2020年02月24日

ボルト締結体の検討(その2)


<1.おさらい>

前回の「ボルト締結体の検討(その1)」では下記の内容を確認しました。

1.軸力と締付けトルクの関係
2.ボルトねじ部の応力と応力基準
3.ばね定数、内外力比と外力の作用による軸力変化

まず「1.」では軸力と締付けトルクには摩擦係数とねじピッチを変数とする関係があることを確認しました。

次に「2.」でボルトねじ部に発生するミーゼス応力を引張荷重によるものとねじり荷重によるものから求め、それが強度区分により決まる降伏応力内であることを確認しました。

さらに「3.」でボルトと被締結物のばね定数を求め、ばね定数から内外力比を決定し、外力が作用した場合にボルトの軸力がどれだけ変化するかを確認しました。


<2.内外力比を修正する>

さて、前回は内外力比をそのまま使って外力からボルトの軸力変化を求めていました。実はこれは大胆な省略を行った方法です。被締結物のどこに外力がかかるかという検討を省略していました。



省略すると、ボルト/ナットの座面でボルトの軸中心の位置(図のB点)に引張側の外力がかかっている状態になります。

しかし実際のボルト締結体において、ボルト軸中心の座面位置(図のB点)に外力がかかることはまずありません。図のようなボルト締結体であれば外力の作用位置はボルト/ナットの座面より内側で荷重作用の軸方向位置(図のA点)になります。

被締結物が剛体(荷重により変形しないもの)であれば、外力がA点でもB点でも差はありませんが、被締結物は荷重により弾性変形します。図の例であれば破線のように荷重でボルトを中心に板が反る形で変形するはずです。

ここで内外力比はボルトと被締結物の外力による弾性変形(ばね定数)を考慮して定めるものだということを思い出してください。

そして前回、ばね定数(内外力比)を求めるのにこの荷重作用位置の違いによる弾性変形(=図の破線の変形)は考慮されていませんでした。実際のボルト締結体を検討する場合は、これを修正する必要があります。

そこで下記のように「外力の作用位置を考慮していない内外力比」に「修正係数(Cc/Cpt)」を掛けることで「外力の作用位置を考慮した内外力比」に修正できます。

 <Before> ΔF = ( Cb / (Cb + Cc) )・ Qa

 <after> ΔF = ( Cb / (Cb + Cc) )・(Cc/Cpt)・ Qa

 ΔF : 軸力の変化分[N]
 Qa : 外力[N]
 (Cb/(Cb+Cc)) : 内外力比
 Cb : ボルトのばね定数[kN/mm]
 Cc : 被締結物のばね定数[kN/mm]

 (Cc/Cpt) : 修正係数 ←NEW!


修正係数(Cc/Cpt)はボルト締結体の形式によって採用するモデルがかわり、いまだ定式化されていないものも多いですが、いくつかの形式に対しては実験結果と近い値を得られる式があります。それらの式については実例で確認していきたいと思います。


<3.修正係数のある場合とない場合の実例>

実際のボルト/ナットと被締結物をおいてみましょう。六角ボルトと六角ナットはメートル並目ねじ M8、強度区分はボルトが8.8でナットは8Tとします(最近は3価ホワイト処理がお気に入り)。被締結物は外径20[mm]の円形で板厚16.0[mm]の鋼板2枚の締結でいきます。ボルトの長さは40[mm]とします。作用する外力は5000[N]で鋼板の円筒外周面中央に作用するとしましょう。




まずボルトのばね定数Cbです。
ボルトの非ねじ部径としてd=6.6[mm]を使用します。ヤング率はEb,Em=200[GPa]。非ねじ部は0[mm]でねじ部は40[mm]、ねじ部の有効断面積は径を6.6[mm]として計算します。

[VDI2230によるボルトのばね定数 Cb]

 1/Cb = 1/Eb * ( Lsk/An + La1/An + Ls/Ad3 + 0.5d/Ad3 )
  + 0.4d/(Em・An)

 1/Cb = 0.005 * ( 0.0772 + 0 + 1.1698 + 0.0965 ) + 0.005 * ( 0.0772 )
 Cb = 140.78[kN/mm]

 Cb : ばね定数[kN/mm]
 Eb : ボルト材質のヤング率[GPa]
 Lsk : ボルト頭部の等価長さ[mm]
  ※Lsk = 0.4d(六角穴付ボルトの場合)
 La1 : ボルト非ねじ部の長さ[mm]
 An : ボルト非ねじ部の断面積[mm^2]
 Ls : ボルトねじ部の長さ[mm]
 Ad3 : ボルトねじ部の有効断面積[mm^2]
 d : ボルト非ねじ部の径[mm]
 Em : ナット材質のヤング率[GPa]


次に被締結物のばね定数です。

[VDI2230による被締結物のばね定数 Cc]

 Dc = (Ec/Lg)・(π/4)
  ・[( Do^2 - Dh^2 ) + Do・Lg・{ (x + 1)^2 - 1 }]

 x = [ Lg・Do / ( Lg + Do )^2 ]^0.333

 x = [ 32 x 13 / ( 32 + 13 )^2 ]^0.333 = 0.590
 Cc = (200/32) x (3.14/4) x [(169 - 73.96) + 13 x 32 x 1.5281]
  = 3585.14[kN/mm]

 Cc : ばね定数[kN/mm]
 Ec : 被締結物のヤング率[GPa]
 Lg : 被締結物の厚さ[mm]
 Do : ボルト座面径[mm]
 Dh : ボルト穴径[mm]


さらにここで修正係数を求めておきましょう。今回のようにボルト1本で円筒を締結し、円筒の外周部に外力が作用する場合の簡易式は下記になります。

[内外力比の修正係数(ボルト1本で円筒を締結する場合の簡易式)]

 (Cc/Cpt) = A・exp{ B・(Dex / Dh) }

 A = 0.642 x (32/8.6)^2 - 4.858 x (32/8.6) + 10.71
  = 1.5224

 B = -0.0778 x (32/8.6)^2 + 0.739 x (32/8.6) - 2.64
  = -0.9812

 (Cc/Cpt) = 1.5224・exp{ -0.9812 * (22/8.6) }
 (Cc/Cpt) = 0.1554

 A : 係数A = { 0.642(Lf/Dh)^2-4.858(Lf/Dh)+10.71}
 B : 係数B = {-0.0778(Lf/Dh)^2+0.739(Lf/Dh)-2.64}
 Dex : ボルト軸直角方向の外力の作用直径[mm]
 Dh : ボルト穴径[mm]
 Lf : 被締結物の板厚[mm]

 ※係数A,Bは「ボルト軸直角方向の外力の作用位置」が
  「被締結物の板厚方向の中央」である場合のものになります。
  板厚が大きい場合は係数が変わってきますので
  参考資料のP132あたりを参照してください。

繰り返しになりますが、修正係数を求める式はボルト締結体の形式、つまり採用するモデルによって異なります。上の簡易式はボルト1本で円筒を締結するようなモデルでしか使えないことを忘れないようにしてください。あと簡易式なので精度は微妙だと思います。


[修正係数のない場合の外力による軸力変化]

 ΔF = ( Cb / (Cb + Cc) )・ Qa

 ΔF = ( 140.78 / (140.787 + 3585.14) * 5000
   = 188.91[N]

 ΔF : 軸力の変化分[N]
 Qa : 外力[N]
 (Cb/(Cb+Cc)) : 内外力比
 Cb : ボルトのばね定数[kN/mm]
 Cc : 被締結物のばね定数[kN/mm]


[修正係数がある場合の外力による軸力変化]

 ΔF = ( Cb / (Cb + Cc) )・(Cc/Cpt)・ Qa

 ΔF = ( 140.78 / (140.78 + 3585.14) * (0.1554) * 5000
   = 29.36[N]

 ΔF : 軸力の変化分[N]
 Qa : 外力[N]
 (Cb/(Cb+Cc)) : 内外力比
 Cb : ボルトのばね定数[kN/mm]
 Cc : 被締結物のばね定数[kN/mm]

 (Cc/Cpt) : 修正係数 ←NEW!


