2020年04月26日

ADALM-PLUTO と GNU Radio Companion で遊ぶ(その1)

 

 気の迷いからAnalogDevicesのSDR学習キットADALM-PLUTOをdigikeyでポチって入手してしまいました。いろいろとこれで遊ぶ方法はあるみたいで、MATLABのCommunication Toolkitとかがサポートしてたりするので、そっちで試してみようかな、という気持ちもありましたが、お遊び用のMATLAB Homeライセンスとはいえ、Toolkitはそれなりのお値段するので、一度、GNU Radioで遊んでみてから、どうしようもなかったらMATLAB Communication Toolkitのほうでいってみよう、ということにしました。

 で、「GNU RadioのWindows BinaryだとADALM-PLUTOのドライバIndustrial IOが含まれていないのでLinuxのほうでIndustrial IOを含めてbuildしてやんないといけない」みたいな感じのことが、諸先輩がたのブログに書かれていましたが、AnalogDevicesの公式Wikiを探すと、Industrial IOを含めてBuildしたWindows 10用のBinaryが MSI installerで置いてあるじゃないですか。(下記URL)

 https://wiki.analog.com/resources/tools-software/linux-software/gnuradio_windows
 ※バイナリ自体はGitHub上にあります。

 というわけで、これをインストールしました。(実を言うと、先にGNU RadioのGitHubからIIOを含まないWindows Binaryをインストールしてしまっていたのですが、その直後にAnalogDevicesの公式WikiでIIO込みBinaryを見つけたので、アンインストールして入れ直しをしたりしました。)

 ADALM-PLUTOは接続してドライバをインストールしてある状態にします。で、スタートメニューからGNU Radio Companionを起動します。GUIが立ち上がってくるので、右側の階層メニューから[Industrial IO]-[PlutoSDR]-[PlutoSDR Source]をダブルクリックしてブロックを配置します。こいつがADALM-PLUTOのRX側になります。

 次にスペアナ表示するためのブロックとして、[Instrumentation]-[QT]-[QT GUI Frequency Sink]をダブルクリックして配置します。配置し終わったら、[PlutoSDR Source]ブロックの[OUT]と[QT GUI Frequency Sink]ブロックの[IN]をクリックして接続してやります。

 あとは[PlutoSDR Source]をダブルクリックしてプロパティ表示し、[Device URI]項目に「ip:pluto.local」と入力してやり、GUIのメニューで[Run]-[Generate](F5)をしてから、[Run]-[Execute](F6)をしてやれば、スペアナ表示が立ち上がってきます。

 

 これで「なにかひろってるな〜」というところまできました。GNU Radio Companionの階層メニューを見てると、いろいろわくわくする名前が並んでいますが、それはまた次回のお話ということにしたいと思います。

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2020年03月22日

フェアリング空調の検討(その8)

 フェアリング空調がどういうものか理解するため、串本町のスペースワン社のロケットを題材にフェアリング空調の検討をしてみました。

 なんだかしばらく見ないうちにスペースワンの射場建屋配置が発表されてしまい、どう見ても垂直整備・移動発射台の方式という感じになっていましたので、(その6)はやる必要ありませんでしたね。

 ※実は(その7)が書きかけだったのですが、そんな事情で欠番です。またいずれ書き上げてアップしたいと思います。

 今回は(その5)からの続きになります。


<ふりかえり、そして、いまからやること>

 (その4)と(その5)でだいたいの機器選定ができたところでした。これを実際に配置して装置として組み上げていくわけですが、制御盤と必要な配線を先に図面として出しておく必要があります。このあたりが見えていないと電気計装への配慮が欠けた配置で装置を設計してしまい、電気屋さんから文句を言われる羽目になりますし、そういうものはだいたいメンテナンスがしんどいものになります。

 では、まず制御盤に使用する機器の選定をしていきましょう。


<所要電流の概算>

 系統図を見て、大きな電力を消費しそうな機器をピックアップしましょう。大きな電力を使用する機器とはセンサ・計測器・スイッチ類を除いた物です。だいたい下記になるでしょうか。

  ・BLW1  電動送風機  U2S-370      4.5[kW]
  ・Heater1  空気ヒーター SAS-330      30[kW]
  ・Chiller1 空冷チラー  RKS1500F     1.5[kW]
  ・Pump1  冷却水ポンプ 50X40FSS2E61.5B  1.5[kW]
  ・Pump2  噴霧ポンプ  PW-60R-VTCE-HWJ  0.2[kW]
  ・----  ベビコン   1.5OU-9.5CG    1.5[kW]

 これらの機器のカタログ・仕様書・取扱説明書を確認して必要な定格電流を確認しましょう。ちなみに電源は発電機から取得し、電源電圧は400[V]とします。

 BLW1は5.5[kW]のインバータ三菱電機FR-A840-5.5K-GF-1で駆動します。すべてのインバータにオプションのDCリアクトルを設置しますので、定格入力電流は取扱説明書(基本編)の23ページの表から12[A](ND設定)です。また、取扱説明書(詳細編)の26ページの表から入力側のNFBは20A容量のもの、27ページの表からMCはS-T12になります。NFBはNF63-CVF 3P 50AF/20Aにします。

 Heater1のSAS-330は30[kW]の三相空気ヒーターになります。30[kW]-400[V]でデルタ結線の場合は線電流は43.3[A]になります。30[A]を超えると取扱が面倒になるので、ヒーターを3系統に分けることにし、設計を変更します。

 Heater1,2,3とし、SAS-310を3台、並列に設置することにします。これで線電流は1台あたり14.5[A]になります。3台に分けたことで、電力制御が必要なヒーターは1台だけとなり、残りはON/OFFで対応できます。

 電力制御が必要なヒーター用に20[A]以上の容量のサイリスタレギュレータを選定します。余裕を見てチノーJW40030NA116(400V,30A,位相制御,FBナシ)とします。ON/OFF制御が必要なヒーターは35AのSSRを選定します。SSRはオムロンG3PE-535B-3Nとします。いずれもMCはS-T25とし、NFBはNF63-CVF 3P 50AF/20Aにします。

 Chiller1のRKS1500Fは1.5kWの空冷チラーで、カタログより定格電流は7[A]でNFBには15[A]が要求されています。こちらは400Vの設定はなく200V電源になるので、400Vから200Vに降圧するトランスが必要になります。トランスは東洋技研の三相複巻トランスで容量が3kVAのTRP3K-42Yを選定します。NFBはNF63-CVF 3P 50AF/10Aとし、MCはS-T12とします。

 Pump1の50X40FSS2E61.5Bは1.5[kW]のモーター駆動で、これもインバータ駆動とします。採用するインバータは三菱電機FR-A840-1.5K-GF-1とします。前述と同じ資料から定格入力電流は4[A]となり、NFBはNF63-CVF 3P 30AF/10Aとし、MCはS-T12になります。

 Pump2はパルス信号入力に比例してポンプが動作し、電力も小さいため、単相入力であること以外は特に考慮することはありません。こちらも200Vの設定しかないので、降圧トランスが必要です。トランスは東洋技研のTRH200-41Sで、NFBはNF63-CVF 2P 50AF/5A、MCはS-T10になります。

 ベビコン1.5OU-9.5CGは1.5kW用の自動アンローダ式無給油レシプロコンプレッサの本体です。これに400Vの誘導モーターを組み合わせてインバータで駆動することにします。インバータはこれも三菱電機FR-A840-1.5K-GF-1とします。これも定格入力電流は4[A]で、NFBはNF63-CVF 50AF/10A、MCはS-T12になります。

 また、これら以外に制御用の電源が必要になりますが、この規模では2kVAを超えることはないので、制御用のNFBはNF63-CVF 2P 50AF/5Aとします。

メインの漏電遮断器の容量は各NFBの合計で決まります。20[A]+20[A]+20[A]+20[A]+10[A]+10[A]+5[A]+10[A]+5[A]で合計120[A]になり、漏電遮断器はNV125-CVF 3P 125AF/125Aとなります。


<アナログ入出力ch数の概算>

 アナログ入出力のch数をカウントしてコントローラ側に必要なユニット数を確認します。温度センサ(測温抵抗体)は専用の入力が必要になります。

  ・アナログ入力 :PE1,AHE1(1),AHE1(2),CntV1(OUT),
           CntV2(OUT),AHE2(1),AHE2(2),CntV3(OUT),
           CntV4(OUT),AHE3(1),AHE3(2),AHE4(1),
           AHE4(2),PE2,FM2,PE3
  ・測温抵抗体入力:TE1,TE2,Heater1,Heater2,
           Heater3,TE3,TE4,TE5,TE6,
           TE6
  ・アナログ出力 :CntV1(IN),CntV2(IN),CntV3(IN),CntV4(IN)

 アナログ入力はすべて4-20mA電流ループ信号は16chになります。測温抵抗体は10ch、アナログ出力は4chになります。三菱電機iQ-Rのアナログ入出力は1ユニット8chになります。


<ON/OFF入出力ch数の概算>

 ON/OFFで使用するch数をカウントします。

  ・スイッチ入力  :PnV1(OUT1),PnV1(OUT2),LS1,LS2,
  ・リレー出力   :Chiller1,
  ・トランジスタ出力:Pump2,PnV1(IN)



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今回はここまでになります。次からは各機器の端子や電線の接続まわりを確認していきます。




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2019年08月18日

フェアリング空調の検討(その6)

フェアリング空調がどういうものか理解するため、串本町のスペースワン社のロケットを題材にフェアリング空調の検討をしてみました。

(その5)を書いた後、知人から「移動発射台で垂直整備で垂直発射の前提で書いてるけど、そもそもそのあたりのトレードオフを検討してなくない?」という指摘がありましたので、今回は脱線しますが、そのあたりを検討してみます。定量的にやるのはしんどいので、定性的な話に終始していますがご勘弁ください。

<ここでトレードオフを検討するもの>

 次の3つになります。

  ・機体整備の方式

  ・発射台の方式

  ・発射の方式

 これだとなにがなんだかわかりませんので、いくつかのロケットを例に挙げてみましょう。

 まずは機体整備の方式について見てみます。例えばH-IIAロケットはVABで垂直に機体を積んで組み立てます。機体整備の方式としては垂直機体整備方式となります。一方、IST社のMOMOは水平状態で機体を組み立てますので、水平整備方式となります。また、ファルコン9は水平状態で衛星の搭載まで行う水平整備方式です。

 次は発射台の方式について見てみます。H-IIAロケットはVABで移動発射台上に機体を積んで組み立てた後に、VABから射座へ移動しますので、発射台の方式としては移動発射台方式となります。N-I、N-II、H-Iロケットでは射座の固定発射台上で組立と機体整備が行われ、また整備棟自体が移動できるようになっていました。これは移動整備棟方式となります。水平整備方式の場合は水平に長い整備棟を移動させるのは利点がないため、移動発射台方式を使用することが多いようです。

 発射の方式について、規模の大きいロケットのほとんどは垂直発射方式になります。ランチャー方式となるのはラムダロケット、ミューロケットあたりになります。


<垂直整備方式 V.S. 水平整備方式>

 垂直整備方式は機体を垂直に立てて組立・整備するので整備棟の軒高さが高くなります。機体の高さに加えて天井クレーンの揚程に余裕を見た軒高さが必要になってきます。また、建物がタワー状になるので、風が強い沿岸部の射場では風圧に対しての考慮が必要になってきます。また、耐震の面でも高さがあると考慮することが多くなるので大変です。扉あるいはシャッターも発射台に載せたロケットがくぐれる高さのものが必要となるため、これも大変です。

 また、垂直整備の苦しい部分としてはクレーンの揚程が大きくなって特注(防爆なのでもともと特注ですが)になり、機体へのアクセスのために昇降できるフロアを細かく用意しなければならない点もあります。場合によっては作業床全体を垂直方向に上下移動できるようにしなければならないこともあります。

 以上のようにあまり利点のなさそうな垂直整備方式ですが、機体の起立装置が不要で、衛星も垂直に搭載でき、整備棟が面積とらない点が優れています。これらが理由で垂直整備方式は本邦に限らず実績の多い方式です。

 水平整備方式は水平方向にロケットを寝かせて組立・整備するため、ロケット組立棟のスパン方向にロケットの全長+起立装置+ジグ+作業余裕の長さが必要になります。しかし鉄骨造であればスパン方向を増やしても建設の難度があがることはありません。

 また、水平整備方式の建物は高さが低いので建築費用が安くなります。通常の工場や倉庫と同様の工法が使えますし、新日鉄住金エンジニアリングの「スタンパッケージR」のような短工期なシステム建築が適用できます。水平整備方式なら寝かせているので、機体直径の3倍程度のクレーン揚程があれば対応できます。

 ジグも高さをとらなくて済むため、組立工程の設計の自由度が高いのも利点です。結合作業は寝かせた円筒の全周に対して行うことになるため、作業性を確保するためのジグが必要ですが、作業床のような大きな構造物を持つ必要もありません。

 水平整備方式は射座あるいは移動発射台に起立装置が必要になります、全段液体のロケットであれば、推進剤を充填する前の質量は全備質量の約10%未満なので、起立装置に要求される性能は低く抑えられます。そのため、ファルコン9やソユーズなど推進剤を起立後に充填する全段液体ロケットに多くみられます。

 逆に大型固体ロケットを射座で起立させる方式があまり見られないのは、固体ロケットが推進剤をあらかじめ充填してから組み立てなければならないというところが大きいのだと思います。(固体を主体にした大型ロケットはそもそもそれほど多くないですが。)


<移動発射台方式 V.S. 移動整備棟方式>

 移動整備棟方式は整備棟が移動しなければいけないので、整備棟の規模が大きくなると移動可能な整備棟を作って運用するのが大変になります。規模としてはH-Iロケット程度までが適正というところではないかと思います。一方、射座から機体を移動させずに済み、着座精度が自然と確保できるのが利点です。また、液体ロケットにおいては推進剤の充填配管を整備棟のある段階で接続しておけるという点も、運用上の大きな利点です。

 発射台を移動する移動発射台方式は発射台が移動するので、推進剤充填配管を発射台が着座した後に結合する作業などが発生します。また、レール移動であれば着座精度は前後方向だけの話になりますが、タイヤ移動タイプでは着座精度を確保するためにいろいろな対応が必要となってきます。


