンが始動するはずなのですが、公式アニメでは分離する前にエンジンが始動してしまっています。とてもアポロの映像っぽいですね。M-Vなら「ファイア・イン・ザ・ホール」方式ということで正しいのですが、H-IIAでは分離して距離が開いてからエンジン始動してガスが噴射されるので、この描写だとちょっと辛いですね。

作画に力が入っている部分だけに事前に発注者から注意がなかったのではなかろうか、と考えています。


<問題のシーン・その3>






これはたいした話ではないのですが、やっぱり間違いじゃないだろうか、ということでとりあげておきます。一連のシーン「0:54〜0:56」でこの後にリフトオフするわけですが、実際の打上動画を見てみると、

1. メインエンジン点火
2. エキスパンダサイクルでの燃焼(赤っぽい噴射)
3. 2段燃焼サイクルへの移行と燃焼(青っぽい噴射)
4. 固体ロケットブースター SRB-A の点火・噴射

という経過になっています。
(下の画像を見てもらえるとそれがわかるかと思います。)

「メインエンジンが2段燃焼サイクルで燃焼」

「SRB-A点火」

「リフトオフ」


これも作画はきちんとしているので、発注者の指示が不足していたのかな、とも思うわけですが、どういった発注仕様なのかわからないので、なんとも言いにくい部分だったりします。

あとは管制室ですが、これはNASAっぽいようなJAXAっぽいような微妙な作りだなあ、と。作業服ではないし液晶ディスプレイ3面ばっかだからJAXAではないよね、という意見。いやいや今年度の改修でJAXAの管制室も液晶ディスプレイに置き換えられたのではないだろうか、という意見。いろいろ盛り上がりました。


<問題のシーン・その4>



火花が散ってるだけですが、「1:12」秒のところ。これはフェアリング開頭のシーンになるわけですが、火薬は導爆線(下の画像)の中にあるので内部(衛星側)から火花は見えないのではないか、という意見が大勢でした。ただ、実際にフェアリング開頭試験で内部に仕掛けられたカメラの映像を見た人間がいたわけではないので、本当のところはどうかわかりませんが、これはちょっと疑わしいのではないかということでとりあげました。




いろいろぐだぐだと文句はつけましたが、はじめに書いたようにアニメーション全体はよい出来ですし、こういったPRが採用できるだけの幅があるのはよいことだよな、と思うので、ああ、こういうところを気にする人達もいるんだな、ぐらいに思ってもらえればよいかと思います。。。


posted by kirikuzudo at 20:27| Comment(0) | TrackBack(0) | 雑記