修正係数を出した段階でわかっていましたが、修正係数を使った場合、軸力変化は桁が変わるほど小さくなります。

これは極端な例ですが、場合によっては修正係数の有無で内外力比が大きく変わることが確認できたのではないかと思います。


<4.ボルトにかからない荷重はどこへ消えたのか?>

極端な例でしたが、5000[N]のうち、ボルトの軸力変化に寄与したのは29[N]だけでした。では残りの4971[N]はどこへ消えたのでしょうか。これは外力のかからない初期締付け状態で被締結物の接触面に働いていた圧縮力を減らすために使われます。

先ほどの例でいけば、M8ボルトの標準軸力は14060[N]で、外力がはたらいていない状態では被締結物同士の接触面を圧縮するためにこの軸力は使われています。接触面は圧縮応力が発生しており、Φ22[mm]なので圧縮応力は37[MPa]程度になります。

ここで外力が作用し、4971[N]が圧縮力を減らすために使われると、標準軸力による初期締付け状態の圧縮力14060[N]が9089[N]まで減少します。これにともない、圧縮応力も24[MPa]程度まで減少します。

この被締結物の接触面に作用する圧縮応力はボルト/ナットのゆるみに係わっており、例えば軸直角方向の振動がある状態で圧縮応力がある値を下回ると、ゆるみがはじまる原因になったりします。

また、流体容器や流体配管のフランジ部では圧縮応力が内部の流体圧力に係数をかけた値を下回ると、内部の流体が漏洩することにつながります。

内外力比に修正係数を掛けないと、ボルトの軸力変化を大きく見積もることになり、ボルトは安全側での計算になりますが、逆に締結物接触面の圧縮力減少量は小さく見積もられることになって危険側での計算になります。

ただし、修正係数の厳密な算出は難しく、いまだ定式化されていない状態ですので、設計実務上では修正係数を使用せずに内外力比を計算し、危険側となっている圧縮力減少量に対してM.S.(安全率,Magine of Safety)を設けるのが現実的ではないかと思います。



---------

(その2)はこのあたりまでにします。
内外力比の話が終わったので、次からは管フランジ締結体の実例で話を展開していこうかと思います。


※参考文献

 『新版ねじ締結ガイドブック』
 http://jfri.jp/publicate/


 『トラブルを未然に防ぐ ねじ設計法と保全対策』
 https://www.amazon.co.jp/dp/4526072583/


posted by kirikuzudo at 02:49| Comment(0) | TrackBack(0) | 日記

2020年02月22日

圧力タンクの法的根拠などについて(その1)


「一匹の亡霊が日本を徘徊している。コンプライアンス(法令遵守)という亡霊が。」みたいな昨今ですが、みなさま、いかがお過ごしでしょうか。

検定を受けていない圧力タンクも最近は見かけなくなりましたが、ここで圧力タンクの法的根拠を確認してみようと思います。

 ※この記事で圧力タンクは空気あるいは窒素やアルゴン等の不活性ガスを貯蔵する容器として考えています。

圧力容器の法的な根拠は下記の4つになります。

・労働安全衛生法
・高圧ガス保安法
・電気事業法
・ガス事業法

このなかで電気事業法は発電所の、ガス事業法はガス供給に関連する圧力容器の話なので割愛します。

今回は労働安全衛生法の面から圧力タンクを見てみます。


<労働安全衛生法および関連法規での圧力容器の位置づけ>

まずは労働安全衛生法のほうから見ていきたいと思います。労働安全衛生法(昭和四十七年法律第五十七号)自体には圧力容器に関する具体的な記述はありませんが、同法における「厚生労働省令で定める特定機械等」が圧力容器に該当します。

圧力容器についての具体的な記述は下記の省令が該当します。

「ボイラー及び圧力容器安全規則」
 (昭和四十七年労働省令第三十三号)
 (令和元年五月七日改正)


<圧力容器の定義>

同法の第二条に書かれているとおり、圧力容器は「労働安全衛生法施行令」(昭和四十七年政令第三百十八号)の第一条で下記のように定義されています。

--------------
 ・第一種圧力容器(小型圧力容器は除く)
   ・蒸気や熱媒で固体または液体を加熱する容器で、容器内の圧力が大気圧を超えるもの
   ・容器内における化学反応、原子核反応で蒸気が発生する容器で容器内の圧力が大気圧を超えるもの
   ・容器内の液体成分を分離するために液体を加熱して蒸気を発生させる容器で容器内の圧力が大気圧を超えるもの
   ・大気圧における沸点を超える温度の液体をその内部に保有する容器

 ・小型圧力容器
   ・第一種圧力容器で下記を満たすもの
     ・0.1[MPaG]以下で使用される容器で、内容積が200[L]以下のもの
     ・0.1[MPaG]以下で使用される容器で、胴径500[mm]以下かつ全長1000[mm]以下のもの
     ・容器の最高使用圧力A[MPa]と内容積B[m^3]の積 A x B が 0.02以下のもの

 ・第二種圧力容器
   ・0.2[MPaG]以上の気体を内部に保有する容器で第一種圧力容器以外のもの
     ・内容積が40[L]以上の容器
     ・胴径200[mm]以下かつ全長1000[mm]以上の容器
--------------

第一種圧力容器はプラントにおける反応塔や蒸留塔、液化ガスタンクなどが該当します。そのため、圧力タンクであれば第二種圧力容器だと考えればよいかと思います。

以降は第二種圧力容器に話を絞ります。

  ※第二種圧力容器の定義では
   内容積が40[L]以上となっているので、
   ホームセンター等で入手できる安価なコンプレッサーの
   タンク(だいたい30[L]ぐらい)は除外されます。
   でも自主定期点検はしたほうがいいと思います。


<圧力容器安全規則における第二種圧力容器への要求>

定義を確認したので、「ボイラー及び圧力容器安全規則」に戻りましょう。第二種圧力容器に関する記述は第八十四条以降になり、以下の項目があります。

 ・検定
 ・安全弁の調整
 ・圧力計の防護
 ・定期自主検査

「検定」は検定の要求になっています。この労働安全衛生法 第四十四条第二項の検定を指します。有名なところでは下記の協会の個別検定が該当します。

 一般社団法人日本ボイラ協会 − 個別検定
 https://www.bcsa.or.jp/kensa/cat5/

 ※圧力容器は「個別検定を受けるべき機械等」として
  労働安全衛生法施行令第十四条四項に指示されています。

「安全弁の調整」は最高使用圧力以下で安全弁が作動するよう調整することを要求しています。これは安全弁の取付要求でもあります。安全弁は下記のようなものになります。

 株式会社ヨシタケ 安全弁 AL-150
 http://www.yoshitake.co.jp/prod/category/product.php?id=1030001


「圧力計の防護」は圧力計が凍結あるいは80[℃]以上にならない措置を要求しています。これも圧力計の取付要求で、下記のようなブルドン管の圧力計が想定されています。

 長野計器株式会社 圧力計 AC20、AC10、AC15
 http://products.naganokeiki.co.jp/product/2/3/4/1722.html

 ブルドン管の指示針は凍結したり高温になると正しい値を示さなくなることがあるので防護措置はこれを避けるためのものです。


「定期自主検査」は1年以内ごとに1回の自主検査を要求しています。自主検査では

 ・本体の損傷の有無
 ・締付けボルトの摩耗の有無
 ・管および弁の損傷の有無

を行います。ここで異常が見つかった場合は補修等の措置が必要になります。


<設計と製造>

第二種圧力容器の設計はJIS B 8265:2017およびJIS B 8267:2015に基づいて行います。製造には資格要求がありませんが、一般的には溶接作業があります。
設計計算書に記載した溶接方法については日本溶接協会の溶接技能者資格を有する作業者が行うべきではあります。また、継手の信頼性が要求される大型/高圧の第二種圧力容器の溶接は、普通ボイラー溶接士の資格所有者が行うのがよいかと思います。

 日本溶接協会 − 溶接技能者資格について
 http://www.jwes.or.jp/mt/shi_ki/wo/archives/04/


<個別検定への対応>

個別検定については下記のページが詳しいです。

 一般社団法人日本ボイラ協会 − 個別検定申請の流れ
 https://www.jbanet.or.jp/examination/individual/exams/

図面と設計計算書に対して事前設計審査があり、それでOKが出ると日程を決めて水圧検査・外観検査・材料検査の協会検定員立会検査があります。

水圧検査は最高使用圧力の1.5倍の水圧で行います。材料検査は材料証明書(ミルシート)で確認することになります。

ここで特に問題が見られなければ検定は終了となり、数週間後に検定機関の「合格済」印と検定番号が押された検定証が届きます。


------
次回は高圧ガス保安法の面から圧力タンクを見てみようと思います。


posted by kirikuzudo at 15:33| Comment(0) | TrackBack(0) | 日記

2020年02月11日

ボルト締結体の検討(その1)


ばね座金ってあんまし意味ないよね、の話から転じて、少しボルト締結体の検討をしてみたいと思います。といっても、検討の流れを追うだけです。式の導出とか解説とかは参考資料を読んでもらうとして、というやつです。また、細かい数字は丸めたり大胆に省略したりしてるので、真面目な検討するときは参考資料とかVDI2230とかを使ってきっかりやってください。

ここでは下の図のようなボルトとナットによる締結体を前提にしています。ボルトとナットはメートル並目ねじ M8 とし、t6.0の圧延鋼板2枚の締結で検討していきたいと思います。ボルトはSCM435製の強度区分10.9の六角穴付ボルトとし、ナットはS45C(H)の強度区分8T品(8.8相当)とします






<1.軸力と締付けトルクの関係>

トルクレンチでボルトの締付けを管理する話はよく聞くと思います。ですが、締付けトルクとボルトにかかる軸力はそのまま対応しているわけではありません。締付けトルクとボルトにかかる軸力の関係は下記の式で表現されます。

 Ts = F・(μs・d・secα' + P/6.28 )

 Ts : 締付けトルク[N・m]
 F : 軸力[N]
 μs : ねじ面の摩擦係数
 d : ボルトの有効径[m]
 α' : フランク角
  ※並目メートルねじではフランク角が30[deg]
  ※sec(30[deg]) = 1.1547
 P : ねじピッチ[m]

この式から同じ軸力でも、
 ・ピッチが大きい
 ・有効径が大きい
 ・摩擦係数が大きい
ほうが締付けトルクは大きくなります。括弧内をまとめて「トルク係数」と呼ぶこともあります。


さて、今回の検討例にあてはめてみましょう。

メートル並目ねじM8で、標準軸力はボルト・ナットが8Tのため1.8T系列となるので、F=14060[N]となります。
 ※標準軸力は下記の技術資料を参照しました。

 東日製作所 ダウンロード 技術資料
 https://www.tohnichi.co.jp/download_services

ねじ面の摩擦係数はモリブデングリスを使って0.1とします。
 ※実際にはモリブデングリスでは摩擦家数は0.09〜0.12とばらつきます

ボルトの有効径は7.19[mm]とし、ねじピッチはM8並目なので1.25[mm]です。

以上より、締付けトルクTs=14.5[N・m]となります。
(無潤滑だと摩擦係数が0.2程度になり、締付けトルクは26.1[N・m]程度になります)


  <宣伝>

   トルク係数を安定化するすごい製品だ!