<垂直発射方式 V.S. 傾斜ランチャー方式>

 垂直発射方式は発射方位角によらず、一定の射座配置になるので、地上設備側には優しくなります。また、オープン型のデフレクタではなく煙道を使用できるので、機体やペイロードへの音響振動の面で優しくなります。小型とはいえ商用ペイロードを相手にするならば煙道は使用したいところです。

 一方、垂直発射方式を採用すると発射直後から機体の制御が必要になってきます。また、垂直発射方式では機体の支持方法が問題になってきます。イプシロンロケットでは1段目底部のリングを油圧シリンダでクランプする方式を採用しています。この油圧シリンダでのクランプは地震による機体転倒に耐えるために採用されました。(クランプは発射数分前に解除されます。)

 傾斜ランチャー方式は機体をランチャーに吊り下げるような形で傾斜させて発射します。比較的小規模なロケットで多く見られる方式です。(ミューロケットの規模を傾斜ランチャーで発射していたのは結構めずらしい事例ではないかと思います。)


<各方式の比較>

 さて、各方式を概観したところで、どの方式が串本S1ロケットに適しているか検討したいと思います。

 串本S1ロケットのサイズであれば、どちらの方式がイニシャルコストとオペレーションコストの合計で有利になるでしょうか。オペレーションコストについては設備の耐用年数を10年とし、平均で年15回のローンチに使用するとして、おおまかな試算をして比較してみましょう。ペイロードの音響振動の面から発射方式は傾斜ランチャー方式ではなく垂直発射方式とします。また、移動整備棟の場合は水平整備ではなく垂直整備のみとし、比較は次の3方式とします。

  A.水平整備・移動発射台

  B.垂直整備・移動整備棟

  C.垂直整備・移動発射台

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脱線したままですが、今回はここまでになります。
続きは来月になると思います。

※今回は株式会社コスモテック・技師長 長尾隆治氏のコラムの引き写しみたいなものなので、本家も読んだいただいたほうがいいかもしれません。面白いです。
 http://www.cosmotec-hp.jp/column/

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2019年08月15日

フェアリング空調の検討(その5)

フェアリング空調がどういうものか理解するため、串本町のスペースワン社のロケットを題材にフェアリング空調の検討をしてみました。

フェアリング空調系統に必要な能力推定と具体的な機器選定を続けます。


<センサ/伝送器類の機器選定>

 要求として送風量が出ているので空気の流量を測定し制御する必要があります。気体用の流量計にはいくつか種類がありますが、今回のような流量・圧力・温度の条件下で使いやすいのは熱式質量流量計(マスフローメーター)か渦式流量計か超音波流量計でしょう。価格的に安価なのはマスフローメーターか渦式流量計です。筆者は渦式流量計に慣れていますので、今回はこちらを採用します。マスフローメーターならアズビルのCML型にします。渦式流量計はオーバルのEXデルタ型にします。

 渦式流量計は流路に直交した断面がデルタ型の渦発生体により発生するカルマン渦の周波数が、流速とストローハル数に比例することを応用した流速の計測器です。これに測定管の断面積を積算することで流体の体積流量が得られます。カルマン渦の検出上下限が測定流量上下限となるため、あまり対応可能な流量計測範囲は大きくありませんが、今回のようにほぼ定流量であれば問題ありません。

 さて、気体は圧縮性があるため、体積流量を得ただけでは質量流量はわかりません。今回は質量流量の要求まではありませんが、どのみち流量計出口で圧力と温度は測りますので、それを用いて質量流量の演算も行うようにします。

 圧力の計測は圧力伝送器を使用します。測定の確度が高いほうがよいですが、クリティカルな事項ではないので、定番で入手性のよい長野計器KH15を採用します。温度はシース測温抵抗体を使用して測定します。安定の岡崎製作所R96Nを採用します。もんじゅの事故を思い出しながら、シース長は100mm以下におさえます。保護管付きでもいいかもしれません。

 湿度の要求もあり、湿度の制御もしなければいけません。湿度の測定は絶対湿度と相対湿度の出力ができる、テクネ計測EE33を採用します。絶対湿度と温度から相対湿度を計算して、必要な除湿/加湿量を求めます。最終的にはアンビリカルマスト頂部のEE33で測定した相対湿度が要求値に入っているかどうかになります。

 清浄度の要求もあります。これはサンプリング式のパーティクルカウンタを使用して、インラインで計測します。パーティクルカウンタは本来であればアンビリカルマスト頂部に設置するべきですが、入口側で清浄度が確保できていれば問題ないと判断して、フィルタ後段に設置します。製品は少し高価になりますが、ベックマン・コールター社のMET ONE 6003を採用します。


<バルブ類の機器選定>

 除湿用の熱交換器と加熱用ヒーターはバイパス流路を設けて除湿量/加熱量を微調整できるようにしますので、調節弁が必要になります。定石ならばグローブ弁タイプの調節弁(筆者はアズビルのACT型が大好き)を使いますが、システム圧力が低く流量もそれほど大きくないので、バタフライ弁タイプの調節弁を採用します。安さに定評のある日本バルブコントロールズのTAC063DN901TTF-080-EU型とします。こちらは4-20mAの信号で開度を指示し、また、現状の開度を4-20mAでリターンしてくるスマートポジショナ搭載品とします。

 その他に吸込の開閉が必要になりますので、そちらにはKITZの空動バタフライ弁を使用します。あとは手動のバタフライ弁とボール弁になりますが、このあたりもKITZで統一します。

 調節弁も空動弁も操作用のエアが必要になりますので、小型のコンプレッサーとバッファタンクを準備します。バルブ類の操作頻度はそれほど多くなく、1馬力程度のコンプレッサーで補充は十分間に合います。安価な日立産機システムのベビコンを採用します。バッファタンクは少し大きめの300Lとします。第二種圧力容器検定を受けたものにします。ドレンによる腐食抑制のため、内部エポキシ塗装品を採用しましょう。ドレンの定期排出のための電磁弁と安全弁の設置も忘れてはいけませんね。また、操作エアの圧力監視を行う必要がありますので、こちらも長野計器のKH15を設置します。


<送風機>

 送風機はインバータで運転周波数を変えて、送風量をコントロールします。送風機の羽根車はイナーシャがけっこう大きいので、容量が1まわり大きいインバータを選定したほうが無難でしょう。周波数変化率と電流を制限するパラメータはきちんと設定しておきましょう。インバータは通信操作としますので、三菱電機FR-A820-5.5K-GF-1を採用します。


<チラー>

 RKS1500Fは接点をON/OFFしてやるだけで、特になにかあるわけではありません。設定は本体パネルで行いますが、こちらは5℃固定にしておけばOKでしょう。循環液は工業用水にナイブラインZ-1(エチレングリコール系添加剤)を30%添加したものを使用します。冷却能力が10%ほど低くなりますが、凍結と腐食を防止できます。


<コントローラー>

 さて、コントローラのほうを見ていきましょう。こういった設備機器を制御するコントローラにはいろいろありますが、おそらくイプシロンロケットの地上設備系でも使われているであろう、三菱電機のシーケンサとタッチパネルでコントローラを採用します。(地上系のペーパーに三菱電機のタッチパネルがそのまま出てきていました。)

 インバータと通信したいので、CC-Linkユニットを使用します。あとは調節弁や噴霧用ポンプと4-20mAの信号をやりとりするためのアナログ入出力ユニットが必要になります。

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今月はここまでになりますが、機器選定はまだまだ続きます。
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2019年07月21日

フェアリング空調の検討(その4)

フェアリング空調がどういうものか理解するため、串本町のスペースワン社のロケットを題材にフェアリング空調の検討をしてみました。

ようやくフェアリング空調系統に必要な能力推定と具体的な機器選定にうつります。


<吸込空気の条件とフェアリング空調の条件>

 空調の条件を確認しましょう。前回、4つの吸込空気条件を挙げましたが、条件1と条件3が他の2つを包含していましたので、2件だけにします。

 [吸込空気の条件1]
  温度:−2[degC]
  相対湿度:47[%]
  (乾燥した冬の日)

 [吸込空気の条件2]
  温度:34[degC]
  相対湿度:81[%]
  (真夏日)

 [フェアリング空調の条件]
  温度:20[degC]±5[degC]
  相対湿度:65[%]±5[%]

 まずは各条件で空気中に含まれている水蒸気量を求めます。水蒸気量は飽和水蒸気圧から飽和水蒸気量を求め、それと相対湿度の積から算出します。(近似的な計算です)

 飽和水蒸気圧はワグナー(Wagner)の式で求めます。

 ・ワグナー(Wagner)の式

  e(t) = P(c)・exp{( A・x + B・x^(3/2) + C・x^(3) + D・x^(6) ) / (1 - x) }

   e(t):指定温度における飽和水蒸気圧[hPa]
   P(c):臨界圧力 221200[hPa]
   T(c):臨界温度 647.3[K]
   x:(1 - (t + 273.15))/Tc
   A:-7.76451
   B:1.45838
   C:-2.7758
   D:-1.23303
   t:指定温度[degC]

 上記の式から、それぞれの条件の温度での飽和水蒸気圧は下記になります。

  空調条件   :23.4062[hPa]
  吸込空気条件1: 5.2812[hPa]
  吸込空気条件2:53.2657[hPa]

 次に飽和水蒸気量の式で飽和水蒸気圧から飽和水蒸気量を求めます。

 ・飽和水蒸気量の式

  ρ(w) = ( 216.7・e(t) ) / ( t + 273.15 )

   ρw:飽和水蒸気量[g/m3]
   e(t):指定温度における飽和水蒸気圧[hPa]
   t:指定温度[degC]

 上記の式から、それぞれの条件での飽和水蒸気量は下記になります。

  空調条件   :17.30214[g/m3]
  吸込空気条件1: 4.22068[g/m3]
  吸込空気条件2:37.57994[g/m3]

 次にそれぞれに相対湿度を掛け算することで、その条件で空気中に含まれている水蒸気量を求めます。すると、下記のようになります。

  空調条件   :11.24639[g/m3]
  吸込空気条件1: 1.98372[g/m3]
  吸込空気条件2:30.43975[g/m3]

 最終的に空気中に含まれている水蒸気量を空調条件にあわせなければいけないので、吸込空気条件1では9.26268[g/m3]の加湿が、吸込空気条件2では-19.19335[g/m3]の除湿が必要になります。

 送風量は簡単のため、1分間あたり5[m3]、つまり 5[m3/min] とします。すると、1分間あたりの加湿量あるいは除湿量は次のようになります。

  吸込空気条件1: 46.313378[g/min]
  吸込空気条件2:-95.966775[g/min]


<除湿の方法と機器選定>

 除湿にはいろいろな方法がありますが、空気を目的の水蒸気量が飽和水蒸気量となる露点まで冷却して、余分な水蒸気を水滴として回収してしまう方法が今回の用途には適していると思います。

 目的の水蒸気量は空調条件である11.24639[g/m3]です。飽和水蒸気量がこの11.24639[g/m3]に近い温度は先ほどの飽和水蒸気量の式から12.8[degC]になりますので、この温度まで空気を冷却すれば、除湿ができます。(実際は過飽和するので、もう少し低い温度にするなりしないといけませんが)

 吸込空気条件2の空気温度は34[degC]ですので、これを12.8[degC]まで冷却しなければいけません。温度差21.2[K]で、空気の比熱が1.007[KJ/(kg-K)]、送風量が5[m3/min]で空気の密度が1.236[kg/m3]なので、これを全部掛け算して、必要な冷却量は131.93[kJ/min]=2.2[kW]となります。

 2.2[kW]であればよくある空冷チラーで対応可能な温度です。今回は オリオン機械 RKS1500F を選定しましょう。冷却水温度5[degC]時に2.5[kW]の冷却能力を持っています。

 冷却は熱交換器で空気と冷却水を熱交換して行います。冷却水の流量は市販のポンプで安価に入手できるレンジとして50[L/min]を設定します。熱交換を行った後の冷却水温度は5[degC]から5.63[degC]まで上昇します。

 気体と液体の熱交換に用いる熱交換器はフィン&プレートが定番ですが、空気側をCIP洗浄する可能性を考えて、今回はシェル&チューブとします。材質はステンレスでいきます。

 熱交換器の総括伝熱係数は液体側と気体側のRe数に依存するのでめんどくさい計算が必要になりますが、参考資料でだいたいこのくらいになるという数値がありますので、今回はそれを使用して省略します。気体と液体の熱交換では10〜60[W/(m2-K)]になるとありますので、下側の10[W/(m2-K)]を使います。(水は性能いいほうなので、実際はたぶん30[W/(m2-K)]以上になります)

 熱交換器に必要な伝熱面積は対数平均温度差と総括伝熱係数と必要な冷却量から求めます。対数平均温度差は空気の入口温度と出口温度、冷却水の入口温度と出口温度から、15.62[K]となり、必要な伝熱面積は14.1[m2]となります。

 熱交換器ですが、今回は 大生工業 TCW-366-2-SCS を選定します。ステンレス製のシェル&チューブです。本来は油圧用オイルの水冷用に使うモデルですが、ちょうどよい寸法と形状だったのでこちらにしました。この型式は伝熱面積が3.3[m2]なので、これを5台並べて使用します。(実際、この伝熱面積であればシェル&チューブ専業の熱交換器屋さんに設計を含めて作ってもらったほうが安いです)

 総括伝熱係数をかなり低く見積もってるので熱交換しすぎる場合がありますが、冷却水の流量や温度をおさえてやれば対応できます。

 除湿をするために、空気を12.8[degC]まで冷却したので、これを空調条件の20[degC]まで加熱する必要があります。必要な加熱量は先ほどの空気冷却と同じ計算で、0.75[kW]程度になります。

 加熱用のヒーターは加湿時と冬場の加熱で使用する加熱量を基準に選定することになりますので、ここでは決めません。


<加湿の方法と機器選定>

 加熱した空気中に水をノズル噴霧することで加湿を行います。吸込空気条件1での加湿量は46.313378[g/min]で、噴霧水の流量としては0.046[L/min]となります。噴霧水はスケール付着防止のため、カートリッジ式純水器でイオン交換した純水を使用します。今回は オルガノ G-5 を使用します。加湿用の噴霧ノズルですが、今回は いけうち 1/4M KB 80 09 S303-RW を使用します。噴霧加圧ポンプは流量が少ないので、今回は タクミナ PW60でいきます。

