2019年07月20日

フェアリング空調の検討(その2)

フェアリング空調がどういうものか理解するため、串本町のスペースワン社のロケットを題材にフェアリング空調の検討をしてみました。

前回、「配管・ダクト・送風機あたりの選定をする」ようなことを予告していましたが、その前段階検討の一つとして、今回はアンビリカルマストの高さとアンビリカル空調ホースの長さの検討をしていこうと思います。

※固体ロケットではロケット組立棟からの出し入れが比較的容易なため、避雷鉄塔の設置はなしとします。

※ あいもかわらずあてずっぽうの数字ばかりなので、そのへんは生温かくスルーしてください。どちらかといえば検討の流れみたいなものを見る感じでお願いします。


<アンビリカルマストの目的>

 アンビリカルマストはロケットの地上待機期間において、フェアリング空調ダクトと電気系/通信系アンビリカルケーブルをフェアリング近傍に接続する際に、支えとなる構造物です。(フェアリング以外の場所にアンビリカルケーブルやダクト/ホース類がある機体もあります。)

 また、ロケットの発射直前にロケット周辺からダクト/ケーブル類を遠ざけるための機構もアンビリカルマストに含まれます。


<パッドドリフト量の確認>

 スペースワン社のロケットがどのような発射形態を取るかはまだ判明していませんが、ここでは移動発射台からの垂直発射方式と仮定して話を進めます。

 射座周辺は無風状態が理想ですが、串本射場のように海岸の上50[m]の台地に射座があり、さらに南南東向きの太平洋岸であることを考えると、年間を通して無風であることは考えにくい状況です。また、スペースワン社は年間20機のローンチを行うとしていますので、2週間に1回は発射の機会があることになります。そのため、多少の強風は許容できる設計にしなければなりません。

 ここでは風速15[m/s]でロケットからアンビリカルマストへ風が吹き付けている状況でのパッドドリフト量を簡易的に確認してみます。

 ロケット機体は直径1.4[m]、長さ18[m]の円柱として近似し、この円柱に風が吹き付けて抗力が発生し、アンビリカルマスト方向に加速度が発生する状況を想定します。円柱の抗力係数は1.2と仮置きします。(抗力係数は本来、レイノルズ数を考慮して仮置きすべきですがここでは省略します)

 大気密度:ρ[kg/m3]
 流速:V[m/s]
 投影面積:S[m2]
 抗力係数:Cd

 抗力の式

  D = 0.5・ρ・V^2・S・Cd

 大気密度ρ=1.293[kg/m3]、投影面積S=1.4 x 18=25.2[m2]、流速=15[m/s]として、発生する抗力は4399[N]になります。

 スペースワン社の発表では機体全備質量m=23,000[kg]となっており、発射直後の推進剤質量の減少は無視するとして、水平方向の加速度は下記となります。

  a(HL) = D/m = 4,399 / 23,000 = 0.19[m/s2]

 一方、垂直方向の加速度についてですが、ロケット1段目の推力は発表されていないため憶測するしかありません。ここではイプシロンロケットの1段目の発射時加速度を参照して使用します。

 イプシロンロケットは形態によりますが、機体全備質量m=91,000[kg]、1段目推力F=2,200[kN]とすると、垂直方向の加速度は下記となります。

  a(VT) = (m/F)-g = ( 2,200 / 91,000 ) - 9.8 = 15.16[m/s2]

 アンビリカルマストの高さはこれから検討する数字になりますが、スペースワン社の発表では機体全長が18[m]となっているため、これに2割ほど高さを加えて仮に22[m]とします。

 さらにここにドリフトに対するマージンとして10[m]を加えて、32[m]になった際の想定ドリフト量をアンビリカルマストおよび付属装置の安全限界として設定します。

 ロケットが32[m]まで上昇するのに必要な時間は垂直方向の加速度から、

  t = sqrt(2h/a(VT)) = 2.05[sec]

 となります。この時間に風速15[m/s]の風による抗力で機体がドリフトする量は水平方向の加速度から、

  x = 0.5・a(HL)・t^2 = 0.194[m] = 194[mm]

 となります。加速度の大きい固体ロケットで機体直径も細いため、風によるドリフト量はかなり小さくなります。

 機体推力の偏向によるドリフトについてはここでは検討しませんが、それらを考慮しても、発射時の機体外径から800[mm]をアンビリカルマストおよび付属装置の安全限界とすればよいかと思います。


<アンビリカルマストの高さ>

 アンビリカルマストの高さですが、先ほど仮置きした長さ、22[m]で検討を進めたいと思います。他の要素を検討していると変更が出るかもしれませんが、検討のマージンがあるので吸収できますし、マージンからはみ出すようであれば再検討すればよいです。

 アンビリカルマストの高さが仮決めできたので、これを元に、配管長も22[m]とし、圧力損失計算に必要な継手数を、エルボ6点、ティー4点、バタフライ弁4点としてこちらも仮置きします。


<アンビリカルホースの長さ>

 アンビリカルホース離脱をランヤード方式とするかスイングアーム方式とするかで変わってきますが、機体外径から800[mm]をアンビリカルマストと付属装置の安全限界としたので、伸縮動作を考え、その倍の1600[mm]をアンビリカルマストと機体外径の距離として設定します。これにより、アンビリカルホースの長さを1800[mm]程度とします。


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先月の送風量の検討に続いて、今月はアンビリカルマスト関連の配管長とホース長を検討しました。

来月は予定通り配管・ダクト・送風機あたりの選定について触れたいと思います。


posted by kirikuzudo at 19:59| Comment(0) | TrackBack(0) | 雑記
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