   東日製作所 軸力安定化剤 Fcon
   https://www.tohnichi.co.jp/products/detail/81

  </宣伝>



<2.ねじ部の応力>

ねじ部にかかる応力は
・ボルトが長手方向に引っ張られる引張応力
・ねじ面および座面の摩擦に起因する、ボルトのねじりから発生するせん断応力
の2つにわけられます。
(今回はボルトに曲げモーメントがかかっていないと仮定して話をします。)

引張応力は下記の式で表されます。

 σf = F / As

 σf : 引張応力[MPa]
 F : 軸力[N]
 As : ボルトの引張有効断面積[mm^2]
  ※今回はAsは谷底径の断面積の90%で近似します

また、ねじりによるせん断応力は欠きの式で表されます。

 τt = 16・Ts / (6.28 x ds^3)

 τt : せん断応力[MPa]
 Ts : 締付けトルク[N・mm]
 ds : ボルトの谷底径[mm]
  ※単位に注意です。
  ※締付けトルクは[1]の式で軸力に換算できます。


さて、今回の検討例にあてはめてみましょう。

M8並目のボルト谷径を6.6[mm]、前項から締付けトルクTs=14.5[N・m]、軸力F=14060[N]となっていますので、上の式を使って、引張応力σf=411[MPa]、せん断応力τt=129[MPa]となります。



<3.ねじ部の応力基準>

ミーゼス応力が材料の降伏応力に達したときに降伏すると仮定します。材料の降伏基準は条件によって異なりますが、通常のボルトはこれで攻めても問題ないと思います。ボルトのミーゼス応力は引張応力とせん断応力から次の式で求めることができます。

 σeq = (σf ^2 + 3 x τt ^2 ) ^ 0.5

 σeq : ミーゼス応力[MPa]
 σf : 引張応力[MPa]
 τt : せん断応力[MPa]

せん断応力はねじ谷底の径で最大になるため、上の式のσeq はねじ谷底表面が降伏しはじめるミーゼス応力を表しています。(全断面降伏を基準にするともうちょっと緩くなりますが計算がめっちゃめんどいらしいのでやめました)

一般的なSCM435製の六角穴付ボルトは強度区部が10.9で、材料の降伏応力σy = 900[MPa]となります。

一般のトルク法によるボルト締付けでは降伏点の60[%]程度の応力で締め付けることが多く、下記を満たせばボルトを安全な領域で使用できることになります。

 σeq < σy * 0.6

これにより、強度区分10.9の六角穴付ボルトであればσeq < 540[MPa] であれば安全と言えます。


さて、今回の検討例にあてはめてみましょう。

前項で引張応力σf=411[MPa]、せん断応力τt=129[MPa]となっていますので、ここからミーゼス応力σeq = 467[MPa] となります。これは540[MPa]を下回っていますので安全と言えますが、静的な締付けだけの状態ですし、標準軸力はこの状態を元にしていますので、ここまでは検算みたいなものだといえます。



<4.ばね定数>

さて、ここまではボルトとナットで金具を締付けた状態の話をしてきました。ここからこの金具を引きはがす方向に垂直に引張荷重(外力)がかかった話になります。外から金具にかかる荷重なので「外力」といいます。これに対して、ボルトを締結している力を「内力」といいます。

外からかかった引張荷重のどれだけが軸力を増やすことにつながるかを計算するためにはボルトと締結体の変位をからめた不静定問題を解かなければいけません。

 ※不静定問題、めんどいやつです。材料力学の最初の山ですね。
  高専の機械工学科ではこれを落として留年した人は数知れません。

が、先人がそういう面倒がないような方法を確立してくれています。それが「ばね定数」を使って「内外力比」を求める方法です。

以下の式でボルトと被締結物の「ばね定数」を求めます。

[VDI2230によるボルトのばね定数 Cb]

 1/Cb = 1/Eb * ( Lsk/An + La1/An + Ls/Ad3 + 0.5d/Ad3 )
  + 0.4d/(Em・An)

 Cb : ばね定数[kN/mm]
 Eb : ボルト材質のヤング率[GPa]
 Lsk : ボルト頭部の等価長さ[mm]
  ※Lsk = 0.4d(六角穴付ボルトの場合)
 La1 : ボルト非ねじ部の長さ[mm]
 An : ボルト非ねじ部の断面積[mm^2]
 Ls : ボルトねじ部の長さ[mm]
 Ad3 : ボルトねじ部の有効断面積[mm^2]
 d : ボルト非ねじ部の径[mm]
 Em : ナット材質のヤング率[GPa]

※参考資料には「ボルト細径部」の項がありますが、ここでは非ねじ部のある一般的な六角穴付ボルトを対象とするために細径部の長さ=0[mm]として項自体を省いています。


[VDI2230による被締結物のばね定数 Cc]

 Dc = (Ec/Lg)・(π/4)
  ・[( Do^2 - Dh^2 ) + Do・Lg・{ (x + 1)^2 - 1 }]

 x = [ Lg・Do / ( Lg + Do )^2 ]^0.333

 Cc : ばね定数[kN/mm]
 Ec : 被締結物のヤング率[GPa]
 Lg : 被締結物の厚さ[mm]
 Do : ボルト座面径[mm]
 Dh : ボルト穴径[mm]


さて、今回の検討例にあてはめてみましょう。
ボルトとナットはメートル並目ねじ M8 とし、t6.0の圧延鋼板2枚の締結です。
ボルト寸法はM8 x 25Lとして、非ねじ部のない全ねじを使用します。

まずボルトのばね定数Cbです。
ボルトの非ねじ部径としてd=6.6[mm]を使用します。ヤング率はEb,Em=200[GPa]。非ねじ部は0[mm]でねじ部は25[mm]、ねじ部の有効断面積は径を6.6[mm]として計算します。

 1/Cb = 0.005 * ( 0.0772 + 0.7311 + 0.0965 ) + 0.005 * ( 0.0772 )
 Cb = 203.67[kN/mm]

次に被締結物のばね定数です。

 x = [ 12 x 13 / ( 12 + 13 )^2 ]^0.333 = 0.63
 Cc = (200/12) x (3.14/4) x [(169 - 73.96) + 13 x 12 x 1.6569]
  = 4625.17[kN/mm]

以上より、
・ボルトのばね定数 Cb = 203.67[kN/mm]
・被締結物のばね定数 Cc = 4625.17[kN/mm]
となります。



<5.外力の作用>

ばね定数を用いて内外力比から外力が作用した場合の軸力変化を計算できます。ばね定数を使用して外力から軸力変化を求める式は下記になります。

 ΔF = ( Cb / (Cb + Cc) )・ Qa

 ΔF : 軸力の変化分[N]
 Qa : 外力[N]
 (Cb/(Cb+Cc)) : 内外力比
 Cb : ボルトのばね定数[kN/mm]
 Cc : 被締結物のばね定数[kN/mm]

さて、今回の検討例にあてはめてみましょう。
作用する外力は単純にボルト軸の方向への引張で1[kN]とします。

前項から
・ボルトのばね定数 Cb = 203.67[kN/mm]
・被締結物のばね定数 Cc = 4625.17[kN/mm]
なので、

 ΔF = (203.67 / (203.67 + 4625.17) ) * 10000 = 42.18[N]

となり、外力の4.2[%]程度しか軸力は変化しないことがわかります。

このように大きな外力がかかっても被締結物のばね定数が大きければボルトの軸力変化はわずかになります。



<6.ねじ部の応力の再検討>

第2項でねじ部にかかる応力を検討しました。ここで前項の外力による軸力変化を第2項の応力検討に反映します。

外力は単純な引張によるものなので、必要なのは引張応力の再検討だけです。

 σf = F / As

 σf : 引張応力[MPa]
 F : 軸力[N]
 As : ボルトの引張有効断面積[mm^2]
  ※今回はAsは谷底径の断面積の90%で近似します

M8並目のボルト谷径を6.6[mm]、締付けによる標準軸力F=14060[N]、さらに軸力変化ΔF=42[N]となっていますので、上の式を使って、引張応力σf=412[MPa]と更新されます。

1[MPa]しか変わっていないのでこれは完全にセーフですね。



<7.どこまで大きな外力に耐えられるのか>

被締結物を2枚の圧延鋼板t6.0としましたが、これが外力により変形しないと仮定しましょう。(t6.0に10[kN]を入れたらたぶんけっこうな弾性変形を起こします。)

第3項のの検討でミーゼス応力σeq=540[MPa]までは安全という話になっていました。せん断応力τt=129[MPa]は変わらないとして、ミーゼス応力σeq=540[MPa]と置くと、その場合の引張応力は、

 σf = ( σeq^2 - 3 x τt^2 )^0.5 = 492[MPa]

となります。締付けによる軸力での応力は411[MPa]でしたので、差分は81[MPa]あります。有効径の断面積をこれに積算することで、ボルトの軸力変化の許容値がわかります。