 噴霧した水が空気中に溶解するためには蒸発しなければいけません。蒸発に必要な潜熱を空気から奪うことになるため、空気はあらかじめ加熱しておく必要があります。飽和蒸気表から20[degC]における気化潜熱は2454.3[KJ/kg]です。加湿量は46.31[g/min]=0.0077[kg/sec]なので、必要な加熱量は18.9[kW]になります。

 また、冬場は低い温度で空気が入ってくるため、単純に空調条件まで温度をあげる必要があります。こちらも前の空気冷却と同じ計算で、温度差が22[K]として、必要加熱量は2.28[kW]となります。

 ヒーターの加熱容量として必要になるのは、18.9[kW]+2.28[kW]ですので、少し余裕を見て30[kW]の空気用ヒーターを選定します。今回は 日本ヒーター SAS-330 を選定します。


<清浄度確保の方法と機器選定>

 清浄度を確保するためにHEPAフィルタを使用します。今回は Panasonic P-HG610610V0 としました。(5[m3/min]で使用するには少し大きいですが、圧損を抑えるためです)

 また、射場は海沿いになりますので、吸込口のプレフィルタとして塩害防止フィルタを使用します。今回は Panasonic P-L8610610V0 とします。


<流速と圧損と配管径選定>

 射場の規模から継手部の相当長も見込んだ配管長を100[m]と設定します。5[m3/min]の流量に対して、65A/80A/100A/150Aのそれぞれの流速と圧力損失は下記のようになります。

  65A:21.65[m/s]、8.6[kPa]
  80A:15.40[m/s]、3.7[kPa]
 100A: 9.10[m/s]、0.99[kPa]
 150A: 4.30[m/s]、0.16[kPa]

 空気輸送の場合の経済的流速は10〜20[m/s]で、今回は80Aが適切なサイズですのでこれを選定します。


<送風機の選定>

 圧力損失の積算をここで羅列するのもどうかと思いますので、選定結果だけでいきますと、昭和電機 U2S-370 4.5kW 2Pole 200V を選定しました。5[m3/min]時に11[kPa]の静圧が期待できます。機器の圧力損失と配管圧力損失はあわせても8[kPa]程度ですので、十分な能力だと思います。

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今月はここまでになりますが、機器選定はまだまだ続きます。


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2019年07月20日

フェアリング空調の検討(その2)

フェアリング空調がどういうものか理解するため、串本町のスペースワン社のロケットを題材にフェアリング空調の検討をしてみました。

前回、「配管・ダクト・送風機あたりの選定をする」ようなことを予告していましたが、その前段階検討の一つとして、今回はアンビリカルマストの高さとアンビリカル空調ホースの長さの検討をしていこうと思います。

※固体ロケットではロケット組立棟からの出し入れが比較的容易なため、避雷鉄塔の設置はなしとします。

※ あいもかわらずあてずっぽうの数字ばかりなので、そのへんは生温かくスルーしてください。どちらかといえば検討の流れみたいなものを見る感じでお願いします。


<アンビリカルマストの目的>

 アンビリカルマストはロケットの地上待機期間において、フェアリング空調ダクトと電気系/通信系アンビリカルケーブルをフェアリング近傍に接続する際に、支えとなる構造物です。(フェアリング以外の場所にアンビリカルケーブルやダクト/ホース類がある機体もあります。)

 また、ロケットの発射直前にロケット周辺からダクト/ケーブル類を遠ざけるための機構もアンビリカルマストに含まれます。


<パッドドリフト量の確認>

 スペースワン社のロケットがどのような発射形態を取るかはまだ判明していませんが、ここでは移動発射台からの垂直発射方式と仮定して話を進めます。

 射座周辺は無風状態が理想ですが、串本射場のように海岸の上50[m]の台地に射座があり、さらに南南東向きの太平洋岸であることを考えると、年間を通して無風であることは考えにくい状況です。また、スペースワン社は年間20機のローンチを行うとしていますので、2週間に1回は発射の機会があることになります。そのため、多少の強風は許容できる設計にしなければなりません。

 ここでは風速15[m/s]でロケットからアンビリカルマストへ風が吹き付けている状況でのパッドドリフト量を簡易的に確認してみます。

 ロケット機体は直径1.4[m]、長さ18[m]の円柱として近似し、この円柱に風が吹き付けて抗力が発生し、アンビリカルマスト方向に加速度が発生する状況を想定します。円柱の抗力係数は1.2と仮置きします。(抗力係数は本来、レイノルズ数を考慮して仮置きすべきですがここでは省略します)

 大気密度:ρ[kg/m3]
 流速:V[m/s]
 投影面積:S[m2]
 抗力係数:Cd

 抗力の式

  D = 0.5・ρ・V^2・S・Cd

 大気密度ρ=1.293[kg/m3]、投影面積S=1.4 x 18=25.2[m2]、流速=15[m/s]として、発生する抗力は4399[N]になります。

 スペースワン社の発表では機体全備質量m=23,000[kg]となっており、発射直後の推進剤質量の減少は無視するとして、水平方向の加速度は下記となります。

  a(HL) = D/m = 4,399 / 23,000 = 0.19[m/s2]

 一方、垂直方向の加速度についてですが、ロケット1段目の推力は発表されていないため憶測するしかありません。ここではイプシロンロケットの1段目の発射時加速度を参照して使用します。

 イプシロンロケットは形態によりますが、機体全備質量m=91,000[kg]、1段目推力F=2,200[kN]とすると、垂直方向の加速度は下記となります。

  a(VT) = (m/F)-g = ( 2,200 / 91,000 ) - 9.8 = 15.16[m/s2]

 アンビリカルマストの高さはこれから検討する数字になりますが、スペースワン社の発表では機体全長が18[m]となっているため、これに2割ほど高さを加えて仮に22[m]とします。

 さらにここにドリフトに対するマージンとして10[m]を加えて、32[m]になった際の想定ドリフト量をアンビリカルマストおよび付属装置の安全限界として設定します。

 ロケットが32[m]まで上昇するのに必要な時間は垂直方向の加速度から、

  t = sqrt(2h/a(VT)) = 2.05[sec]

 となります。この時間に風速15[m/s]の風による抗力で機体がドリフトする量は水平方向の加速度から、

  x = 0.5・a(HL)・t^2 = 0.194[m] = 194[mm]

 となります。加速度の大きい固体ロケットで機体直径も細いため、風によるドリフト量はかなり小さくなります。

 機体推力の偏向によるドリフトについてはここでは検討しませんが、それらを考慮しても、発射時の機体外径から800[mm]をアンビリカルマストおよび付属装置の安全限界とすればよいかと思います。


<アンビリカルマストの高さ>

 アンビリカルマストの高さですが、先ほど仮置きした長さ、22[m]で検討を進めたいと思います。他の要素を検討していると変更が出るかもしれませんが、検討のマージンがあるので吸収できますし、マージンからはみ出すようであれば再検討すればよいです。

 アンビリカルマストの高さが仮決めできたので、これを元に、配管長も22[m]とし、圧力損失計算に必要な継手数を、エルボ6点、ティー4点、バタフライ弁4点としてこちらも仮置きします。


<アンビリカルホースの長さ>

 アンビリカルホース離脱をランヤード方式とするかスイングアーム方式とするかで変わってきますが、機体外径から800[mm]をアンビリカルマストと付属装置の安全限界としたので、伸縮動作を考え、その倍の1600[mm]をアンビリカルマストと機体外径の距離として設定します。これにより、アンビリカルホースの長さを1800[mm]程度とします。


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先月の送風量の検討に続いて、今月はアンビリカルマスト関連の配管長とホース長を検討しました。

来月は予定通り配管・ダクト・送風機あたりの選定について触れたいと思います。


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2019年07月07日

手書き製図の実習とCADの時代

※機械系の話です。基板CADや土木建築CAD/BIMやCAE/CAMの話はしていません。

<手書き製図の実習>

 学生さんや若い技術者さんがTwitterで「いまどき手書き製図の実習とか自分の通っている学校おわってる」というようなことをTweetしてたりするのをたまに見かけます。

 いまどきCAD使わないなんて、というのは、たしかになあ、という気持ちもあります。

 一方で、一度手書きをやってると違うよ、という同年代以上の方の意見にも、身体的動作としての筆記で図面を描くという体験には意味があるかもしれない、という気持ちにもなります。


<自分が学生だった頃>

 1997年から2002年まで高専機械科で学生をしていたので、3D-CADの普及初期にかぶっていますが、工場実習でマイナーな2D-CAD+等高線CAMを12時間ちょい触ったぐらいで、在学中は3D-CADを使ったことはありませんでした。ちょっと特殊なのは小学生のときにMS-DOS上で動くコマンドベース2D-CADを実家の工場で触らせてもらったことがあるくらいでしょうか。

 つまり学生時代、設計と製図はすべて紙の上でやっていました。A2のケント紙をひとまわり大きいサイズの製図板の上にマスキングテープで固定して、T定規と三角定規で平行線や補助線を引いていき、コンパスを使って長さを出していきます。

 製図をしながら、「なんでCADじゃないんや」というのは当時の僕も思っていました。


<自分が仕事で使っているCAD>

 高専を出て就職してから7年間はネットワークSEをやっていたのでその間はCADなんてまったく使いませんでした。CADを使い始めたのは実家に戻って家業の手伝いはじめてからです。

 家業の事務所では「EASY DRAW」という2D-CADソフトを使っていたのですが、いまひとつ馴染めなかったので、自腹で「頭脳RAPID」という2D-CADソフトを購入しました。しばらくしてから事務所のCADは3ライセンスともすべて「AutoCAD LT」に入れ替えましたが、自分はいまも手に馴染んだ「頭脳RAPID」を使っています。

 *EASY DRAW https://www.andor.co.jp/products/easydraw/price.html
 *頭脳RAPID https://www.photron.co.jp/products/2d-cad/rapid19/
 *AutoCAD LT https://www.autodesk.co.jp/products/autocad-lt/overview

 とはいうものの、いまどき3Dぐらい使えないとね、という気持ちもあるにはあって、Inventor Professionalのサブスクリプションも契約しています。とはいえ、仕事に使えるレベルにはまだなっていないのですが。


<なんのために図面を作るのか>

 なんのために図面を作るのか、というと、

  「ユーザーや顧客に承認を得るため(営業的)」

  「製作するものが物理的・論理的な整合性を持っているか客観的に確認するため(品質管理的)」

  「組立や部品加工で作業する人に何をしたらいいかを伝えるため(製造管理的)」

  「設計の成果物として納品して対価を得るため(ふたたび営業的)」

 の大きく4つに分かれると自分は考えています。

 実際につくる図面だと、自分の場合、下記を2D-CAD(「頭脳RAPID」)で書いています。

 1.ユーザーや顧客から設計の承認を得るための納入仕様図、系統図、構成図

 2.構造を作業者が組み立てるための組立図

 3.部品を製作するための部品図

 4.制御盤を作るための電気回路図、盤組立図

 5.制御盤と制御機器を電気的に接続するための配線図

 図面というのは数日後の自分を含めた第三者とのコミュニケーションツールなので、あとで読んで伝わればどうやって書いてもいいという話もあったりします。

 そういう視点とコンピュータ上に製図板を再現している2D?CADというのは、とても相性がよく、「頭脳RAPID」を愛用している自分も当然そういう視点が強いのだろうな、と自覚はしています。
 (「頭脳RAPID」はドラフター的な操作がすごく馴染むのです)


<2D-CADの限界と設計援護ツールとしての3D-CAD>

 さて、そうはいうものの、製作するものの規模(というか構成要素数)が大きくなると、整合性の確認という点では2D-CADの出力する2D図面は第N角に投影された線の集合でしかないので、怪しくなってきます。3D-CAD(CATIA、Solidworks、Inventorあたり)であれば、要素間の関係がアセンブリ空間上で厳密に定義できますから、物理的な整合性の確認にはもってこいです。先日も2D-CADで書いた図面で作って配管と構造物の干渉をやらかしましたが、こういうのは3D-CADであればアセンブリ時に干渉チェックですぐに気がつくことができます。

 最近の3D-CADパッケージには簡易的な構造FEA機能(Inventorのスイート製品にはNastran簡易版がついてくるようになりました)が含まれていたりしますので、強度や剛性の確認も(どこまで厳密かはさておいて)簡単にできますし、流行りのジェネレーティブデザインなどにも対応していたりします。

 2D-CADは「コンピュータ支援ドラフター」ですが、3D-CADは、まだ進歩の途上ではありますが、「コンピュータ支援設計機」ということが言えると思います。


<アウトプットとして求められるもの>

 本邦限定の話ですが、現在は過渡期なので、図面を承認する立場の人で3Dモデルでの承認に慣れている人や組織はまだ全体の半分にも満たないのではないかと思います。そのため、アウトプットとしては2Dの図面を出力できなければいけません。しかし、それさえできればなんでもいいとも言えます。

 部品を製造する側も過渡期で、低チャージの加工を請け負う人たちはPC操作の能力がないことが多く、やりとりもFAXと電話ベースだったりしますが、一方でPCを使い、5軸加工機と専用CAMをそろえて単価をあげていく加工請負の人たちもいます。自分の組織の仕入先にどちらが多いのか、ということに左右されますが、2D図面を出せればたいていはなんとかなります。

 つまり、まだまだアウトプットとして求められるのは2D図面が多いのです。しかし、アウトプットがプロセスを完全にしばるわけではありません。


<手書きは本質ではない>

 はじめに戻ります。さて、「いまどき手書き製図の実習とか自分の通っている学校おわってる」という、かつての自分やいまを生きる学生さんの発言に対して、自分はどう答えるべきでしょうか。製図板やドラフターを使った手書き製図、ドラフター的な2D-CAD、設計支援機能のある3D-CAD、どれを設計製図の実習に使ったらいいのでしょうか。

 自分の経験ベースで恐縮ですが、製図板やドラフターの苦労の大半は「寸法どおりにきれいな線を引く」というところに集約されますので、自分を振り返ってみても、学生のときに安い2D-CADとA2プロッターがあったら、そっちで課題をやっていたと思います。また、学習効果としても製図板とドラフター的な2D-CADに大差はないのではないかと思います。

