2019年07月21日

フェアリング空調の検討(その3)

フェアリング空調の検討(その3)

フェアリング空調がどういうものか理解するため、串本町のスペースワン社のロケットを題材にフェアリング空調の検討をしてみました。

前回の予告と少しずれますが、今回はフェアリング空調で検討しなければいけない条件を列挙してみたいと思います。


<フェアリング空調の条件>

 フェアリング空調の条件ですが、温度を20℃±5℃、相対湿度を65%±5%として仮定します。

<吸込大気の条件>
 空調は循環方式ではなく、大気を吸い込んでフェアリングのベントポートから吐き出す一方向型となるので、大気の条件を確認する必要があります。

 ここでは以下の4つの大気条件を仮定し、これらのいずれの条件の大気を吸い込んでもフェアリング空調の条件を満たすように空調系統を設計します。

 条件1:乾燥した冬の日、温度−2℃、相対湿度47%
 条件2:雨の降る冬の日、温度−2℃、相対湿度66%
 条件3:真夏日、温度34℃、相対湿度81%
 条件4:梅雨、温度31℃、相対湿度92%

 各条件は気象庁の「過去の気象データ・ダウンロード」より「潮岬」地点での2009年〜2018年のデータをダウンロードし、そこから平均的な条件として抜き出したものになります。条件1と2は最低気温(2011年1月)、月平均相対湿度の最低値(2011年1月)と最高値(2018年12月)から採りました。条件3は最高気温(2013年8月)とその月の月平均相対湿度から、条件4は月平均相対湿度の最高値(2009年7月)とその月の最高気温からそれぞれ採りました。

 ※ http://www.data.jma.go.jp/gmd/risk/obsdl/index.php


<空調系統に必要なもの>

 上記の吸込大気と空調空気の条件を満たすために、空調系統に必要なものを列挙してみましょう。空調空気の条件は簡単のために、公差範囲を考えず、温度20℃湿度65%を設定します。

 まず、吸込大気中の水分を除去するため、除湿器が必要になります。これには円筒多管式の熱交換機を使用して露点以下の冷却水と熱交換することで結露を促して除湿する方式を採用します。

 フィン&プレート式や多板積層式のほうが体積効率がよいですが、円筒多管式は体積が増えるものの、空気流路に洗浄剤を流すことで配管等をそのままの状態で洗浄が可能であり、圧力損失も低いため、これを選定しました。

 冷却水はタンクからポンプにより供給し、空冷チラーで5℃まで冷却した後に、熱交換機を経由してタンクに戻る循環形式とします。冷却水にはエチレングリコールを添加することで腐敗を抑制します。

 除湿のための冷却水温度は吸込空気の絶対湿度と温度を湿度センサで検出し、これをコントローラーで計算することで決定します。冷却水温度の制御は、空冷チラーをバイパスするラインを設け、空冷チラーを経由した冷却水とバイパスした冷却水の混合比を比例調節弁で調整することで実現します。これにより、5〜10℃の範囲で冷却水温度に対応可能となります。

 除湿後、温度が低下した空気を加熱する必要があります。また、冬には温度の低い外気を20℃まで加熱する必要があります。空気の加熱はインラインのフランジ型シースヒータを使用します。

 空気加熱用のフランジヒータは標準品が多数存在しますので、必要な加熱量に近いものを選定し、後述するフィルタ後段アンビリカルマスト上部の温度センサを入力(PV)として、ヒータ出力のFB制御を行います。制御方式は温度調節器とサイリスタ調整器でのPID方式とします。

 冬場に温度が低い場合は加湿が必要になります。加湿には濾過と純水器を使用して不純物を低減した簡易純水を加圧ポンプと噴霧ノズルで噴霧加湿する加湿器を使用します。加湿量は後述のフィルタ後段アンビリカルマスト上部の湿度センサを入力(PV)とし、ポンプ吐出流量を操作量としたFB制御で決定します。ポンプ吐出流量は流量計とポンプ回転数制御をFB制御して操作します。

 温度と湿度が調整された後、清浄度を満たすためにフィルタリングを行う必要があります。クリーンルームの空調に使用されるHEPAフィルタを複数段設置し、要求される清浄度の空気がフィルタ後段で得られるようにします。空気の清浄度はアンビリカルマスト上部のサンプリング式パーティクルカウンタにより定期的に測定されます。測定頻度は10分に1回程度になります。

 フェアリングにこれらの機器を経由した空気を送るためには機器を接続する配管とダクトが必要になります。アンビリカルマストは22m、また、水平方向には最大で50mと90度ベンドを8回程度の配管・ダクトを想定します。経験式からこれらの圧力損失を計算することができます。

 最後に空気を輸送する送風機が必要となります。除湿用熱交換器、空気加熱ヒータ、噴霧加湿器、複数段HEPAフィルタと圧力損失が大きい機器が直列して配置されているため、吐出静圧が高い送風機を選定する必要があります。

 送風量は前回、約5[m3]と決めましたので、圧力損失の合計をベースに必要な吐出静圧を求め、この吐出静圧と送風量から送風機を選定します。1台で全体に必要な吐出静圧を満たす送風機がない場合は機器の間にもう1台、送風機を追加することで対応します。

 空調系統に必要なものを列挙したので、これらをつなげた図を作りましょう。一般的にこれを空調系統図あるいは系統図などと呼びます。機器選定していく段階でこれは変わる可能性があるので、これはとりあえずのものです。

 [フェアリング空調系統図]


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配管・ダクト・送風機の選定、続きます。
posted by kirikuzudo at 05:46| Comment(0) | TrackBack(0) | 日記
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