 Δf(safe) = 81[MPa] x 34.2[mm^2] = 2770[N]

 Qa = ΔF(safe) / ( Cb / (Cb + Cc) )
  = 2770[N] / (203.67 / (203.67 + 4625.17) ) = 65674[N](6.7[tonf])

被締結物の強度を無視すると、ボルト自体は6.7トンもの外力がかかっても耐えられる計算になります。

まあ、これは単純に引張しか作用しない実験室的な状況で、被締結物の強度を無視した結果ですので、結果として緩すぎるわけですが、M8並目のボルト・ナットは被締結物との関係次第ではずいぶんと大きな荷重を伝達できることがわかります。



---------

とりあえず(その1)はこのあたりまでにします。
(その2)以降では強度区分が低い場合や被締結物の板厚、あと疲労の話などをできればなあ、とか思います。
(エターしないようがんばります。)


※参考文献

 『トラブルを未然に防ぐ ねじ設計法と保全対策』
 https://www.amazon.co.jp/dp/4526072583/


posted by kirikuzudo at 21:59| Comment(0) | TrackBack(0) | 日記

アルミ角パイプ同士のねじ締結について

先日、

 「ばね座金はあんまし意味ないよね、という話の
  リンクは定期的に貼っていきたい。」

というTweetをしたら、けっこう遠方までRTされたので、
意外とボルト締結体のベーシックな力学的構成は知られてないんだな、
という気持ちになりました。

ちなみに「ばね座金はあんまし意味ないよね」という話のリンクは下記です。

 「鍋屋バイテック ねじのおはなし 第4話」
  https://www.nbk1560.com/products/specialscrew/nedzicom/topics/04_washer/

まあ、これは鋼ボルトで鋼材を締結する前提での話なので、
鋼ボルトでアルミや樹脂を締結するような場合はまた違う話になるんですよね。

で、ロボコンされていた方から

「角パイプで適正な軸力出せない場合は
 どうするのが答えなんでしょうね?」

というご質問をいただきました。
おそらくアルミの角パイプだろうなあ、ということで、
ちょっとそれについて書いてみます。

アルミ角パイプ同士の締結はこんなものを想定しています。

<図1>


25角とかの細いアルミ角パイプなどでは角パイプのセンタに穴をあけてM6 x 60Lとかのボルトを締めるので、M6の規定軸力 4330[N]を出そうとすると、局部曲げで塑性変形してしまいますし、材料が抜けることもあります。

規定軸力表はこちらからどうぞ。ここの技術資料は教科書級です。

 東日製作所 ダウンロード 技術資料
 https://www.tohnichi.co.jp/download_services


そのため規定軸力を出さずに締めるので、緩み止めとして「ばね座金」を使う、ということになります。

でも、そもそもボルト締結体ってこういうのが基本なんですよね。

<図2>


しかも通常はヤング率が近い材料同士を前提にしているので、図1なんかは本来のボルト締結体の使い方ではないわけです。炭素鋼のヤング率は200[GPa]ぐらい、アルミ合金のヤング率は70[GPa]ぐらいですから。

で、こういう「基本のボルト締結体」を図1のようなところで使えるように変形するとこうなります。(ボルトと金具は炭素鋼を考えています)

<図3>


まあ、ごつくてダサいですよね。重いし。
で、アルミ角パイプもエッジ付近はそこそこの剛性があるので、そこを荷重伝達に使えばいいんじゃないか、ということを考えて、小さくします。

<図4>


角パイプに横穴あけないといけないのが面倒ですが、位置決めに使えると考えればよいトレードだと思います。横穴の径が小さいと角パイプが局所的に塑性変形して軸力が抜けてしまうのがちょっと怖いところですが。

で、アルミ角パイプもエッジ付近はそこそこ剛性あるよな、ということで。

図4の金具は角パイプのウェブにフランジ締結体の軸力を伝達したいという話なので、ウェブの近くにボルト・ナットを配し座面の変形を防ぐ厚ワッシャを使い、ウェブの座屈耐力以下の軸力を与えるようにします。

<図5>


で、ウェブで使っていない部分があるのでそこにも頑張ってもらうために厚ワッシャを長い金具に替えます。すこし重量が増えますが、作業量とトレードオフですね。

<図6>


ただ、図5と図6はM3 x 60Lとかの高アスペクトなボルトを使うか寸切りボルトを切断して使うことになりますし、4つも穴をあけなきゃいけないし、高アスペクトなボルトの曲げを考慮してないので、自分としてはやっぱり図4を推したいですね。

図4は金具つくるのがめんどいかもですが、市販の位置決めピンを使えばボール盤作業だけで済みますし、金具材質を炭素鋼じゃなくアルミ合金にして、普及している卓上CNCフライスを使って作ってもいいと思います。

で、ここまでいろいろと書いてきたわけですけど、角パイプ同士の締結、であれこれ考えるくらいなら自分はこういうの使いますね。25角アルミ角パイプと比べるとちょい重いんだけども。

 「ユキ技研 レコフレーム」
  http://yukilabo.co.jp/leco_shop/

まあアルファフレームとかミスミとかSUS社とかこういう系列のものはいろいろあるので、アルミ角パイプの代替として検討してみてはいかがでしょう。作業効率は段違いです。あと、25角のアングルは板厚t2.0〜t4.0までありますし、これでトラスを組むと場合によっては同じ重量でも全体の剛性があがるので、採用を検討してみるのもいいかもですね。

 「白銅 アルミニウム合金」
  https://www.hakudo.co.jp/product/aluminum/index.html


まあ、自分はロボコンをやったことがないですし、アルミ角パイプを使うのは経験に基づく合理性と必然性があるのだとは思うので、気になった方はきちんと数値を置いてご試算ください。設計においては、数値に基づく用途にあわせた具体性が大事だと思います。


最後に参考文献のご紹介でも。

 『トラブルを未然に防ぐ ねじ設計法と保全対策』
 https://www.amazon.co.jp/dp/4526072583/

 ボルト締結体に必要なことはだいたいこの本に書いてあるのに2500円しかしないという神の紙書籍です。高専や工学部の機械設計法の副読本にしてほしいですね。


 『飛行機の構造設計(その理論とメカニズム)(第1版)』
  http://jaea.theshop.jp/items/1248629

 軽量で信頼性が必要な構造のとっかかりとしてよいし、なんで航空機の構造はそうなっているのか、という「why done it?」が満載でめっちゃ面白いです。ちょっと高いのと入手性があまりよくないのが欠点ですが、航空機の構造以外にも一般に応用できる部分がたくさんあるので、こちらも機械設計法や信頼性工学の副読本にしてほしいです。
posted by kirikuzudo at 14:21| Comment(0) | TrackBack(0) | 日記

2019年10月23日

「広見憩いの杜(旧露橋下水処理場)」の散歩



ちょっと前まで工事していた露橋下水処理場が散歩できるような状態になっているようなので、休憩がてら小一時間ほどカメラを持ってうろついてきました。




現在は「露橋水処理センター」として稼働しており、処理槽は完全に地下化されているようです。建物もできたばかりという感じで、きれいなものです。能力もなかなかのものですね。

名古屋市上下水道局 施設案内 露橋水処理センター
https://www.water.city.nagoya.jp/category/shisetsu_mizusyori/2418.html





こちらは排水ポンプ棟らしいです。排水能力は612[m3/min]だそうです。
前はいちめん芝生です。

名古屋市上下水道局 施設案内 雨水ポンプ書一覧
https://www.water.city.nagoya.jp/category/gesuidousisetsu/2386.html





中川運河に沿った散歩道に降りるスロープ。いい感じのカーブですね。




散歩道はこんな感じで、敷地の端まで続いています。このまま中川運河沿いにささしまライブまで歩けると素敵なのですが。




散歩道の反対側は松重閘門のほうに向かってカーブしています。
ゆるやかなスロープがよいですね。




スロープをのぼっていくと松重閘門の水路を跨ぐ橋が見えます。




橋の下には配管も走っています。300Aと150Aぐらいでしょうか。45度ベンド2つで丁寧に曲げてありますね。




橋はプレートガーダー式のようです。人しか通らないのでわりと薄めの鋼材ですね。




松重閘門の水路沿いに散歩道を歩いていると施工時のはがし忘れを見つけました。親近感が湧きますね。




散歩道の終わり。駐車場側と反対の、徒歩専用の入り口があります。もしかすると自転車も通行できるのかな?