 (一応、「専用ペンシルで線を引くことで身体的に図面を描いて得られる何か」というのもあったりするのかもしれない、という危惧はちょっとしていたりします。しかし、この危惧というのは自分の苦労した経験が無駄ではなかったと考えたい気持ちから出てはいないか、というところもあるので、ここでは考えないようにします。)

 以上より、「いまどき手書き製図の実習とか自分の通っている学校おわってる」という話には大いに頷けるところがあって、ライセンス費用やPC台数やソフト選定の問題がクリアできるなら2D-CADで製図できるようにできたらいいのではないかと思います。

 2D-CADを使うことで、ケント紙と格闘する時間を省略でき、より要素数の多い設計とその製図を行うほうが技術者の養成という点ではいくらか合理的なのではないかと考えます。(ほんと、綺麗に消しゴムかけるのめんどかった)

 ただし、2D-CADはUIがソフトウェアによって大きく異なり、学校での実習という少ない時間では操作技能の習得に終始してしまい、また、違うソフトウェアに触れたときに「学生時代に触っていた物と違う」という心理的障壁を築いてしまうという面も忘れないようにしたほうがいいかとは思います。その点で、手書き製図のUIは究極的にはペンシルと定規と紙に集約されるので、ツール的には最も汎用的であるとは言えます。


<2D-CAD or 3D-CAD>

 話を戻します。では、2D-CADと3D-CAD、どちらで設計製図の実習をしたらよいのでしょうか。 

 3D-CADといきたいところですが、残念ながら、本邦において、ものをつくるプロセスから2D図面が完全に排除できていない以上、2D図面を見て立体的な構造をそこから把握できる能力がなければいけません。

 現状では皮肉なことに、3D-CADで設計だけを業務とする技術者は(結果を自分が知っているので)この能力があまり必要ないのですが、企画と承認をする立場になったり、組立を指揮する立場になると2D図面とにらめっこすることが仕事になります。そして、その能力を3D-CADを使用するだけですべての学生さんが習得できるかどうかという点に、自分は懐疑的です。

 2D-CADあるいは手書きでもいいですが、2D図面を自分で描くということを繰り返さないと自分のような凡人が「2D図面を見て立体的な構造をそこから把握できる能力」を身につけるのは難しいと思います。そして、そういった「イケてないけどやっておくとあとで便利なこと」を半ば強制する環境を用意するのが学校の重要な要素であると思います。

 これは、3D-CADを触るな、という話ではありません。3D-CADは学生さんであれば学生ライセンスで安く(といっても一万円は学生さんには安くないかもしれませんが)契約できますし、Autodesk360は商用利用でなければ学生はフリーということもあるので、自分で勉強することもできます。(A360がCADと言っていいかどうかは議論があるところだとは思います)

(まともなPCを買うお金の問題がでてきますが、)「いまどき手書き製図の実習とか自分の通っている学校おわってる」とTwitterで言っちゃうくらい意識が高い学生さんはそういう環境を利用して自分を高めていくとよいかと思います。


<で、結局どうなの?>

 「いまどき手書き製図の実習とか自分の通っている学校おわってると思いませんか」という質問に対するいまのところの自分の答えは

  「教育機関の予算や制約が許せば2D-CADでいいと思います」
  「いろいろ制約があって2D-CADが導入できないなら、手書き図面にスケール当てて線の太さや線の長さをチェックして書き直しさせるあまり本質的ではない評価はやめたほうがいいと思います」
  「設計製図は設計書の評価を中心にしたほうがいいと思います」

 というところでしょうか。


<仕様書(設計書)、ちゃんと作ろ?>

 「手書きに綺麗に製図することって設計の本質なの?」という点については、手書きが2D-CADや3D-CADに変わっても同じです。(かつての自分のように)要件定義やモデリングをしないままに複雑な構成で綺麗な3Dモデルを作ってくるエンジニアリング会社の技術者さんをたまに見かけますが、図面やモデルを作り始める前に設計の出来の半分は決まっているという気はします。

 設計のアウトプットの代表は図面かもしれませんが、図面から「なんでここをこの形状/寸法/材質にしたのか」という情報を読み取ることは難しいため、「仕様書(あるいは設計書)」が必要になります。

 「SEは仕様書だけ書いてプログラムを外注してるからダメなんだ」的な話をTwitterでよく目にするほど忌み嫌われている感じのある「仕様書」ですが、構成要素数が大きい機械を作るのにはたくさんの人が絡んでくるので、そのたくさんの人たちに図面がなぜそうなったかを納得させるツールとしても、きちんと伝わるように作られた「仕様書」は必要不可欠だと思います。

 いまのところ、10トン以上の物理的実体をともなう複雑な電気機械的構造物はたくさんの人に適切に動いてもらわなければまともに機能するように作ることはできません。その際に、作ろうとするものの形状/寸法/材質のような物理的な指示だけではなく、それらを指定した背景となる考え方を伝えることはとても大切です。(失敗事例DBを眺めていると「背景となる考え方」が消失した状態で起こる失敗がとても多いことがよくわかります)

 また「仕様書」を作ることで要件定義ができ、自然と要求機能/性能の分析につながります。「仕様書」に付属する構成図を作ることはモデリングにも通じます。

 そして、残念ながら高専や工学部の機械系に来てしまったら、だいたい「仕様書を読んだり書いたりしなければいけない」仕事かそれに近い仕事をすることになります。


<仕様書を作れるようになるために>

 自分は機械科卒の人間なので他の学科の話はよくわかりませんが、「仕様書」を作れるようになるためには工学的な数量感覚を持っておくこと、専門科目の知識を卒業後も参照して目の前の要件に適用できる程度には「将来の役に立たなさそうな」講義をちゃんと受けておくこと、というあたりが大切だと思います。

 あとは普通にレポートが通るレベルの日本語を書ければ大丈夫だと思います。


<余談>

 自分の場合、「仕様書」というものの大切さを実感しはじめたのは32歳を過ぎてからだったりします。それから客先の仕様書を写経することをはじめて、自分で(規模は小さいですが)仕様書を起こせるようになったのは本当に最近のことです。

 仕様書(あるいは設計書)を書くのは、要求に対する自分の考え方をすべて晒す行為になるのでなかなかしんどい仕事ではありますが、慣れれば緊張感のある面白い仕事でもあるとは思います。


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2019年06月24日

フェアリング空調の検討(その1)

フェアリング空調がどういうものか理解するため、串本町のスペースワン社のロケットを題材にフェアリング空調の検討をしてみました。

※ あてずっぽうの数字ばかりなので、そのへんは生温かくスルーしてください。どちらかといえば検討の流れみたいなものを見る感じでお願いします。


<フェアリング空調の目的>

 フェアリング空調はロケットの組立・地上待機期間において、ペイロード(衛星)が要求する温度・湿度・清浄度を維持するためにフェアリングに対して行われる空気調和操作です。

 スペースワン社のロケットのようにSmallSatを対象とする場合に、衛星側がフェアリング内の温度・湿度・清浄度について要求することがあるかどうかはマーケット的な話でよくわかりませんが、要求があると仮定し、それに対応するフェアリング空調はどのようなものになるか検討してみようと思います。


<フェアリングの有効容積>

 空調を行うには対象の有効容積がわからないといけません。フェアリングには衛星が収納されますので、フェアリング空調の対象となる、フェアリングの有効容積はフェアリングの内容積から衛星の容積を引いたものになります。

 公式リリースによると、スペースワン社のロケットは高度500[km]の太陽同期軌道(Sun-synchronous orbit)に150[kg]の衛星を投入するとのことです。

  ※ https://www.space-one.co.jp/doc/solution.pdf

 NASA Amesの資料、「Small Spacecraft Technology State of the Art」(NASA/TP-2015-216648/REV1)の「Table 2.2. Integrated small spacecraft platform specifications」(page.18)に主なSmallSatプラットフォームの寸法と重量が記載されており、50[kg]で600[mm]角(216[L])あたりが平均的な重量寸法比となっているようです。

  ※ https://www.nasa.gov/sites/default/files/atoms/files/small_spacecraft_technology_state_of_the_art_2015_tagged.pdf

 何も考えずにこれを3倍にして衛星の容積を648[L]とすると、立方体であれば865[mm]角程度になります。スペースワン社の公式リリースに書かれたフェアリング内の衛星包絡域は、直径1150[mm]で円筒部の長さは1000[mm]なので、妥当な数字と考えてよいかと思います。

 フェアリング内の容積は衛星包絡域より若干大きくなりますので、直径1400[mm]、円筒部の長さ1100[mm]、円錐部の長さ1500[mm]の円筒と円錐で近似して、2462[L]とします。

 以上より、フェアリングの有効容積は 2462 - 648 = 1814[L] となります。


<ベントホールの有効断面積>

 高度が上昇するにつれて大気の圧力は減少していきます。一方、密閉されたフェアリングは、厳密にシールされて気密を保っているわけではないですが、巨視的には密閉容器と考えてもよい状態になっています。

 このため、フェアリングにベントホールがないままロケットを打ち上げると、フェアリング分離高度までフェアリング内部はほぼ地上の大気圧(101[kPa(A)]前後)を保ったままとなり、フェアリング分離時にフェアリング内部は100[kPa(A)]から0.25[kPa(A)]まで急激に減圧されることになってしまいます。

 ※ イプシロン4号機のフェアリング分離はリフトオフ後151[sec]、123[km]となっており、メジャーな大気モデルの「U.S. Standard Atomosphere (1976)」では、気圧は0.25[kPa]程度となっています。

 ※ https://en.wikipedia.org/wiki/U.S._Standard_Atmosphere

 急減圧はペイロードである衛星に対して不要な荷重を与える(注1)ことになるため、フェアリング分離時にはフェアリング内部の気圧は外部とほぼ同程度になっている必要があります。フェアリング分離時の内外の気圧差を取り除くため、フェアリング分離までにゆるやかにフェアリング内部の気圧を減少させるための仕組みがベントホールになります。

 注1. 衛星構体は立方体形状で密閉度は低いですが、衛星構体外部が急激に減圧された場合、衛星構体内部に残った気体の圧力との差圧で衛星構体に大きな荷重が発生します。また、急減圧でMLIブランケットが剥離する等の事例もあります。

 「Epsilon User's Manual」によると、イプシロンロケットの場合はフェアリング内静圧の最大瞬間減圧率が5[kPa/s]以下となっています。同資料にはフェアリング内の圧力履歴と減圧率履歴の例が載っています。(page.61の図4.5.1-7および図4.5.1-8)

 ※ http://www.jaxa.jp/projects/rockets/epsilon/pdf/EpsilonUsersManual.pdf

 地上でフェアリング空調を実施している際には、フェアリング空調アンビリカルポートから入った空気がベントホールから大気へと出ていくことで、フェアリング内の空調が維持されています。このため、ベントホールの有効断面積がフェアリング空調を検討するための大きな要素となります。

 最大減圧率の5[kPa/s]時にベントホールがチョークしていると考えて、ベントホールの有効断面積を推定します。

 最大減圧率とフェアリング有効容積から1秒間あたりにフェアリング内の質量がどれだけ減少すればよいかわかります。適当に数字を置いて試算してみましょう。

  フェアリング有効容積:1.814[m3]
  減圧前後のフェアリング内空気温度:0[℃]
  減圧前後のフェアリング内静圧:101.3[kPa] -> 96.3[kPa]
  減圧前後のフェアリング内空気密度:1.293[kg/m3] -> 1.23[kg/m3]

 密度差と有効容積を掛け算すれば質量減少率がわかり、この例では0.114[kg/s]となります。

 密閉されたフェアリングのベントホールから空気が減圧された外部に吹き出している状態は「貯気槽からの気体の吹き出し」モデルとして近似できます。ベントホールがチョークしている前提ですので、単位断面積あたりの吹き出し質量流量は下記の式で求められます。

  単位断面積あたりの質量流量:(ρ(*)・V(*)) [kg/(s・m2)]
  貯気槽内の気体密度:ρ(0) [kg/m3]
  貯気槽内の気体音速:a(0) [m/s]
  貯気槽内の気体温度:T(0) [K]
  一般ガス定数:R [J/(K・mol)] = 8.314
  気体の比熱比:κ
  気体の分子量:M [kg/mol]

  音速の式

   a(0) = sqrt(κ・M・T/R)

  単位断面積あたりの質量流量の式(チョーク時)

   (ρ(*)・V(*)) = ρ(0)・a(0)・(2/(κ+1))^((κ+1)/(2κ-2))

 空気の分子量M = 0.02896[kg/mol]、貯気槽内の気体密度ρ(0) = 1.293[kg/m3]、比熱比κ = 1.4を上の式に代入すると、音速は 331.25[m/s] となり、単位断面積あたりの質量流量は 247.86[kg/(s・m2)] となります。

 最大減圧率時の質量減少率は 0.114[kg/s] ですので、必要な断面積は以下となります。

  0.114[kg/s] / 247.86[kg/(s・m2)] = 0.00045993[m2] = 459.93[mm2]

 断面積からベントホールの直径は 24.2[mm] となりますが、ベントホールは流れが絞られるため、5%ほど直径を大きくして、25.4[mm] = 1[inch] とします。

 ※追記(2019/06/28) ------------------------------

  検討した次の日に気がついたのですが、ベントホールは少なくともフェアリングの下側4箇所にないと流れが偏ってよろしくない話になります。なので、1箇所に25.4[mm]のベントホールとしましたが、4箇所に12.7[mm]のベントホールという形態に変更します。

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<送風量>

 「Epsilon User's Manual」によると、イプシロンロケットの場合、フェアリング空調時のフェアリング内清浄度クラスは「5000」となっています。(page.68の表4.5.3.1)

 この清浄度クラス表記は「0.5[um]の浮遊粒子が1[ft^3]に含まれる数」で定義されるFed.Std.209Dのものです。JIS B 9920による空気清浄度クラス表記では「クラス5」が相当すると考えます。

 フェアリングをクリーンルームとして捉えたとき、クリーンルームの分類としては「一方向流方式」となります。この方式では送風量をクリーンルーム内気流速度と流れに直交する床面積の積として求めるのが一般的ですが、フェアリング空調の対象となるのは主に円筒部となるので、この円筒部の軸方向の気流速度を基準に送風量を推定します。

