2015年11月15日

ロケットの性能に直結するコンポーネントというものはあるのか

 下町ロケット、というドラマが原作準拠ではじまった。バルブがロケットの性能を直接左右することなど現代のロケットでは考えられないのだが、もしあるとすればバルブの信頼性が低くて指示通りの開度が出ていないという、バルブの信頼性が著しく低い世界線での話なのかな、という解釈をしてみた。そして、それをTwitterで開陳したところ、かがわさんに「そんな記述ないですよね」とばっさり斬られてしまったわけだが、まあ、解釈遊びなんで、実際のところ、かがわさんの言う「バルブという名の抽象概念」が正解であるとは思う。

 さて、そこから話は続いて、「ロケットの性能に直結するコンポーネントというものはあるのか」という話題になっていたようだ。私はひさしぶりの溶接作業の疲れで寝てしまったのだけれど、これは確かにロケットシステムについての理解度を試される問いである。

 当然、ロケットシステムにおいて、欠けてよいコンポーネント、性能に寄与しないコンポーネントなどはないわけだが、どちらかというと、どれもが十全に機能を発揮して、はじめて安全で望み通りなロケットの飛翔が成り立つということを考えると、たしかに「ロケットの性能に直結するコンポーネント」という話題はバカバカしいのかもしれない。

 しかしながら、やはり「多少あやしくてもなんとかなる」部品というのはあって、そこで基準を落とせるかどうかが設計検討試験の積み上げ、ひいては技術力の差となるのだと思う。実際、「えっ、これでいいの」となる米露のロケットコンポーネントは多い。

 一方、ロケットの性能に直結する、という題でいけば、ロケットエンジン、なかでもインジェクタと燃焼室とノズルまわりの設計は、ロケットの性能指標である有効排気速度および推力重量比に決定的な違いをもたらす。

 特に推力重量比をあげようと思うと、短い燃焼室で推進剤の持つ燃焼熱を排気のエンタルピに転化しなければならず、そのため、インジェクタでの推進剤微粒化と酸化剤・燃料の混合から燃焼をどれだけ短い距離で実現できるか、という話になる。それは燃焼室およびノズルスロートの冷却系とも関連し、エンジン熱交換システムにおける最適流量などにも影響が出てくる。ひいては、質量流量は機体の飛翔設計・タンク設計・配管設計にも影響を与える。

 インジェクタにも多数の形式があり、基幹ロケットは同軸せん断型、ISTやSpaceXはピントル型、角田のエタノール・液体酸素試験機は二点衝突型である。インジェクタの形式とそれによる燃焼室長さの変化はあまり調べたことがないのだが、インジェクタの設計次第で燃焼室の長さの制約を変えられるのは間違いないだろう。

 実のところ、ロケットシステムから見ると、ロケットエンジンのインジェクタと燃焼室とノズルまわりとは、ひとつのコンポーネントとして見られてしまうので、どちらかというと「ロケットエンジンはロケットの性能に直結するコンポーネントである」という言及のほうが正確なのかもしれない。

 そのなかで、「ロケットエンジンの性能に直結するサブコンポーネントはなにか」という問いがあれば、インジェクタはそのひとつであると答えられると思う。
posted by kirikuzudo at 16:21| Comment(0) | TrackBack(0) | 雑記
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