橋をわたってみます。




橋の接続部。塗装の色が違ってるんですね。




橋の上から東側を。方角からすると大須があるあたりで市街地なはずなのですが、目立って高い建物というのはあんまりないんですよね、名古屋の場合。




橋の支承部です。ほとんど橋の自重のためという感じで、小さいです。橋桁のフランジ部も幅が100[mm]ぐらいしかないんじゃないでしょうか。




スロープ部の支持材も華奢なものです。




橋を渡った南側の入口です。




橋の上からカーブのスロープを。わりと素敵な場所だと思うのですが、ほとんど人はいませんでした。名鉄の駅から歩いて10分ぐらいなんですけどね。




「百合との遭遇 宮澤伊織インタビュー」を思い出して撮った一枚です。宮澤先生曰く「エモい風景は、それだけで百合なんですよ。」だそうです。(リンク先参照)

百合が俺を人間にしてくれた――宮澤伊織インタビュー
https://www.hayakawabooks.com/n/n0b70a085dfe0



というわけで、小一時間の散歩でしたが、思った以上にくつろぎスポットでした。駐車場は4台分しかないですが、いつも空いているみたいですし、名鉄の駅(「山王」、名古屋駅と金山駅の間)から400[m]ぐらいなので、ベンチに腰掛けて芝生と運河を眺めてのんびりしたい方は是非。

※秋冬がおすすめです。春夏はぜったい虫が多い。

posted by kirikuzudo at 01:02| Comment(0) | TrackBack(0) | 日記

2019年07月21日

フェアリング空調の検討(その3)

フェアリング空調の検討(その3)

フェアリング空調がどういうものか理解するため、串本町のスペースワン社のロケットを題材にフェアリング空調の検討をしてみました。

前回の予告と少しずれますが、今回はフェアリング空調で検討しなければいけない条件を列挙してみたいと思います。


<フェアリング空調の条件>

 フェアリング空調の条件ですが、温度を20℃±5℃、相対湿度を65%±5%として仮定します。

<吸込大気の条件>
 空調は循環方式ではなく、大気を吸い込んでフェアリングのベントポートから吐き出す一方向型となるので、大気の条件を確認する必要があります。

 ここでは以下の4つの大気条件を仮定し、これらのいずれの条件の大気を吸い込んでもフェアリング空調の条件を満たすように空調系統を設計します。

 条件1:乾燥した冬の日、温度−2℃、相対湿度47%
 条件2:雨の降る冬の日、温度−2℃、相対湿度66%
 条件3:真夏日、温度34℃、相対湿度81%
 条件4:梅雨、温度31℃、相対湿度92%

 各条件は気象庁の「過去の気象データ・ダウンロード」より「潮岬」地点での2009年〜2018年のデータをダウンロードし、そこから平均的な条件として抜き出したものになります。条件1と2は最低気温(2011年1月)、月平均相対湿度の最低値(2011年1月)と最高値(2018年12月)から採りました。条件3は最高気温(2013年8月)とその月の月平均相対湿度から、条件4は月平均相対湿度の最高値(2009年7月)とその月の最高気温からそれぞれ採りました。

 ※ http://www.data.jma.go.jp/gmd/risk/obsdl/index.php


<空調系統に必要なもの>

 上記の吸込大気と空調空気の条件を満たすために、空調系統に必要なものを列挙してみましょう。空調空気の条件は簡単のために、公差範囲を考えず、温度20℃湿度65%を設定します。

 まず、吸込大気中の水分を除去するため、除湿器が必要になります。これには円筒多管式の熱交換機を使用して露点以下の冷却水と熱交換することで結露を促して除湿する方式を採用します。

 フィン&プレート式や多板積層式のほうが体積効率がよいですが、円筒多管式は体積が増えるものの、空気流路に洗浄剤を流すことで配管等をそのままの状態で洗浄が可能であり、圧力損失も低いため、これを選定しました。

 冷却水はタンクからポンプにより供給し、空冷チラーで5℃まで冷却した後に、熱交換機を経由してタンクに戻る循環形式とします。冷却水にはエチレングリコールを添加することで腐敗を抑制します。

 除湿のための冷却水温度は吸込空気の絶対湿度と温度を湿度センサで検出し、これをコントローラーで計算することで決定します。冷却水温度の制御は、空冷チラーをバイパスするラインを設け、空冷チラーを経由した冷却水とバイパスした冷却水の混合比を比例調節弁で調整することで実現します。これにより、5〜10℃の範囲で冷却水温度に対応可能となります。

 除湿後、温度が低下した空気を加熱する必要があります。また、冬には温度の低い外気を20℃まで加熱する必要があります。空気の加熱はインラインのフランジ型シースヒータを使用します。

 空気加熱用のフランジヒータは標準品が多数存在しますので、必要な加熱量に近いものを選定し、後述するフィルタ後段アンビリカルマスト上部の温度センサを入力(PV)として、ヒータ出力のFB制御を行います。制御方式は温度調節器とサイリスタ調整器でのPID方式とします。

 冬場に温度が低い場合は加湿が必要になります。加湿には濾過と純水器を使用して不純物を低減した簡易純水を加圧ポンプと噴霧ノズルで噴霧加湿する加湿器を使用します。加湿量は後述のフィルタ後段アンビリカルマスト上部の湿度センサを入力(PV)とし、ポンプ吐出流量を操作量としたFB制御で決定します。ポンプ吐出流量は流量計とポンプ回転数制御をFB制御して操作します。

 温度と湿度が調整された後、清浄度を満たすためにフィルタリングを行う必要があります。クリーンルームの空調に使用されるHEPAフィルタを複数段設置し、要求される清浄度の空気がフィルタ後段で得られるようにします。空気の清浄度はアンビリカルマスト上部のサンプリング式パーティクルカウンタにより定期的に測定されます。測定頻度は10分に1回程度になります。

 フェアリングにこれらの機器を経由した空気を送るためには機器を接続する配管とダクトが必要になります。アンビリカルマストは22m、また、水平方向には最大で50mと90度ベンドを8回程度の配管・ダクトを想定します。経験式からこれらの圧力損失を計算することができます。

 最後に空気を輸送する送風機が必要となります。除湿用熱交換器、空気加熱ヒータ、噴霧加湿器、複数段HEPAフィルタと圧力損失が大きい機器が直列して配置されているため、吐出静圧が高い送風機を選定する必要があります。

 送風量は前回、約5[m3]と決めましたので、圧力損失の合計をベースに必要な吐出静圧を求め、この吐出静圧と送風量から送風機を選定します。1台で全体に必要な吐出静圧を満たす送風機がない場合は機器の間にもう1台、送風機を追加することで対応します。

 空調系統に必要なものを列挙したので、これらをつなげた図を作りましょう。一般的にこれを空調系統図あるいは系統図などと呼びます。機器選定していく段階でこれは変わる可能性があるので、これはとりあえずのものです。

 [フェアリング空調系統図]


 -------------------------------------------------

配管・ダクト・送風機の選定、続きます。
posted by kirikuzudo at 05:46| Comment(0) | TrackBack(0) | 日記

2019年06月16日

木曽川橋梁の見学(その1)

木曽川にかかる、JR関西本線と近鉄名古屋線のワーレントラス橋を見てきました。

大スパンの構造設計があるかもしれない、という状況で、トラス構造の良い例があまり近場になく、教科書の記述では接合部などの細部がわからないため、木曽川までクルマで移動し、現物を見てのお勉強です。

見学ポイントは長島運動公園のあたり。

まずはJR関西本線側を堤防道路から。立派なワーレントラス橋です。



接合部はおそらくスプライスプレートを使用した高力ボルト摩擦接合です。







斜め材はH形鋼で細幅300x150あたりでしょうか。

上弦材の断面はH形鋼を横にして上の溝にフタを溶接したようなちょっとかわった形をしているみたいです。元になったH形鋼は広幅300x300ぐらいでしょうか。





河原の長良運動公園におりて下から見ます。



下弦材のスプライスプレート部です。補剛材入れた上でめっちゃボルトの本数、多いです。



下弦のブレースです。100角ぐらいの等辺山形鋼をつかった一般的なブレースですね。



下弦材のH鋼に対して斜め材は直接スプライスプレートでとめるのではなく、ちょっと立ち上げてからつけています。どうしてこういう形にするのかわからないので調べないといけません。勉強不足です。



ピン支持部です。長手方向と垂直方向の荷重を受け持ち、曲げモーメントは負担しません。なのでけっこう華奢です。中はどうなっているんでしょうか。ちょっと想像がつきません。

北側





南側





となりのトラスと太いボルト(白いやつ)でピン接合し、南北へのズレを防いでいるようです。



上下は逆ですが、下弦材も上弦材と同じような断面をしているようです。



複線で、ちゃんとレールの位置にも梁が走っています。



近鉄名古屋線側は(その2)でやります。

あと、時間がなかったので国道23号線や国道1号線のトラス橋を見れませんでした。そのあたりはいずれ。

写真を撮ってるときに近鉄の車両が通っていきました。表示幕に何も出ていないので回送でしょうか。



お花。



カニ!




posted by kirikuzudo at 12:37| Comment(0) | TrackBack(0) | 日記

2018年11月21日

架台設計の一例

先日、フォロワーさんの「ベース架台の設計と手配のタイミング」という記事を見かけたので、分野とか内容とかがちょっと違うのですが、自分なりの対処法というか採用している方法を書き留めておこうと思いました。

2014〜2015年頃にあきらかに失敗した案件があって、とりあえず客先のご厚意で納品させてもらって案件としては終わったのですが、それからずっと「納期と予算のない2ton級の移動架台はどうやったらマシになるのか」という課題を考えつづけていました。

で、2016年末頃には「やっぱトラックのラダーフレームやな!」という、ある意味で当たり前の回答を得たうえで、幸運にも2017年にはそれを実証する複数の機会に恵まれました。

とはいえ、もちろんトラックのラダーフレームをそのまま作れるわけではないので、入手できるもので検討することになります。

<2017年前半に作成したラダーフレームの図面と写真>




23号線を併走するトレーラーの構造や書籍を参考に、サイドメンバーとクロスメンバーには入手性がよく、価格も抑えられる材料として、軽みぞ鋼を選定しました。また、サイドメンバーとクロスメンバーをつなげるブラケットは等辺山形鋼(アングル)を切断したものを使用しています。