 クリーンルームのISO規格である、ISO14644-4には参考値として、気流速度 0.2〜0.5[m/s] との記載があり、一般に0.5[m/s]程度を採用することが多いため、ここでもこの数値を採用します。フェアリングの直径は 1400[mm] なので、円筒部の断面積は1.5386[m2] です。気流速度を0.5[m/s]とすると、送風量は 0.769[m3/s] = 46.158[m3/min] となります。

 ※ このあたりは『クリーンルームの計画と設計 第3版』を参照しています。


 ※追記(2019/06/28) ------------------------------

  検討した次の日に気がついたのですが、断面積459[mm2]程度の穴から46[m3/min]もの体積流量の空気を流すのはどう考えてもおかしいので、ここでは設計指標(デザインドライバ)をフェアリング内流速ではなく、フェアリング内外許容差圧とベントホール径として考えてみたいと思います。

 フェアリング内外差圧はフライト時に最大で40[kPa(d)]程度になると考えられますが、ここでは地上待機時の許容差圧を20[kPa(d)](つまりフェアリング内気圧は121[kPa(A)])として考えます。

 密閉されたフェアリングが加圧され、ベントホールから空気が外部に吹き出している状態は、これもまた「貯気槽からの気体の吹き出し」モデルとして近似できます。ベントホールがチョークしていないので、単位断面積あたりの吹き出し質量流量は下記の式で求められます。

  単位断面積あたりの質量流量:(ρ(*)・V(*)) [kg/(s・m2)]
  貯気槽内の気体密度:ρ(0) [kg/m3]
  貯気槽内の気体音速:a(0) [m/s]
  貯気槽内の気体温度:T(0) [K]
  貯気槽内の気体圧力:P(0) [kPa(A)]
  貯気槽外の気体圧力:P(b) [kPa(A)]
  一般ガス定数:R [J/(K・mol)] = 8.314
  気体の比熱比:κ
  気体の分子量:M [kg/mol]

  音速の式

   a(0) = sqrt(κ・M・T/R)

  単位断面積あたりの質量流量の式(非チョーク時)

   (ρ(*)・V(*)) = ρ(0)・a(0)・A・B・C

   A = sqrt(2κ/(κ-1))
   B = (P(b)/P(0))^(1/κ)
   C = sqrt(1-(P(b)/P(0))^((κ-1)/κ))

 貯気槽内の気体圧力を121.3[kPa]として、空気の分子量M = 0.02896[kg/mol]、貯気槽内の気体密度ρ(0) = 1.549[kg/m3]、比熱比κ = 1.4を上の式に代入すると、音速は 331.25[m/s] となり、単位断面積あたりの質量流量は 267.37[kg/(s・m2)] となります。

ベントホールの有効断面積 459.93[mm2] と 貯気槽内の気体密度 1.549[kg/m3] から、地上待機時に貯気槽内の気体圧力が121.3[kPa]となった状態での体積流量は、79.4[L/sec] = 4.76[m3/min] となります。これを送風量とします。


 -------------------------------------------------


来月は配管・ダクト・送風機あたりの選定について触れたいと思います。
posted by kirikuzudo at 23:50| Comment(0) | TrackBack(0) | 雑記

2019年03月01日

高専と工業高校の違い #とは

「高専のものづくりは工業高校と変わらないか否か」
という不思議な問いがTwitterで流れてきていました。

 >アンチ高専の方に「高専のものづくりは工業高校と変わらない」と
 >指摘をされました。私は違うと思うのですが、自分の見解違いなら
 >悪いなぁと思うので高専のものづくりについてアンケート
 >取ってみたいなぁと思います
 >あなたにとって、高専でのものづくりの内容は?

  元ツイート
  https://twitter.com/Alpaga_datta/status/1100320799263678465


今回はこの不思議な問いをお借りして自分語りを
してみたいと思います。

  ※高専機械工学科卒の人間が書いてるので
   そのバイアスは差し引いて読んでくださいね。

まずはこの文に出てきた「ものづくり」という語について
検討してみましょう。


<ものづくり、という語>

 ものづくり、という語の初出はいつなのでしょう。
 どの時期から普及して、補助金や書籍タイトルや記事タイトルに
 使われるようになったのでしょう。

 あまり真面目にやるつもりはありませんが、
 平成11年に小渕内閣において「ものづくり懇談会」というものが
 実施されていました。
  http://www.kantei.go.jp/jp/singi/monodukuri/

 また、CiNiiで検索すると1980年頃からタイトルに
 「ものづくり」という単語を含む記事が出はじめています。
 つまり1980年代に普及しはじめ、1999年には国家元首が官邸で
 口にするレベルの語となったわけです。

 では、この、ものづくり、とは何をさしているのでしょうか。
 先ほどの「ものづくり懇談会」の議事概要には下記のような記述があります。

 『「ものづくり」は、技術開発と
   製造工程における品質のつくり込みの2点にわけられる。』

 高専を出て以降、少ないながらも製造業界隈を見てきたわけですが、
 この定義にはなるほどと思いますし、ハードウェア/ソフトウェア
 みたいな切り方をしていないのが好感を持てます。

 これを妥当な定義として「ものづくり」は

  1.技術開発

  2.(品質を作りこめる)製造工程

 の二つの要素からなると考えて話をすすめます。


<問いを見直す>

 高専でも工業高校でも上記の定義での「ものづくり」はしません。

 ロボコンに代表される技術コンテストや競技はたしかに
 部分的に「1.技術開発」に該当しますが、製作工程を
 「2.(品質を作りこめる)製造工程」と判断するのは
 難しいと考えます。

 高専でも工業高校でも「ものづくり」をしないとなれば、
 比較する対象がなく、はじめの問いは成立しません。

 このことからはじめにかかげた問いを下記のように修正する必要があります。

 修正前:
 「高専のものづくりは工業高校と変わらないか否か」

 修正後:
 「高専と工業高校で学ぶ、ものづくりのための
  カリキュラムに大きな差があるか否か」

 ではそれぞれのカリキュラムについて比較してみましょう。


<工業高校と高専のカリキュラム>

 現在の各高専のカリキュラムがどうなっているかについてですが、
 高専機構が「Webシラバス」を公開しています。
  https://syllabus.kosen-k.go.jp/Pages/PublicSchools

 自分が体験したのは15年以上前の母校の機械工学科の
 カリキュラムなので、体感的なものはそのポイントでしか
 わかっていませんが、見たところでは大きな変化は
 なさそうでした。

 対して、工業高校のカリキュラムはどうでしょうか。

 当然ながら工業高校に通ったことはないのですが、
 雰囲気を調べるためにGoogleで検索してみました。

 兵庫県立姫路工業高等学校
  http://www.hyogo-c.ed.jp/~himeji-ths/003department/curriculum.html

 長崎県立島原工業高等学校
  http://shimabara-th.ed.jp/?page_id=270

 滋賀県立瀬田工業高等学校
  http://www.setatech-h.shiga-ec.ed.jp/information/syllabus/

 機械科のものを見てみると、
 高専の機械工学科において実施されるうち、
 
  ・加工実習
  ・設計製図
  ・機械力学
  ・機械設計法
  ・生産工学

 に該当するものが含まれています。

 逆に下記のものは含まれていません。

  ・工業熱力学
  ・工業材料学(材料工学)
  ・材料力学
  ・流体力学(圧縮性流れは除く)
  ・伝熱工学
  ・流体機械(油圧工学含む)
  ・制御工学(古典制御)
  ・応用数学(ラプラス変換・フーリエ級数)

 この差が先ほど定義した「ものづくり」において
 どのように影響してくるか考えてみましょう。


<技術開発のためのカリキュラム>

 「ものづくり」における技術開発の側面で、
 高専のカリキュラムで学習したことがどのように活かすことが
 できるのでしょうか。

 技術開発というのは理論構築と設計推算と(試作と)検証試験の繰り返しになります。

 理論構築と設計推算は当該分野の修士課程・博士課程を
 経験された方々でないと対応できないことが多いため、
 高専卒の方が担当することは少ないと思います。
 (例外はたくさんありますが)

 というわけで、高専卒の技術開発における活躍の場は多くの場合、
 検証試験の現場になります。

 検証試験では試験用の試作品(供試体)を用いて、
 設計推算で決められた所定の機能・性能が実現されているかを
 検証します。

  ※シミュレーション技術の進歩で試験への要求が変わりつつありますが
   現物での試験をまったく行わずに済ますことはできません。
   (法的要求がある場合もあったりします)

 検証試験では供試体に対して所定の環境条件を入力する必要があります。
 例えば飛行機の風洞試験では、供試体となる模型のまわりの空気の流れを
 実際に飛行するレイノルズ数となるようにする必要があります。

 温度や圧力、流速、空気の温湿度などを安定させるために
 制御工学や流体工学、伝熱工学の知識が要求されます。
 また供試体を保持するための構造には材料力学や流体工学、材料学の
 知識が必要となります。
 検証試験の計画立案には実験計画法や統計学の知識が求められます。

 検証試験の現場ではこのようなことを理解している前提で
 仕事をしなければならないので、工業高校卒の方は
 学校で学んだことにプラスしてこれらの知識を身につけなければ
 いけません。

  ※検証試験の雰囲気をつかむには下記リンクの
   「環境試験技術報告:第15回試験技術ワークショップ開催報告」
   を読むとよいかと思います。

   「JAXA 環境試験技術ユニット 試験技術ワークショップ」
    http://shiken.jaxa.jp/index.html

 もちろんOnTheJobTrainingや独学で対応できる方はいるでしょう。
 問題が発生してから対処方法を学んで検討したほうが効率的という
 向きもあると思います。

 ただ、どこが問題になるか、というのを先験的に把握するためには
 ある程度、体系だった知識が必要となるのではないでしょうか。

 高専のカリキュラムが各専門科目を統合的に体系化していると
 いうのは言い過ぎかもしれませんが、統合的な体系化に至る道を
 示すための基礎は十分に提示されていると思います。


<(品質を作りこめる)製造工程のためのカリキュラム>

 「ものづくり」における製造工程の側面で、
 高専のカリキュラムで学習したことがどのように活かすことが
 できるのでしょうか。

 製造工程ではその工程にまつわる物理現象により、
 インプットとアウトプットの関係性が常に理想的な状態となることは
 ほとんどありません。品質を作りこむ、というのは、
 インプットとアウトプットの関係性を様々な工学的手法を用いて
 理想的な状態にもっていくことだと言えます。

 そのためには「工程にまつわる物理現象」を
 インプットとアウトプットの関係性に影響があるオーダーで
 定量的に抽象化・モデル化しなければなりません。

 高専では統計力学のような高度な物理現象は扱いませんが、
 工業熱力学・伝熱工学・電磁気学・材料力学・材料学・流体力学の
 ような専門科目で大まかなモデル化の例を学びます。

 時として、専門家による、より精緻なモデル化が必要な場合もありますが、
 そのバトンを渡すための知識があることが大切だと思います。

 これに関してもOnTheJobTrainingや独学で対応できる方はいるでしょう。
 ただし、それには常人には難しいレベルの努力が必要だと思います。


<まとめ>

 ここまで工業高校では学ばず高専で学ぶ要素が
 「ものづくり」に対してどう役に立つか、ということを
 非常に大雑把に見てみました。

 「ものづくり」は

  1.技術開発

  2.(品質を作りこめる)製造工程

 の二つの要素からなり、その場面では
 工業高校では学ばず高専で学ぶ要素が必要になってくる、
 というのがここまでのお話です。

  ※繰り返しますが、高専機械工学科卒の人間が書いてるので
   そのバイアスは差し引いて読んでくださいね。

 もちろんここで挙げたのは一つの例であり、
 例外はたくさんあるというか、むしろ世の中には個別事例しかなく
 例外だらけということになるかもしれませんが、
 傾向としてはこのようなものではないかと思います。

 ただし、高専でも工業高校でも学べることは基礎の一部だけですので、
 そこに対してさらに知識を積み上げる必要があります。
 そういった、学校で学んだことだけではなんともならない、
 という点では高専も工業高校も大差ないのかもしれません。
 キャリアパス、という言葉があるように、
 振り返ってみたときには高専も工業高校も通過するものです。
 工業高校を卒業して工学部で真摯に学ぶという道もあります。

 また、カリキュラム以外の部分について、
 工業高校と高専ではそれなりに差があるところもあるのですが、
 その点についてはおそらく世の中の多くの高専卒が
 語ってくれていると思いますので、ここでは触れません。

 そして、この話、飽きてきたので、このあたりにします。
posted by kirikuzudo at 08:23| Comment(0) | TrackBack(0) | 雑記

2019年02月04日

三菱電機 iQ-R と FR-A820-GF の CC-Link IE Field 運転

初挑戦でちょっとはまったのでメモしておきます。

三菱電機のシーケンサ iQ-R の構成に CC-Link IE Field ユニットを
追加して CC-Link IE Field インタフェースを内蔵している
三菱電機のインバータ FR-A820-GF を運転しようと考えました。

<構成>
iQ-Rの構成は下記です。

 ・R38B (ベース)
 ・R63P (電源)
 ・R04CPU (CPUユニット)
 ・R71GF11-T2 (CC-Link IE Field ユニット)
 ・(その他いろいろ)

また、インバータは下記の機種です。

 ・FR-A820-2.2K-1-GF
  (CC-Link IE Field 通信内蔵)

  ※F800シリーズやBシリーズに
   CC-Link IE Field 通信オプション FR-A8NCE を
   追加しても同様になります。


<配線>
iQ-R の CC-Link IE Field ユニット R71GF11-T2 と
インバータの FR-A820-2.2K-1-GF との接続は
市販のCat5e UTPなLANケーブルでも接続できます。
公式にはSTPとシールド付RJ45コネクタを使うことになってるはずです。


<インバータ側の通信設定>
それっぽいタイトルの
「CC-Link IEフィールドネットワーク通信機能内蔵タイプ 取扱説明書(導入編)」
にはあんまり参考になることは書かれていませんでした。ぐぬぬ。

というわけで、
参照する取説は「三菱電機 汎用インバータ A800 取扱説明書(詳細編)」になります。

基本的には上記マニュアルの「5.21項 CC-Link IE フィールドネットワーク」の
項目に必要なことは全て書いてあります。シーケンサ側のサンプルプログラムまで。
基本的には「5.21.5項 プログラミング例」のとおり設定すればいいです。

それ以外には「5.15.7項 CC-Link IE フィールドネットワーク機能の設定」の
記載パラメータを設定します。
Pr.434に使用するネットワークNo.を、Pr.435に使用する局番を設定します。
ネットワークNo.は特になにもなければ「1」にします。
今回はインバータが1台で、iQ-R側ユニットの局番は「0」になるので、
インバータ側の局番は「1」になります。

また、NET運転モードにならないとCC-Link IEF通信が成立しても、
iQ-Rにインバータの操作権が移らずに運転指令が通らないので、
これに関連するパラメータを下記のように変更します。
Pr.340 ->「10」
Pr.79 ->「0」(デフォルト)
これで起動時にインバータはNET運転モードになり、
iQ-R側からの運転指令を受けつけるようになります。

最後にこれらのパラメータ変更をしたらインバータの電源を一度OFFにして
10秒以上おいてから電源を再投入します。

 ※変更が必要なパラメータ

   Pr.340 -> 「10」
   Pr.79 -> 「0」(デフォルト)
   Pr.434 -> 「1」(CC-Link IE FのネットワークNo.)
   Pr.435 -> 「1」(CC-Link IE Fの局番)


<シーケンサ側の通信設定>
シーケンサ側の設定項目ですが、
「三菱電機 汎用インバータ A800 取扱説明書(詳細編)」の
「5.21項 CC-Link IE フィールドネットワーク」に書いてあるとおりにします。

GX Works3 の設定画面で
[パラメータ]-[ユニット情報]-[RJ71-GF11-T2]をダブルクリックして
設定項目一覧を開きます。



[ネットワーク構成設定]の[詳細設定]をダブルクリックして
設定画面を開いて「汎用インテリジェントデバイス局」を追加します。
RX/RY設定、RWw/RWr設定はインバータの取説どおりに入力します。



[リフレッシュ設定]の[詳細設定]をダブルクリックして
設定画面を開いてリンク側とCPU側のデバイスを設定します。
これもインバータの取説どおりに入力します。



設定パラメータはこれだけです。
これでパラメータを反映してiQ-RをResetすれば
上記の[リフレッシュ設定]の[CPU側]のデバイスが
インバータ内部とリンクします。

プログラムは
「5.21.5項 プログラミング例」のとおり書けば動きます。

(推奨しませんが)単純に動かすだけなら

 1.設定周波数(RAM)[0.01Hz]単位をW100に書き込む
 2.Y1021をONして設定周波数をRAMに反映
 3.Y1000をONして正転開始
 4.LD X1002から運転中ランプ等を点灯
 5.Y1000をOFFして正転停止

みたいにたった5行で済みます。

CC-Link IEFでつなげる利点としてはインバータのステータスが
CPU側のデバイスに勝手に降ってくるというところで、
電圧値・電流値やトルクなどの長期トレンドを取得して
予防保全に活用するなど様々な応用を気軽に実施できるのは
かなり面白いところだと思います。
(他の方法でもできなくないけど面倒)

posted by kirikuzudo at 05:40| Comment(0) | TrackBack(0) | 雑記

2019年01月20日

三菱電機FX5UとFR-E720のRS485経由運転

ひさしぶりに触ってちょっとはまったのでメモしておきます。

三菱電機のシーケンサ FX5U-32MR/ES から三菱電機のインバータ FR-E720-0.75K をRS485経由で
運転するというのが目的です。センサやスイッチ類と連携してインバータを動かすときにはよくある構成だと思います。
基本的には「MELSEC iQ-F FX5ユーザーズマニュアル(シリアル通信編)」(JY997D54801)の「4.インバータ通信機能」に記載されている通りに設定すれば問題なしです。

<配線>
今回は市販のLANケーブル(Cat5e)を切って、RJ45コネクタをFR-E720のPUコネクタに挿し、
バラ線にしたほうをFX5Uの内蔵RS485ポートに接続しました。
市販のLANケーブルはT568B配線で
 1.白オレンジ   2.オレンジ
 3.白緑      4.青
 5.白青      6.緑
 7.白茶      8.茶
となっています。
内蔵RS485ポートの接続は
 RDA:5.白青
 RDB:4.青
 SDA:3.白緑
 SDB:6.緑
 SG :1.白オレンジ
となります。
上記のマニュアルのP.79ではFR-E720のPUコネクタ側に100ohmの終端抵抗を入れる指示がありますが、
LANケーブルが1mで9600bps設定なら終端抵抗なしでも動作します。
(※動作するだけで、推奨しているわけではありません)

<インバータ側の通信パラメータ設定>
上記マニュアルのP.87に書いてあるとおりに設定すればOKです。Pr.340(通信立上りモード選択)は「10」のほうがなにかと便利です。通信速度は特に問題がなければ9600bpsにしておけばよいと思います。パラメータの変更手順はインバータのマニュアル(応用編)のほうを見ましょう。通信関係のパラメータはインバータをリセットするか再起動するかしないと反映されないみたいなので、設定後は一度、電源をOFF/ONしたほうがいいかと思います。

<シーケンサ側の通信パラメータ設定>
こちらも上記マニュアルのP.89「内蔵RS485ポート(CH1)」にあいてあるとおりにします。GXWorks3は慣れてないのでRS485設定画面を探すのにちょっと手間取りました。

<運転プログラム>
シーケンサ側からは運転周波数の変更と運転/停止ができればだいたいよいかと思います。いろんなコマンドがあるので状態モニタとかもできます。
インバータの局番が「0」で内蔵RS485ポート(CH1)のとき、速度変更は
IVDR K0 HED D10 K1 M100
です。(D10に0.01[Hz]単位で設定周波数を入れる)
運転/停止は
IVDR K0 HFA K2M20 K1 M101
です。(M21にビット立てると運転、ビット下ろすと停止)
このほかにもIVCKとかIVWRとか使って状態を確認したりパラメータをいじれます。)

このあたりをクリアできればわりと悩むこともないと思いますので、さくさくとシーケンス書きに集中できるかな、と思います。あとFX3SとFX5UはIVDRコマンドがちょっと違ったりするので、そのあたりは注意するところかもしれません。
posted by kirikuzudo at 14:13| Comment(0) | TrackBack(0) | 雑記

2017年01月15日

七輪、はじめました

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<準備>

今年の冬はやけに冷え込むので、デロンギのオイルヒーター(600Wのみ使用)に役不足感を感じて、追加の熱源をいろいろと検討したのですが、

 ・灯油ストーブ => 灯油を室内に置くのはなあ
 ・ガスファンヒーター => ホースの取り回しができなかった
 ・灯油ファンヒーター => 灯油を室内に置くのはなあ

というわけで、炭火を試してみようという結論に至りました。
気体燃料や液体燃料と比較すると、固体燃料の木炭、特におが屑を固めたオガ炭や備長炭のように燃焼面後退の遅い炭は着火しても燃焼の拡大がゆるやかなので本質的な安全度が高い、というわけです。

早速、仕事あがりにホームセンターに寄って、以下の道具を購入してきました。

 ・七輪(1700円)x1個
 ・ステンレス炭ばさみ(150円)x2本
 ・20cmアルミ鍋(700円)x1個
 ・備長炭1kg(1200円)x1個
 ・オガ炭4kg(700円)x1個
 ・着火剤18本入り(150円)x2個
 ・焼き網250mm角(200円)x1個
 ・ステンレス桶(800円)x1個
 ・耐火レンガ(300円)x2個

あと、火起こし器はホームセンターによいものが置いてなかったので、
Amazonでキャプテンスタッグのアウトドア用のものを買いました。

 ・火おこし器(1900円)


<点火>

まず七輪を空っぽにしておきます。



次に屋外で火おこしをします。
耐火レンガを2つ並べて、壁面を金属の板で保護します。
耐火レンガに着火剤を2つ、切り取って、並べます。



着火剤はこういうものです。「バスター」?
おそらくコルク材のようなものに灯油に類する液体をしみこませてあるのだと思います。
1つだと炭に着火しないので2つ使います。



着火剤の上に火おこし器を置いて、オガ炭を入れます。
わりと細かく砕いてやらないと火が付きません。
また、着火するのは床面の孔付近で、着火剤の炎が触れるところになるので、
炭の砕いた端面に着火剤の炎が触れるようにしておくとよいです。



ガストーチで着火します。
着火剤はマッチやライターでもすぐ火が付きますので、火おこし器を横において着火剤を点火してから火おこし器を炎にかぶせてもいいですが、けっこう炎の勢いが強いので、火をつけたガストーチの先っぽを火おこし器の下部側面にある空気孔からさしこんで着火したほうが安全だと思っています。
(ガストーチは燻製やるときに便利なので買い置きしてます)



火がつくとこんな感じです。
火おこし器の下部側面の空気孔から空気が吸い込まれて上昇していくので、まわりに炎が出たりすることはありませんが、周辺50cmに可燃物がないようにしておきましょう。わりと暖かいです。また、派手に黒煙が出て、臭気もけっこうきついので、ベランダだとご近所から苦情が来ると思います。場所は考えた方がいいですね。



5分ちょっとで着火剤が燃え終わり、オガ炭の下面が赤くなっていれば着火成功です。ステンレス炭ばさみ(トングみたいなやつ)で炭を火おこし器からアルミ鍋に移します。残念ながら着火していない炭があっても気にせず移しましょう。七輪のなかで他の炭から火が渡ります。

アルミ鍋から七輪に炭を移します。着火している炭を下にして、上に着火していない炭を積んでいきます。積むときに空気の流路が複雑になるように意識してやるといいかもしれません。炭を積み終わったら、異物が落ちて燃えないように焼き網250mm角をのせます。



焼き網で切り餅やソーセージを焼くこともできます。
写真は魚沼産こがねもち米100%の切り餅です。



七輪には燃焼調節機構があります。下部側面にある空気窓がそれです。基本的には写真のようにちょっとだけ空いていれば十分な熱量が得られますが、鍋で煮炊きするような用途では全開に近い状態にしてやるとよいかもしれません。



焼き網の上は均等に熱が伝わってくるわけではなく、炭の状態や場所によって熱の伝わり方もことなります。写真のように炭の上面があまり赤くなっていない状況では放射伝熱はあまり支配的ではなく、炭が燃焼して生成される燃焼ガスとそれとの対流で混合した空気での自然対流伝熱が支配的になります。

といったように工学的な考察が楽しめる調理器具ですが、そういったことを考えたくない直感派の方は網の上30cmぐらいに手をかざしてみればだいたいの加熱具合がわかると思います。

うまく被加熱物の位置取りをしてやるとこのように理想的な焼き加減のお餅ができあがります。醤油を垂らして、焼き海苔で巻いて食べました。最高です。



五徳を買い忘れたので、工場に余っていた鋼材(等辺山形鋼 t3 x 25 x 250L)を持ってきて鍋置きにしてみました。ホームセンターでステンレスの角管などを切断購入されるのでもいいかもしれません。アルミは0.3T(molten)を超えてクリープするのでやめたほうがいいと思います。



このように大きな鍋を置いてもいいですし、小さな鍋や薬缶であれば、鋼材を置き方を変えてやれば対応できます。



ガスと違って、炭は着火が手間なのと、火を消したいときには消し壺などに入れて酸素の供給を遮断してやらないといけない、ということもあり、スタート/ストップが苦手な熱源です。消し壺は買っていないので、基本的には燃やし切る方向で考えました。そのためにはどれだけの炭に着火すればいいのかわからないといけないですが、そればっかりは回数を重ねて慣れていくしかないと思います。論文とか出てるといいんですが。

基本的に、お餅を焼いたあとにもまだまだ余力があるのが普通なので、お湯を沸かしたり煮物をしたりするのがいいと思います。写真の量だと4時間ぐらいは熱を出し続けますので、お茶を沸かして、それから味噌汁を作るぐらいのことはできます。というわけで、先ほどの水を張った鍋に里芋を投入してみました。



出汁を入れて味噌を溶かせば里芋の味噌汁ができあがりです。
火力を抑え気味にして放置してやれば、沸騰させず、味噌と出汁の風味が生きたよい味噌汁ができます。



数回、使ってみた感想としては、古い木造家屋や工場などの換気しやすい環境では追加の熱源としてはなかなか便利なものだと思います。特にオガ炭や備長炭などの木炭は燃焼の進行が遅い固体燃料で、爆発的な燃え方をしないため、つけっぱなしで鍋を置いて30分程度のお買い物などしてくる分には十分に安全だと言えます。(たまに火の粉がとぶので、上に十分な面積の鍋を置かない状態で出かけるのはちょっと危ないです)

当然、高温熱源なので、灯油ストーブと同程度に火傷するリスクはあります。また、倒れて炭がこぼれたときも、炭は燃え続けますので、床材などに引火する危険があります。転倒しないような構造材を作ればいいですが、そのあたりはファンヒーターのほうが優位かと思います。

本格的に調理ができる(というか、元々七輪は調理用ですね)という点は他の熱源に比べて優位ですね。灯油でも調理用ストーブみたいなものがありますが。あとはスタンドアロンな熱源なので、屋外で移動させて使うこともできます。このあたりも灯油ストーブと同様ですね。

着火はやはり面倒です。消火も同じく。スタート/ストップがしづらいのが、忙しい現代人向きではないところでしょう。在宅勤務で小さいお子さんが居られない方などにはわりと良い追加熱源なのではないでしょうか。

あとは燃焼生成ガスに一酸化炭素が多く含まれるため、換気に気を使います。狭い部屋、特にRC造(鉄筋コンクリート)の部屋などで使用するのは避けたほうがよいでしょう。一人暮らしの方も、もし倒れたりしたら死亡確定なので、長時間、ひとりでいるときは使用を避けたほうが賢明だと言えます。もしそういった状況で使用するのであれば一酸化炭素センサーを換気扇と連動させるDIYをしたほうがよいと思います。鉄骨の工場や倉庫、15帖を超える古い木造家屋などでは換気頻度を下げられるので向いていると言えます。