※参考にした書籍
 ・「トラクター&トレーラーの構造」GP企画センター、グランプリ出版、2010年
 ・「中国生産・ゼロからのトラック設計指南」大崎喜久著、風詠社、2011年

2017年後半には市販の軽みぞ鋼を切断・穴加工する方法から、
板金屋さんで鋼板をNCタレットパンチで穴加工してもらってからベンダーで曲げて
軽みぞ鋼の形状にする方法に変更しました。
(穴位置がきちんと出るうえに、断面高さや板厚をある程度選べるので)

さて、この構成による利点は下記になります。

 ・構造の主要部分を溶接せずに済むため、外注さんの溶接作業待ちに時間を食われない

 ・溶接部がないので特殊工程!が!ない!(ちょううれしい)

 ・キャスターやタイヤなどをブラケットを介して固定するため、
  ブラケットを微調整することで水平出しが後から可能

 ・軽みぞ鋼を使用しているため、鉛直方向の曲げに対する断面係数だけが高く、
  材料も薄いため重量を低減できる

 ・すべての面に焼付塗装ができ、塗料まわりこみの検討が不要
   ※ブラケット取付面を摩擦で持たせる場合はマスキングやケレンの検討が必要

 ・SS400の軽みぞ鋼と等辺山形鋼なので安い

 ・軽みぞ鋼の座屈が怖いところはウェブ裏側にt6平鋼をボルト締めしておけばOK

 ・穴位置を規格化しておけば閑散期にブラケットを内製してためこんでおける

 ・軽みぞ鋼とブラケットの在庫があって塗装手塗りOKなら、
  工数ぶちこんで短期間で作ることも可能

逆に欠点は下記になります。

 ・ボルトは強度区分8.8以上のものを使わないと本数が多くて煩雑になる
  (強度区分4.8のものを使って大変だった)

 ・どうしてもボルトの本数が多くなるので、軸力管理が大変
  (摩擦調整剤塗布済みボルトとマーキングトルクレンチがあるとうれしい)

 ・剛性が低い
 ・とくにねじり剛性がきわめて低い

 ・共振する振動数がめっちゃ多いので、振動を嫌う機械の固定ベースには向かない

 ・ボルトの本数が多いので、ボルトが落っこちるとまずい系の場所では使いづらい
  (全てのボルト軸力を降伏域で適切に管理できればいける)

 ・等辺山形鋼にたくさんタップを立てなきゃいけないのがたいへんで、
  タップ部が構造の信頼性に直結しているので、外注さんで加工してもらって
  塗装が終わってきた段階で、検査がてら仕上げタップをしなきゃいけない

 ・摩擦調整材が高いのと、ボルトに塗るのがたいへん


そんなわけで結構な欠点があるわけですが、板金と塗装さえあがれば2日くらいで主要構造を組めるうえに、断面係数にたいして効かないクロスメンバのお腹部分はけっこう気軽に予備の穴をたくさんあけておけるので、予備穴に内製のブラケットをぺこぺこつけて配置変更もわりとこなせます。

適用レンジとしては、

 ・剛性や振動への要求が緩い
 ・上物が1ton超える
 ・長辺が2mを超える
 ・短辺が1mを超える
 ・溶接できる外注さんが忙しい時期
 ・社内で使える工数がわりとある

というあたりでしょうか。

<上物1.5tonを乗せたソリッドタイヤ架台の写真>


長辺が短いものだと等辺山形鋼や角型鋼管を溶接してしまうほうが(溶接の手が空いていれば)絶対に早くて安いですし、剛性や振動への対応は組織が変化しているとはいえ接合部が一体化している溶接のほうが有利なことが多いですから、使いどころが難しい構成ではあると思います。

2017年はこの構造のおかげで乗り切れた感じがあるのでわりと自分でも気に入っていますが、最近は出番がないです。さみしい。

<特に意味はないけど赤枠のところになんかいますね>


posted by kirikuzudo at 23:23| Comment(0) | TrackBack(0) | 日記

2011年12月19日

女性に好かれるのに、いい男になる必要はないんじゃないか説

僕は男で、しかも男性のマインドセットしか持っていないので、非常に申し訳ないんだけれど。
女性に好かれたいと思っている男性に考えてみて欲しい説があるんです。

君のほんとうに大切な部分を見つけてそこを大切に思ってくれる女性と付き合うべきかも。
君がダメになったときにも、それを見ながらいつもの君を思い出させてくれる人と。

僕も「女性に好かれるにはいい男にならないと」と思っていた時期がありました。(AA略)

というか、振られてから、悔しくて、いい男になるために方向違いの努力をしていた時期がありました。
けど、結局、ひとり身です。(中途半端につきあった女性とかいたけども、汗)

で、この歳(30歳)になって思うのは、結局、男性の考える「いい男」と、
女性の考える「好きになれる男」っていうのは、わりと平行線で交わることがないんじゃないか、
ということ。

逆に考えれば、
いい男になる必要は必ずしもないんじゃないか、
ということ。

むしろ、女性の考えるところの「好きになれる男」というのを目指すべきだと思うのです。

「清潔感」「肩の力が抜けている感じ」「きちんと興味を持っているものがある」「まんべんない好奇心」などなどが条件としてはあがってくると思いますが。

うーん、僕はそういう条件を満たすにはちょっと歳をとりすぎてしまいました。

僕より5〜6歳くらい若い男性のみなさんはちょうどいい時期だと思いますので、
そういう方向も考えてみるといいかもしれません。
posted by kirikuzudo at 00:00| Comment(0) | TrackBack(0) | 日記

2011年12月11日

斜陽産業は社会資本産業でもある説

斜陽産業は俗にインフラと呼ばれる社会資本を支える産業であることが多い。企業内でもインフラ部門の人間は出世しにくいし、社会でも職種としては地位が低く見られている。それはインフラ部門はプロフィットセンタとなることが原理的に不可能なコストセンタだからだ。逆に売上と粗利を扱う営業部門やコスト削減により利益を扱う生産技術部門などがプロフィットセンタとして高いポジションを取れる。

しかしながら、インフラ部門のない企業が企業活動を継続できないように、社会資本のない社会では経済活動を行うことができない。リバタリアニズムの代表的な人物である、ハイエク(フリードリヒ・アウグスト・フォン・ハイエク)も慎重な筆致でその著書で書いている。一部の社会資本は自由主義的な競争にさらすのはかえって自由主義を損なうと。

リバタリアニズムを信奉している人はWebの世界に多く、特にアルファブロガーと呼ばれる多数のビューアーを抱えるブロガーにはリバタリアニズムな人が多いと思う。しかし、斜陽産業の役割についてはあまり取り上げているところを見たことがないし、社会資本として動いている航空会社でも銀行でも問題があれば潰れるのが正しいという扱いをされている方が多いように感じる。

実際にモノを動かしている人たちやその社会資本がなければ生きていけない人たちがいる以上、なんらかの形でそれらを保護する必要はあるのだが、そもそも、それらが潰れるような可能性を有する民間企業として稼働しているのはどこまで正しいのだろうか、という意識が僕にはある。

例えば、鉄鋼・ガス・石油・電力などに関連する多種多様な業種は第2次産業の中でも成長のない、むしろ社会需要の減少とともにマイナス成長する「斜陽産業」として見られてきた。

しかし、そもそもそれらが産業として成長しなければならないかどうかという議論がそこにはない。これは大きな見逃しだと思う。

もちろん、それらの分野でも技術革新が必要である。だが、待って欲しい。競争がなければ本当に技術革新もないのだろうか。

Idle Curiosityという語がある。

これは人類学分野の知見で、人は生まれながらに知識を得ること自体に快楽を見いだし、それを追求する習慣を持っていること、それを表現している語である。

またInstinct of Workmanshipという語もある。

これも人類学分野の知見になるが、経済学的な制約がない状態では、人は自分が作り出す物の品質が最高の状態にしようとする習慣を、これまた生まれながらに持っていること、それを表現している語である。日本語にするなら「職人気質」というところだろうか。

こういった人類にエンベデッドな機能を考慮したときに、果たして企業間競争がなければ技術革新も品質の向上もないなどと言えるだろうか。

iPhoneは果たして企業間の競争の中で生まれたのだろうか。ジョブズの言動を見る限り、あれはジョブズのInstinct of Workmanshipだったのではないだろうか。

また、今日のあらゆる構造に欠かせない材料強度学の知見もイングランドの経済的な制約の薄い研究所で生まれたものが多い。

人類の知識目録を総覧したときに果たして企業間競争によって生み出されたものというのはどれだけになるのだろう。

話が飛躍してしまったが、インフラというのは企業間競争が可能な自由な社会が成立するための前提条件でもある。その前提条件を企業間競争の名の元に崩せば、それまで可能であった企業間競争自体が成立しなくなる可能性をもう少し考慮するべきではないだろうか。

※参考文献『社会的共通資本』(宇沢弘文著、岩波新書)
posted by kirikuzudo at 09:00| Comment(0) | TrackBack(0) | 日記

2011年04月03日

我々は理系ではない!工科系だ!