まだ使いはじめたばかりなので気がついていないことも多いですが、週末の時間のある日には使っていこうと思います。

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2017年01月07日

メモ:名古屋駅ぎりぎり徒歩圏の主にお酒を飲むところ(1)

名古屋に住んでいると、Frequently Asked Question として「名古屋駅周辺のおすすめごはん屋さんはありますか?」というのがあります。ところが名古屋駅から終電逃しても歩いて帰れないこともない場所に住んでいると、「お腹減った」=>「おうちで買っておいた賞味期限の近いきしめん茹でて食べよう」みたいなことになるため、あまり名古屋駅でひとりでごはん食べるという機会がありません。そのため、名古屋駅で何かを食べるとなると、だいたい誰かとお酒を飲みながらおつまみを食べる、という展開になりがちです。

そんなわけで、あまりひとりごはんには向いていないお酒を飲むところばかりになりますが、FAQへのAnswerとしてメモしておこうと思います。

<1.風来坊 名駅センチュリー豊田ビル店>
ぐるなびページ
名古屋といったら手羽先、みたいになったのは私が18歳を過ぎてからの話だったので、名物というのは10年程度推し続ければ作れるのだなあ、という覚めた気持ちもあるにはありますが、それはそれ、やはり骨まわりの肉というのは牛でも鳥でも旨いわけです。手羽先というと「世界のやまちゃん」が有名ですが、風来坊のほうが古株ですし、店の雰囲気、特に清潔感の面からいくと、どうしても風来坊を推したくなります。味付けは「世界のやまちゃん」に比べて控えめで、「味のない手羽先」などとdisられたりもしますが、上品で、本来の手羽先唐揚げというのはこういうものだと思い出させてくれます。名古屋駅に近い風来坊はいくつかありますが、こちらはきれい目なカウンターもあり、おつきあいのこなれてきた男女などで来て軽く手羽先とおつまみを楽しむことなどもできます。手羽先が食べられる以外は単なる居酒屋なので、飲み物はビールか焼酎でいいと思います。長居は無用。1軒目として軽く手羽先とビールを楽しみ、次のお店へ向かいましょう。

<2.伍味酉 なごのみせ>
ぐるなびページ
また居酒屋です。すみません。「なごやめし」をメインに据えた居酒屋です。私は行ったことがないですが、弊社のおじいちゃん工員(元)の推奨です。ちょうど寒い冬なので、八丁味噌おでんが美味しいですよね。赤味噌おでんは有名店がありますが、あちらは敷居が高いですし、こっちだと他の赤味噌っぽいメニューもいろいろと試せるので遠方から来た人によいです。と、おじいちゃん工員(元)が名古屋弁で申しておりました。今度、みんなで行きましょうね。あ、当然のように手羽先もあるそうです。

<3.蔵人厨ねのひ>
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私は行ったことないですが、親父のセレクション。いいもんばっか食べよってからに。さて、ここは盛田酒造の日本酒ブランド「ねのひ」のアンテナショップみたいなものです。盛田酒造といえば、ソニー創業者の出身である盛田家でも有名ですね。

盛田家について

「ねのひ」自体は本醸造の大衆酒というイメージが地元ではありますが、ちゃんと大吟醸もつくってますし、このお店ではしっかりとした吟醸酒がちゃんと出てくるそうです。アンテナショップですからね。親父が言うには料理も高いけど美味しいそうです。ちょっとハードル高いので、若い子の背伸びデートとかにはすごくいいんじゃないでしょうか。ちゃんと赤味噌おでんもあるので、名古屋感もあります。そうそう。余分な話ですが、こないだ糸魚川で燃えた「加賀の井酒造」はここの子会社なんですね。びっくり。そいえば、東大教授の早野龍五さんもTwitterでこちらのお店に来た際に写真をあげられてました。

<4.まるたに>
公式ページ
先ほどの「蔵人厨ねのひ」が盛田酒造のアンテナショップだとしたら、こちらは「蓬莱泉」で有名な関谷醸造のアンテナショップです。名古屋駅ぎりぎり徒歩圏ということで交通アクセスがとてもよろしくないですが、雰囲気のある通りにある雰囲気のあるお店で、出てくるお料理も品がよく、こんなん日本酒が好きな女性とのデートでつかうしかないっしょ、という場所なのですが、私はおじさん同士でしか行ったことないです。作業服にジャケット羽織って来たおじさんもいました。ドレスコードないからね。いいよね。
SAKE BARとあるように、蓬莱泉のお酒がひととおり揃ってます。たまに生酒がステンレスタンク(カウンターに座ると奥の冷蔵庫に見える)で稲武から運ばれてきています。季節によって奥三河(稲武は奥三河)のジビエや旬の野菜を活かした日本酒にあわせたお料理が食べられます。量が少ないのとお値段はけっこうするので、完全に2軒目仕様ですね。誰かデートで使って、感想を教えてください。

<5.錦亭(嘉文グループ)>
公式ページ
「嘉文」という居酒屋がありまして、名古屋市にしてはお刺身が安くて美味しいほうなので(水産業の盛んな地域と比べたらいかんですよ)、名古屋駅や金山駅でよく利用しています。そちらも普通にオススメできますが、こちらはその嘉文グループの高級店。高専を卒業するくらいに親父に一度、連れて行ってもらいましたが、蕪と鶏を薄く炊いたものがとても美味でした。良いものを食べる、というのはこういうものなのか、と感激したのをよく覚えています。お値段ですが、一人あたり1万円は覚悟していきましょう。栄駅から近いので名古屋駅からここまでは地下鉄東山線を使うのが普通ですが、私はよく歩くのでここも名古屋駅のぎりぎり徒歩圏です。ここまでくると接待用にも使える気がしますが、年に1回の贅沢デートとかにもいいと思います。

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一応、だんだんとハードルがあがってく順に書きました。
眠くなってきたのと明日の現場が早いので、続きはまた思い立ったときに書きます。
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2016年12月31日

C91(コミックマーケット91)に参加しました(その1)

C91 2日目にサークル参加してきました。

・9時の設置のときにまちがえてNVS(Neco Video Solutions)さんのスペースに展開してしまいご迷惑をおかけしました。すみませんでした。

さて、いろいろ他にも反省事項があるので列挙します。

<反省点>
・vol.2予告ペーパーにサークル名もアカウント名も入ってないことに配り終わってから気がつく
・話しかけられた方と会話をつなげないコミュ障ですみません
・防寒装備と補給が弱くて東7シャッター対流で体温を奪われて途中退場
・サークルチェックできてなかった
・200部刷ったのに十分な部数を持ちこめなかった
・角席なのにサークルスペース番号を表示していなかった
・誤って『見本 500円』という12mm白テプラが貼られた新刊を2部ほどお渡ししてしまった

というわけで、準備不足感もありましたが、新刊を80部と50部、それぞれ頒布できてよかったです。
お越しいただいた皆さま、ありがとうございました。
反省点についてはサークル内でなぜなぜ分析をして改善していきたいと思います。

<よかった点>
・新木場経由の東雲から歩くのはわりと空いていてよかった
・Twitter広告にちょこっとだけ課金することでフォロワーさん以外の方にも新刊情報を流せた

戦利品の感想などは(その2)で。
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2016年12月28日

C91(コミックマーケット91)にサークル参加します

そういえばC85とC88にサークル参加していたのに、その話をまったくブログに書いていませんでした。
今回はちゃんと書きます。

<おしながき>


おしながきのPDFファイル(1.2MBぐらい)

今回の頒布物は新刊2本と既刊1本、あと予告ペーパー1本の合計4つになります。
(中身はさておき)頒布物が4つもあると、なんだかすごくがんばってる感が出ますね。

<新刊(その1)>


『What is Common Berthing Mechanism ?』はISSで使用されている共通結合機構CBM(Common Berthing Mechanism)について解説する本です。著者は @tosh_mac0112 さんです。A5黒赤青3色刷り28Pで500円です。

<新刊(その2)>


『解読・LE-7 vol.1』はタイトルそのままです。vol.1は配管系統図の読み解きが主なので3年前のLE-7本の前半を薄めた感じになっています。点火器系統が多少追加されてます。A4カラー32P 500円で頒布します。vol.2 は来年を予定しています。

<予告ペーパー>


『解読・LE-7 vol.2』ではコンポーネントの読み解きをしていくつもりで、これはその予告編です。A4カラー4P の vol.2 予告編ペーパーを作りました。これは無料(0円)で頒布します。みなさん、持っていってくださいね。

<既刊>

C85で頒布した『yoshinobu(kari)』を今回も頒布します。A5白黒20Pで200円です。残り40部ぐらいです。


それではみなさん、C91 2日目 東7ホール h-24a でお会いしましょう。 ノシ
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2016年10月15日

JA2016に行ってきました(その2)

JA2016に行ってきました(その2)

15日にも行ったのですが、寝坊して着いたのは14時。撤収作業の前にまわれたのは多摩川エアロシステムズ(株)さんと島津製作所さんだけだったのでほとんど感想文みたいになります。

全体的に感じたのは装備品や中間アセンブリを供給する層の薄さでした。

おおまかに分類すると、

・プライム(ボーイング、LM、三菱、川崎、日飛など)
・Tierー1サプライヤ(住友精密、三菱、川崎、日飛など)
・航空系総合商社
・防衛系総合商社
・自衛隊
・各国の大使館や産業団体、軍など
・国内各自治体のクラスター
・単独の加工業者/装置メーカー

という具合にわけられると思いますが、Tier−1サプライヤからプライムをのぞくとこんなに日本には装備品メーカーが少ないのか、と感じてしまいます。もちろん出展していないメーカーも多いとは思いますが、それにしても東京で「国際航空宇宙展」と銘打っている展示会に出てくる装備品メーカーはこれだけしかないのか、というのはちょっと驚きでした。

結局のところ、日本ではインテグレーターであるプライム企業が産業構造の上位部分をほとんど内部でこなしてしまうのと、重要な装備品のほとんどは海外の装備品メーカーからのお買い物になってしまうため、こういう状態になるのだと思います。

ただし、ボーイングの旅客機部品製造分担を見てもわかるように、国際的に分散した調達体制が当たり前という世の中なので、それが悪いという話ではありませんし、国の違いというのはそれほど目くじらをたてる部分ではないのかもしれません。

とはいうものの、航空宇宙産業をおしすすめるという話を各自治体が看板にかかげているわけですから、各自治体クラスターの展示がほとんど加工品の展示、加工技術のアピールで占められているという現状は一考の余地があると思います。

加工技術はある、しかし、なぜそれが装備品メーカーという上流にのぼることができないか。これはつまるところ、「設計と設計の検証をする能力」の有無に帰結すると思います。

自分たちのした設計が要求されている仕様(I/Fとなる仕様)に適合していることを証明する、というのはそれなりに難しくノウハウも必要となる仕事です。一般的には、これは技術試験によって証明することになりますが、試験というのはJAXAですら一部門を抱えるような分野です。

この技術試験というのが加工技術を持つメーカーが装備品メーカーとなるためのひとつの壁になっているのではないかと思います。

また、世の中には既に競合となる装備品メーカーがあるわけですから、その実績と勝負しなければなりません。インテグレーターの気持ちになれば、自分の作る機体には実績のある部品や装備品を搭載したいわけですし、そうなると相当なコストメリットや安定した供給能力、または機体にあわせた特殊仕様で開発するなどの柔軟な対応を提示できなければ勝負になりません。これも加工技術を持つメーカーが装備品メーカーとなるにあたっての大きな壁だと思います。

MRJのような民間機のインテグレーションが国内で行われていても、部品はともかく、装備品を国内で調達したというようなニュースはほとんど耳にしませんし、国産旅客機と銘打っている機体ですらそうなっているわけです。MRJがビジネスとして成立したと仮定した場合、そこから派生型が設計されていくなかで、装備品メーカーを国内でも育成しようという流れが生まれれば、相応の資源投下を行おうと考えるメーカーはあると思いますが、それがなければ航空宇宙産業でも日本の企業は他国の装備品メーカーの加工下請で低い利益率に甘んじなければならないということになるでしょう。

もうひとつの突破点としては、自分たちがインテグレーターとなる、という選択です。インターステラテクノロジズやHASTICのようなロケットベンチャー事業体は完全にインテグレーターですし、航空機でもそういったインテグレーターとなる企業があれば、それを起点として装備品メーカーが育つ可能性があると思います。

旅客機などは難しいでしょうが、ゼネラルアビエーションや無人機の分野からであれば参入するための資源を持つ企業はあると思います。特に無人機については今回のJA2016でもいくつかの企業が完成品や要素技術を展示していましたので、それらを起点として装備品メーカーを育てていくという方針はそれほど悪くないのではないかと思います。

といったあたりがJA2016の感想でした。
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2016年10月14日

JA2016に行ってきました(その1)

国際航空宇宙展2016(JA2016)に行ってきました。
(その1)というのは(その2)もあるからです。

とりあえず12日午前の半ば準備中な状態でぐるっと会場を回ってきましたので、
気になるブースの記録などを。(順不同)

<株式会社アオキ(W3-013「防衛装備庁」内ブース)>
JAXAと一緒にやったQuad Tilt Wing機が展示してありました。
http://www.aero.jaxa.jp/research/frontier/vtol/qtw/
(株)アオキはまいど1号の中心人物が会長をやっている企業さんですね。
http://www.aoki-maido.co.jp/

<アルウェットテクノロジー株式会社(W3-013「防衛装備庁」内ブース)>
航空機搭載用のSARを自前で開発してる企業さんです。
http://www.altek.jp/

<フジ・インバック株式会社(W3-013「防衛装備庁」内ブース)>
SIM-Jet社のガスタービンエンジンを販売している企業さんです。
本業は真空機器のセットメーカー/商社さんみたい。
http://www.fuji-imvac.co.jp/turbine.htm

<コーンズテクノロジ株式会社 W4-045>
英国系の商社さんですね。JSFの射出座席を展示されてました。
航空宇宙以外もややこしいものをいろいろと取り扱われているようです。
http://www.cornestech.co.jp/products/aviation/

<株式会社フジ電科 W4-032>
ハーメチックシール屋さんですね。
規格品があるようなので、後日、問い合わせしてみようと思います。
http://www.fuji-denka.co.jp/