「理系」なんて言葉をよく耳にする。
「理系男子」だとかなんとか。

オタクっぽい人まで、いまや「理系」扱いである。

私はオタクであるが、この扱いには我慢ならぬ。

「理系」はもっと理学に通じた人々が称すべきカテゴリである。

オタクならオタクと呼べばよい。
語感が悪いというのなら「工科系」はいかがか。

だいたい行列式や集合をすいすい扱えない我々が、
理系などとは言えない。間違っておる。

微分方程式までなら「工科系」でよいではないか。

理系と工科系の一部は重なるが、それはよい。
工科系でもきちんとしている人たちはいる。
そういう人たちは「理系」と読んでも差し支えないだろう。

しかし、高専卒で働いている人たちはどう考えても、
「理系」より「工科系」だ。

そしてまあ、高専卒でも「文系」はいるわな。
神林長平(「戦闘妖精・雪風」の著者)がその筆頭だが。

私もどちらかといえば「文系」で、
かつては試験のために微分方程式をがりがりと解いたが、
いまは四則演算程度しかおこなわぬし、
物事を言語ベースで扱うやり方は「工科系」とも言い切れぬし、
「理系」では断じてない。図面はかくけれどな。

同様に科学技術と一緒くたにされるが、
科学と技術はもともと肌合いが違うものである。
細かい議論は吉田武先生の「虚数の情緒」の序章を読まれたい。

興味のない人が多数であろうが、
科学は真理の探求、技術は幸福の実現、と目標がそもそも違うし、
必要とされる生き方自体が異なる。

そんなわけで、世の中で「理系」というワードを目にする度に、
心のなかでそっと嘆息するのである。

それを今回は文章にしてみた次第だ。

posted by kirikuzudo at 23:30| Comment(0) | TrackBack(0) | 日記

2011年01月31日

「自炊」は電子書籍の製作手段ではない

ここしばらく「自炊」をしているのですが、
自炊は電子書籍の製作手段ではないと思いはじめました。

まずは元ネタから。

「ロージナ茶会ちゃんねる 電子出版編 (前半)−ニコニコ動画」
(※ちなみに前半後半あわせて90分の1コマ授業です:白田先生は法政大学の准教授)



私の経験からくる感覚では、「自炊」するというのは、
本を捨てる際の精神的な痛みをやわらげるための儀式です。

あるいは、目的と手段の副作用を逆転置換させることで、
本を捨てることに伴う罪悪感を軽減する予防的措置です。

つまり、

 「な、捨てても大丈夫なんだよ」

 「え? なんだって? 読み返したくなるかもしれないって?」

 「なあに、かまうものか、PDFにしてあるんだろ?」

 「いざというときはそれを読めばいい」

と悪魔がささやいてくれるということ。

もうちょっと細かく説明しましょう。

「自炊」で主流の方式は「裁断+ADFスキャン」です。
これは本をPDFデータにするために、事前に本を裁断しなければなりません。
そして裁断した本は、従来の書籍としては機能しないので捨てることになります。

つまり、

 「自炊」→「裁断をともなう」→「本を捨てる」

となります。

そう! 本来の目的は書籍の内容を電子化することのはずです!

ところが、この「→」を「=」に置き換えてみると。。。

 1.「自炊」=「裁断をともなう」=「本を捨てる」

 2.「自炊」=「本を捨てる」

 3.「本を捨てる」=「自炊」

 4.「本を捨てる」→「自炊」

なんということでしょう(笑)!

「本を捨てる」ために「自炊」することになってしまいました。

これでは「手段」と「目的」が逆転どころか、
「手段の副作用」と「目的」が置換されてしまっています。

 「自炊」:目的
 「裁断をともなう」:手段
 「本を捨てる」:手段の副作用

これが「自炊」の魔力です。
我々は、本を捨てる為に「自炊」するのです。
電子書籍が欲しいから、書籍のコンテンツを電子化したいから、
「自炊」するのではありません。

これから「自炊」しようとする人は気をつけてください。
あなたがスキャンした本の内容をあなたはほとんど読まないはずです。
なぜなら、あなたは、精神的には既にその本を「捨てた」からです。

もう一度、真剣にその本を読みたいと思ったら、
再びなんらかの方法で「同じ本を買う」ことになると思います。


注意:ディジタル・ネイティブは上記の理屈に該当しません。
   書籍が精神的に作用する実態を持っていたのはつい最近の世代までで、
   コンテンツを吸収してきた世代に「書籍の魔力」は作用しないのです。
posted by kirikuzudo at 07:00| Comment(0) | TrackBack(0) | 日記

2011年01月04日

「型」は「技」の非可逆圧縮

ある日、medtoolzさんがつぶやいていた。

 RT @medtoolz: 型を通じて、その裏にある師匠の体験を再現することを心がけないと、
 型を超えて名人に到達することは出来ないんだろう

ふとそこから思いついてTweetしたことを並べてみた。


 剣道の型は教えるためのもの。各流派の型は、空耳期待の非可逆エンコード。

 剣道をやってたころ、いろんな諸流派の本を読むのが好きだった。
 剣道の型は割とよく練習していた。

 で、剣道の型は割と諸流派の生々しい部分を削ったものだと思っていた。

 そして剣道の競技はそのフィルタリングされきった型が原点だと感じていた。

 で、諸流派の型はあまり事例を知らないんだけど、大会で演武なんかをみていると、
 どうも流派の固有のアルゴリズムで非可逆圧縮した生々しい状況の身体的記録に思えた。

 コールandレスポンスではないけど、他者とのやりとりが前提になっている。
 型を増やすのと、型を絞り込むのはCISCとRISCみたいなもので、
 このへんは診断学的になるけれど、有限個の状況に対する応答だったと思う。

 未知の状況に遭遇して淘汰された結果、
 単純な基本形の組合せが習得コストと効果のバランスするところだとわかって、
 それで近代競技剣道が成立したんじゃないかと思う。

 ただ、その組合せは割と身体的能力の高さが要求されるため、
 必然的に競技剣道はスポーツ化してしまった。型は形骸化している。

 諸流派の型をたどると、身体的能力に劣る者や不利な状況にある者が、
 優位な相手に対応するものがある。
 僕の通っていた道場も稀に2対1の稽古とかあった。昔の剣術は戦術に近かったんだと思う。

 だから「兵法者」が剣術家であり、戦術家であったのは、納得のいく話で、
 要するに、非可逆圧縮された「型」を状況に応じて、
 どれだけ素早く展開できるかと、「型」化で欠落した部分を埋められるかが、求められていたんだろう。


こうみると、歴史的な視点がばっさり抜け落ちているけれど、
「型」は「技」の非可逆圧縮と展開、という見方はなかなか面白かったのかな、と思う。

宮本武蔵なんかは「型」や「技」を離れたところを目指していたし、
柳生家は戦闘を越えた戦術レベルの「型」を構成していたように見える。
だからこそ徳川家も採用したわけで。

「型」が「技」を非可逆圧縮したものというのは、
それこそ文章や会話でもそうで、高度な教養を持つ人々の会話が
一般人には何を言っているかわからないのは、
ひとつひとつの単語が持つ意味が文脈によって高度に圧縮されているからなんだと思う。

圧縮展開後の再現率はデコーダの性能次第で、
下手なデコードでは再現率が低いし、優秀なデコーダはほとんど元の状態に戻せる。

この圧縮と展開を自由自在に操れるのが達人なわけで、
それが行き過ぎるとそれこそ日常の所作にまで「技」が「型」として圧縮されて偏在する。

室町・安土・桃山あたりから展開したこれらの圧縮・展開技術の百花繚乱は、
元をたどれば仏教各宗の信仰形態あたりからはじまっているんじゃないかと思う。

真言にせよ、座禅にせよ、踊りにせよ、法華経にせよ、マニ車にせよ、
あれも信仰表明の形態になってしまったけれど、
元をたどれば仏教世界観による世界の理解を「型」に圧縮してしまったものだと思う。

面白いのは、展開時の再現率が高いほど良いわけではない、ということで、
再現率が低いものが状況にあわせて新しい「技」の集合を生み出して、
そこから新たな「型」の集合=流派や宗派が生まれたことだと思う。

再現率が高くても、状況に適合できなかった「型」は脱落してしまうだろうし、
たまたま再現がうまくできなかった「技」が生き残ることもあるだろうし。

と、ちょっと系統樹思考にかたよった書き方になってしまったけれど、
こんな考え方もできるんじゃないだろうか、と思いました。
posted by kirikuzudo at 07:00| Comment(0) | TrackBack(0) | 日記

2010年02月19日

<メモ>玉掛の実技要領(その2)

つづきです。

----------------------------------------------------

7.玉掛け確認

 補助者に止めの合図まで手を離さないように指示。
 あわせて、親指をたてて握らないようにも指示。

 クレーン運転者に小指をたてて見せ、微動の合図。
 確認がとれたら巻上げ指示。ワイヤが張ったら止め。

 玉掛け全体の確認。ワイヤの張り、素線の切れなど。
 「玉掛、よし」

 補助者に退避の指示。
 「退避」

 補助者、退避後に報告。
 「退避、よし」

 玉掛者も退避。
 「退避、よし」

8.地切り

 クレーン運転者に小指をたてて見せ、微動の合図。
 確認がとれたら巻き上げ指示。荷が浮いたら止め合図。

 ワイヤーに接触しないで、目視確認。
 「ワイヤー、よし」

9.巻上げと運搬

 地上1mまで巻上げ
 「高さ、よし」

 クレーンの進行方向に対して斜め前方に立ち、
 運行経路と荷下ろし場を指差し指示。

 荷下ろし場に立ち、荷を誘導。

 巻下げをし、枕の上20cm程度で止める。

 補助者に位置決め補助を指示。
 「位置決めお願いします」

 枕などにずれがないことを確認し、ずれていれば直す。
 着床位置を確認する。
 「着床位置、よし」

 補助者に退避の指示を出す。
 「退避」

 補助者、退避後に報告。
 「退避、よし」

 玉掛者も退避。
 「退避、よし」

10.着床

 小指合図、微動巻下げ。荷がまくらについたら止め。
 ワイヤを張ったまま、荷を揺すって安定確認。
 「安定、よし」

11.荷外し・片付け

 フックを下げ、ワイヤーを4本同時に外す。
 それからただちにフックを2m以上あげる。
 「フック高さ、よし」

 クレーン運転士に敬礼し、作業完了を伝える。

 目視でワイヤーの点検をする。
 「点検、よし」

 玉掛用具を収納し、開始の状態に戻す。
 「玉掛用具、収納、よし」

 補助者に礼をして、作業完了を告げる。


----------------------------------------------

こんなカンジ。
posted by kirikuzudo at 03:55| Comment(0) | TrackBack(0) | 日記

2010年01月21日

形状の問題、機能の問題

ここんとこ技術っぽいネタが続いていますが、もう一件。

仕事がかわって1年半くらいですが、
実際の製品を日々、目にしている中で、
「形状の問題」に終始しているものが多いなあ、
と感じます。

「形状の問題」とは実際の機能とは関係なく、

 ・見た目に強そう
 ・部品Aと部品Bをとにかくつなげたい(機能が損なわれても)

といったところで、例としては、

 ・20角のアルミフレームでは心配(断面係数は十分ですが)
 ・ドレンパン底部にパイプハンガーをボルト止め(漏れるよ)

などになります。

まあ必要な機能を達成するために必要なのは最低限どれだけか、
を十分に考えずに、

 ・機能Aなら部品X
 ・機能Bなら部品Y
 ・機能CはA+B
 ・だから部品Xと部品Yをつなげればいい

という要素還元主義というか、そういった考えで、
部品Xが実は機能Bを損なう可能性があるとか、
そういった相互作用は考えたりしないわけです。

あとは

 ・機能Cは実は機能A+D+Eでもある
 ・機能A+Eは部品Z
 ・機能Dは部品Q
 ・QとZの機能はお互いに十分に分離されている

という可能性もあるのにそこまで考えたりしないわけです。

「機能の問題」にまでたどり着けないのはなぜなのか。
もうしばらく考え込んでみたいと思います。
posted by kirikuzudo at 07:00| Comment(0) | TrackBack(0) | 日記

2010年01月20日

FEMをクラウド化するという話

工学向けの数値解析手法にFEM(有限要素法)というものがあります。

本当は微分方程式を数値的に解く方法なんですが、
4工学(材料力学、熱力学、流体力学、機械力学)の基本的な問題は微分方程式を解いていくことが多いので、
工学向けによく使われています。いや、いました、かな?

※詳細はここに詳しいので微分方程式に抵抗がないひとは
 このページをさらっと読んでみるのもいいかも。

 http://www.fem.gr.jp/index.html

私も10年くらい前に材料力学の工学実験で、
メッシュが三角形要素だの四角形要素だのというお話を
ちょろっと聞いたくらいで、しかも居眠りしていたので、
よく覚えていません。
FORTRANを使うというあたりも眠たかった。

ただ、コンピュータでひずみとか内部応力とか視覚化できるんだなあ、と思っているくらいでした。

で、最近のクラウド流行を見て、
5万円くらいで2次元の応力分布を表示できるFEMソフトがあるのを見て、
ふと考えたのが、
「クラウドでFEMとかできるツールねえかなあ」
ってこと。

どこかで余っている計算能力があるのなら、XML形式でメッシュ座標を指定したファイルをアップロードして、
あとは数日ほったらかして計算してもらうようなサービスがあってもいいような気がしました。

なにしろ、現場の設計でFEMなんか使ってる人、見たことない。
Solidworksとかについてくるようになって、設計事務所なんかでは
使えるんだろうけど。

で、これは社会的に大きな損失なんじゃないかと思ってます。
というのは、設計事務所で設計されていないものって意外と多く、
その大部分はJIS規格にアンウィン安全率という、
ものすごく冗長で重厚な設計になってることが多いので。

もちろんFEMの結果をどこまで信用するかという話はあるけれど、
片持ち梁の理屈すら知らない人って多いんじゃないだろうか。
材料力学の話って、割と直観に反することが多いしね。

とにかく、FEMとかそのあたりの工学数値計算をWeb上のサービスとして提供している企業はないのかなあ、と思いました。

うん。自分で作ってもいいかも、と一瞬思ったんだけど、
考えてみたら、俺は微分方程式もWebもよくわからんのだよね。

いまから両方を勉強するのはしんどいなあ。
Perlくらいなら思い出しながらいけるけど、微分方程式は。。。
微分方程式が気にならない、ポスドクのワーキング・プアな方、
俺と組みませんか?(笑)
posted by kirikuzudo at 07:00| Comment(0) | TrackBack(0) | 日記

2010年01月09日

LabVIEWとMELQIC

LabVIEWとMELQICの比較をしてみる。金額と目的とする内容と使い勝手と。

<本体価格>
MELQIC \500,000
16ch(SE) 16bit 1kS/sec analog I/O
16ch(SE) digital I/O
VxWorks RTOS
400MHz unknown Processor
64MB SDRAM + 5.5MB FlashROM + CF(until 128MB ?)
6.5inch touch-panel
raedy-made package

NI CompactRIO \550,000
32ch(SE) 16bit 250kS/sec analog I/O
32ch(SE) digital I/O
VxWorks RTOS
400MHz freescale MPC5200
64MB SDRAM + 128MB FlashROM
non-HMI
order and self-build by customer

<開発環境>
MELQIC \120,000
Microsoft Visio Professional \60,000
IU Developer \60,000

LabVIEW \1,368,000
Developer Suite BasicPack \691,000
LabVIEW Real-Time Deployment option \383,000
FPGA Deployment option \294,000

<使い勝手−開発>
 MELQICはソフトが使いづらい。特にvisioは慣れても結構、時間がかかる。
 慣れるまではけっこう早いかもしれない。
 ハードは組込済みなので、特になにも考えなくていい。
 考え方はQシーケンサの延長なので、シーケンサ屋はわかりやすいかもしれない。
 逆にリニアにメモリを確保できないあたりでソフト出身のひとはイライラすると思う。

 LabVIEWはソフトの使い勝手が最高によい。慣れたら早いし、慣れるまでも早い。
 ハードはある程度、自分で構築しなきゃいけないけれど、営業さんがサポートしてくれる。
 ソフトのことだけ考えておけば、余裕のあるハードがなんとかしてくれる感じ。

<拡張性とかそのへん>
 シリーズ展開でNationalInstrumentsにかなうハード屋はいないんじゃないかな。
 CONTECあたりががんばっているけれども。
 そんなわけでMELQICはハードの選択肢が限られているのが苦しい。
 スロット数やそのあたりはどちらも良い勝負だけれども。

<とりあえずまとめ>
 CompactRIOは贅沢仕様ということかな。
 VxWorks積んで、FPGAまで積んで、ソフトはLabVIEWで開発できて、ハードのラインナップもまず困ることがない。
 MELQICはシーケンサの延長で、エンジンにVxWorksを使ってみましたというところかな。
 愛知県のT自動車と下請け群で叩かれて作られただけあって、導入費用や安さやシーケンサ屋の慣れやすさはあるけれど、
 発展性が限られるし、ちょっと職人芸っぽいところがある。

 お金ないからMELQICだろうけど、グローバルスキルとしてはLabVIEWだよね。
 どこ行っても調達できるってのはすごいかもしれない。
posted by kirikuzudo at 07:00| Comment(0) | TrackBack(0) | 日記

2010年01月08日

誘導〜ブログ移動しましたよ

このブログサービスは解析機能がしょぼくて、
ページビューくらいしかわからないんですが、
まだこちらに割とページビューがあるみたいなんで誘導。

ブログ移動しました。

 http://kirikuzudo.sblo.jp/

ってなわけで、2010年もよろしくです。
posted by kirikuzudo at 23:05| Comment(0) | TrackBack(0) | 日記

2010年01月01日

あけましておめでとうございます

さて。2010年のはじまりです。

さてさて今年はどんな年になるのやら。

とりあえずブログの移転をしてみましたんで、
旧ブログをブックマークされている方はこちらに変更を。

ブックマークされていない方はこの際ブックマークを。

それでは今年もよろしくお願いいたします。
posted by kirikuzudo at 09:00| Comment(0) | TrackBack(0) | 日記

2009年12月31日

ブログを移転します。

タイトルにURLをあわせました。

http://kirikuzudo.sblo.jp/

上記のURLに移転します。

というか、いつまでも自分のフルネーム入りってどうよ、と。

あとは、やはり kirikuzudo としてブログをやっていきたいので、
いろいろと統一して、ですね。ドメインまで取ってるわけだし。

まあ自分で Movable Type とか準備するのはしんどいので、
プロバイダのサービスに頼るわけだけれど。

ちなみに、こちらは顔を知ってる人用に残しておいて、
月に数回だけでも更新できたらなあ、と思っています。
posted by kirikuzudo at 23:00| Comment(0) | TrackBack(0) | 日記