<スカイレーベル株式会社 W4-021>
TRONAIR社のGSE等を扱ってる商社さんです。お高いんだろうな。。。
http://skylabel.co.jp/

<株式会社エスエスティー W4-014>
輸入商社さんですが、航空宇宙関連事業としてZODIAC AEROSPACEの販売代理店をしているそうです。
航空機装備品だと燃料系統や酸素系統の制御装置などをやってる感じですね。
http://www.sst-iss.jp/service/cat01/

<ポリテックジャパン株式会社 W1-004>
レーザードップラー振動計が有名な企業の日本法人さんですね。
MPV-800 多点振動計測装置はなかなか迫力あります。
RLV-5500ほしいです……
http://www.polytec.com/jp/

<Kulite Semiconductor Products,Inc W2-062>
クーライト、と呼びます。耐環境の圧力トランスデューサで有名です。
F-18やF-22、JSFの圧力センサとかもここのものだとか。
http://kulite.com/home.asp
日本だと三協インターナショナルさんが代理店をされていますね。
http://www.sankyointernational.co.jp/kaitenki/sonota_kaitenki/02.html
(ちなみにめっちゃ高いです)

<株式会社エステック(W2-024 静岡県ブース内)>
航空機用スイベルジョイントの製造をしている三島の加工屋さんです。
自前で部品の開発をしている加工屋さんは珍しいですよね。JIS Q 9100も持ってるみたい。
http://www.s-technology.co.jp/products.html

<NASAM Incorporated W3-009>
読み方わかんないですが、商社さんです。
小型のLiquid oxygen converterが面白そうだなって思いました。
http://www.nasam.com/products/
日本エヤークラフトサプライ株式会社が代理店をやってます。
http://www.nasco.co.jp/products/detail_49.html

<中日クラフト株式会社 W1-113>
金型加工を起源にした総合加工屋さんみたいですが、精密レーザー焼入れを推していました。
春日井の企業さんです。
http://www.chu-cra.co.jp/laser/

<堀口エンジニアリング株式会社 W1-039>
P&Wのエンジン搬送ドーリーや航空機用ジャッキのようなGSEの設計製造を
されている企業さんです。装備品の修理などもされている様子。
http://www.horiguchi-engi.co.jp/h01_03.htm
http://www.horiguchi-engi.co.jp/h02_02.htm

<株式会社羽生田鉄工所 W2-035>
小型オートクレーブの「ダンデライオン」で有名な加圧加熱炉のセットメーカーさんです。
「ダンデライオン」の実機が置いてありました。
http://www.hanyuda.co.jp/products/kogata-dandelion.html

<株式会社アルテックス/SynQor W2-064>
電気系商社さんで、SynQor製品の航空宇宙向けDC-DCコンバータを展示されていました。
http://www.altexcorp.co.jp/synqor/

こんなところでしょうか。
TwitterのTLを見てる様子だとまだまだ見どころはありそうなので、
10月15日(土)にももう一度見てまわって、(その2)に書きたいと思います。

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2016年09月17日

SpaceXの射点爆発事故についての雑感

SpaceXの射点爆発事故の詳細は、鳥嶋真也氏の記事に詳しいので詳細はそちらを読むのがいいと思います。

http://news.mynavi.jp/series/falcon9_anomaly/001/

というわけで雑感。

SpaceXの1/4ぐらいが MATLAB + SIMSCAPE 使えて、加工組立に関してもそれなりの経験がある人員で構成されていると想像しています。
少なくともモデルベース設計ができないと1段を着陸させて再使用しようなんて検討をあの期間で成立させられるとは考えられません。(時間かければExcelやPythonでもできるだろうけど合理的じゃないよね)

なので、そういった人たちが設計と計画しているところで起きた事故というのは、検討の範囲外だった事象が原因となった、ということだと思います。

検討の範囲外の事象があってもたまたまうまくいっている、なんてことは航空宇宙開発現場では現在もふつうに起きていて、そういったものが見つかるたびに検討範囲を広げてそこをカバーするようにしていきます。FARがしょっちゅう更新されるのもそれが理由です。
(技術に詳しくない方は雰囲気をつかむために「メーデー!」シリーズを見るのがいいでしょう)

今回のSpaceXの事故については、資料も何もないので完全に想像ですが、液体酸素充填系(特にアンビリカルポート)に漏洩箇所があり、そこに油脂分がたっぷりあって、小さな爆発が起こり、そこから油脂分がふつうに存在する箇所に液体酸素が大量に漏洩し、中規模な反応が起こり、ケロシンタンクが破損、大爆発、というシナリオがなんとなく尤度が高そうだなあ、という感じです。

液体酸素充填系にコンタミナントが存在したというシナリオや液体酸素タンクベントバルブ異常のシナリオもありますが、それは私としては次点ですね。

さて、この想像が当たらずとも遠からずだった場合、おそらく地上充填系という技術的に軽視されがちなポイントで事故が発生したわけです。

ロケット開発で性能/コスト比に一番ひびくのはエンジン、次に機体、そして装備品というわけで、基本的にロケット本体が偉いという意識があります。おそらく日本でもそういう部分はあるでしょう。次期基幹ロケット開発でエンジン開発予算が全体の半分近くをもっていったのを考えてもそれは正しいことです。

しかし、こうして事故が起きてみると、地上充填系のような性能にはたいして寄与しない必要悪ともいえる部分が「ミッションを完遂する」という機能には大切だったということに気がつかされるわけです。

次に原因がなんらかの形で特定ないしは絞りこめたとしましょう。
対策をしなければいけません。

上記シナリオだったと結論された場合、おそらく日本のスタイルだと、

・液体酸素充填系から漏洩がないように実使用品を個別要素試験
・漏洩検知非常停止機能の付加
・漏洩してもカタストロフにつながらないように漏洩が想定される箇所周辺から液体酸素と反応する物質を除去ならびに機体結合後に除去されていることを目視チェック
・etc
(わりと勢いで並べてるので漏れがあると思います、漏洩だけに)

と対策ということになるのではないでしょうか。
日本の宇宙開発関係者、特に有人(含むHTV)関係の方々はこういう対策でなければ対策ではない、と考えられるでしょう。

そして、そういったものを積み上げていった結果が現在のH-IIA/Bと吉信LSです。

しかしそれでは費用がかかりすぎると財務省に言われる。私としてはH-IIAはあの仕様では格安と言ってもいいんではないか、と思いますし、末端で仕事を請けている方々はわりとギリギリでやってるというのを見聞きしているので、高いと言われましても、と思うのですが、SpaceXのお値段を見せられると、ぐぬぬ、となってしまうわけです。これは欧州でも同じ事情なのでしょう。

逆にそういった積上げをしてしまえばSpaceXのお値段もじりじりとH-IIAに近づいていくわけですし、きっとそうでない対策をしてくることだと思います。

それは日本の宇宙開発関係者からしたら、きっと、それは対策ではない、と考えられるでしょう。

でも、それで、安く93%程度の成功率のロケットが作れて、受注を続けて事業として継続され、ついでにISS補給輸送系として採用されつづけるのなら、いくら「対策ではない」と吠えてもしかたないと思います。

しかし、日本だとそういった積上げをして100%の成功率のロケットを目指さないといけないというのは、H-IIでやらかした当時の若手で、現在の宇宙開発を指揮する立場にある方々の肌感覚なのでしょう。

次に失敗したら予算がつかなくなるかもしれない。
次に失敗したら日本の宇宙開発はここで終わるかもしれない。

そういう重圧があるのだと思います。

結局のところ、ロケットの事故とその対策の実装というのにも社会的背景があるわけで、物理的・工学的に合理的な対処というのは、そういった社会的背景の影響が少ないところでしかできないものなのだろうな、とも思います。

そういった点では、宇宙開発における北朝鮮やインド、中華人民共和国の躍進は強力な政治的指導者が社会的影響を排除しているためにより合理的な対処が可能だという点に理由を求めることもできるんじゃないかな、と思っています。

アメリカでも日本と同じようなプレッシャーはあると思いますが、ポーズとはいえフロンティアを目指してる人間には寛容で、投資家から集めた事業資金をある程度投入している(税金への依存度が比較的低い)、という2点で社会的背景の影響が軽減されている部分はあると思います。

というようなことをSpaceXの射点爆発事故やそれを語る人たちを見ていて思いました。

※そういえば日本人宇宙飛行士でまだ事故で死んだ人っていないですよね


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2016年09月10日

「液体ロケットエンジンは推力を生み出す化学プラントである」

 というようなことを固体ロケットメーカーであるIHIエアロスペースの技術者が「ロケットまつり」というロフトプラスワンで行われたトークイベントで発言していたと聞いたことがあるが、これは実に正しい認識である。液体ロケットエンジンは推力を生み出す化学プラントである。ロケットはノズルから高速で流体を噴出することで推力を得ている。ノズルがあり、流体を噴出して推力を得ていればそれはロケットであるから、ペットボトルに水と圧縮空気をつめて飛ばすペットボトルロケットも正しくロケットである。なぜロケットエンジンが液体を噴出する流体として使用していないかといえば、比推力が低すぎる、つまり噴出した液体に比して得られる加速の積分値が低すぎるためである。そこで気体を噴出する。だが、気体は液体と比べて密度が低い。運動量保存則から噴出する流体の密度が低い場合は速度をあげてやらないと十分な推力を得られない。どのように速度をあげるか。直感的に気体に高い圧力をかけてやれば勢いよく噴き出しそうな気がする。事実、噴出する大気の約1.9倍までは圧力に比して気体の噴出速度は高くなる。しかし、それを超えるといくら高い圧力をかけても気体の噴出速度はあがらない。音速に達するからだ。音速を超えるにはどうするのか。ここでロケットエンジンの象徴ともいえるノズル(ラバールノズル、De Laval Nozzle)が登場する。ノズルは音速の気体を超音速にまで加速する数少ない機械装置である。こうして気体をノズルから噴出することで現実的な比推力と推力を得ることができる。しかしながら、ノズルはタダで気体を超音速まで加速してくれるわけではない。代償として気体のエンタルピーを消費する。エンタルピーとは単位質量あたりの気体の圧力と温度に蓄えられたエネルギー量のことである。つまり、ノズルは気体が持っている圧力と温度を速度に変換する装置であるとも言える。これは言い換えればノズルから噴出する気体の速度はノズル入口における気体の温度と圧力に依存するということになる。温度と圧力を非常識なオーダーまであげれば噴出する気体の速度は3000[m/sec]以上にもなる。これが世間一般のロケットエンジンである。ではどのように気体の温度と圧力を上げるのか。気体の温度と圧力を上げる方法で最も単純なのは密閉空間で燃焼させ燃焼熱を用いて燃焼生成ガスの圧力と温度を上昇させることである。燃焼は熱を発する酸化反応で、反応生成物が気体であれば都合がよい。人類がたどりついた答えは2つあり、ひとつが固体の燃料と酸化剤を圧力容器内で進行燃焼させる方法で、もうひとつが液体の燃料と酸化剤を圧力容器内に連続注入しつつ燃焼させる方法である。(核分裂反応により生じる熱で気体を加速する話は得意な人に譲る。)さて、ペットボトルロケットからはじめて、ようやく液体ロケットエンジンにたどりついた。まとめてみよう。圧力容器内に燃料と酸化剤を連続注入しつつ燃焼させて生成した燃焼ガスの温度と圧力をノズルにより速度に変換して噴出することで現実的な推力を得る装置。これが液体ロケットエンジンのコアとなる定義である。(異論は認める。)これだけ見れば実にシンプルだ。140字もかかってない。しかし、これを実現するために必要な対応をしていった結果が名古屋市科学館のロビーに展示されている、あのLE-7エンジンなのだ。


というボツ原稿でした。
やっぱり冬コミ委託は無理だね。
文章が書けなくなってる。
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2016年08月08日

「シン・ゴジラ」雑感

良い作品だと思います。
筆不精なクズさんにこうやって文章を起こす気にさせるぐらいですから。
良い作品ってアウトプットのトリガーになるものだと思うんですよね。

さて、ネタバレが怖くて見に行きました。

いちばん強く感じたのは、「劇場版ガールズ・アンド・パンツァー」を見たときにも感じた、ディテールをきちんと描写してる風に見せることで作品全体にリアリティを与えている、というところでした。

フィクションにどうやってリアリティを与えるか、というときに、圧倒的なウソとそれ以外の圧倒的なディテールを組み合わせる、という手法は、確かに野生のプロが跋扈するネット+SNS時代に適合したものかもしれません。

「自分はxxを職業としているが、あの映画のzzの描写は本物だ」

というTweetが多ければ多いほど、圧倒的なウソ以外の部分は本物となり、それが圧倒的なウソ(ゴジラ、学園艦と戦車道)にすらリアリティを与えることになります。

そういった点では、視聴を終えた者も作品の形成にかかわっていると言えるかもしれません。(ちょっとナイーヴすぎるかな?)

さて、そんな点から評価されている「シン・ゴジラ」ですが、こういったディテールを延々と描写して評価されるといった土壌が形成されていること自体に、またそういう作品が作られていく土壌が形成されていることに、独特の社会的な成熟を感じたりもしてしまいます。

複雑な手続き的社会の構成に対して原理主義的な主張を押し付けるのではなく、その複雑さそのものを興味の対象として知識体系をつくりあげていく中間的知識階層というものが、少なくとも映画の視聴対象として(無意識的に)認識されるレベルになっているのではないか、と楽観的な期待を抱いてしまいます。

和辻哲郎の「風土」ではないですが、東アジア地域の住民には現状受容的な傾向がみられるという観点をとりいれると、とても前向きな、現状受容的な成熟と言えると思います。

もちろん、「シン・ゴジラ」や「劇場版ガルパン」を見て評価している人が多数派だとは思いませんが、そういう人が商業的実数として把握されるというのはなかなか心強い事実です。

蛇足ですが、二番目に抱いた感想は「NERVのないエヴァ、って的確な表現だった」で、三番目は「庵野秀明のやりたいことを絵にするスタッフすごい」でした。

現代においてはどんな天才もひとりでは大事業を成し遂げることはできない。
必ず多くの人の協力と少なからぬ犠牲が必要になる。

それがこの作品を作った人たちと画面で描かれた作品のなかの人々に共通することであり、この映画で僕がいちばん気に入ってるポイントでもあります。

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